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悪魔となって復讐を誓う聖女  作者: 天野霧生
第三章:闇に沈みし影の刃
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159:真紅の死を象徴する蠍急襲

 アリアはミレルとベリスティアとスイーツ巡りしながら大通りを歩いていると物凄い轟音が街を振るわせた。

 その轟音にミレルとベリスティアは周囲を警戒する。

 それと同時にベリスティアにリアーナから念話で連絡が入る。

 内容はアリアと一緒に安全な場所へ避難すす様にとの事だった。

 それを受けたベリスティアは直ぐ様行動へ移す。


「アリアちゃん、何が起こったか分かりませんが、一度ギルドへ戻りませんか?」


 轟音が聞こえた場所とギルドのある方向は正反対になる。


「情報が集まる場所で情報を集めませんか?もしかしたら何か依頼されるかもしれません」


 緊急事態があればギルドに情報が集まるので、ギルドへ向かうと言う判断は変な物では無い。


「そうね。情報も無いまま動くのは得策では無いわね」


 ミレルもベリスティアの言葉に同意する。


「……うん」


 何処か思う所がある様な雰囲気で頷くアリア。

 アリアは言い知れぬ胸騒ぎを感じていた。


「それでは行きましょう」


 ベリスティアがアリアの手を取り踵を返した時、大通りに突如、大きな蠍のモンスターが出現した。

 いきなりの出現にミレルもベリスティアも困惑した。

 大通りにいた人々はパニックになりながら逃げ惑う。


「……街中に何で?」


 アリアも突然の状況に思わず疑問符を付けながら呟く。

 現れた蠍のモンスターはラースが呼び出した真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)

だ。

 暗殺者達はいざと言う時の為に卵を二つ所持していた。

 アジトの異変を察知してここに真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)

を解き放ったのだ。

 当の呼び出した本人は既にこの世にはいない。

 呼び出した際に真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)に食われてしまっていたからだ。


 真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)はゆっくり動きながら獲物を探し始めた。

 逃げ惑う人々に狙いを定めたのだ。

 アリアは咄嗟に大剣を取り出す。


「ベリス、あれを倒すよ!あんなの放っておいたら街が大変な事になっちゃう!ミレルさんは……」


「私も手伝うわよ。この状況、放っておける訳無いでしょ」


 ミレルはアリアの言葉を遮り、剣を抜く。

 この状況を放っておける様な性格はしていないのだ。

 ベリスティアは既に剣を抜いて臨戦体勢だ。


「どんな動きをするか分かりませんが、蠍のモンスターであれば尻尾に注意して下さい。尻尾の先端は猛毒の毒針になっています」


 ベリスティアはベテラン冒険者と元受付嬢の知識にある事を先に伝えておく。


「了解」


「分かったよ」


 ミレルとアリアは真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の尻尾を確認し頷く。

 三人は逃げ惑う人々を掻き分けながら真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)へと向かっていく。

 現場へ到着すると既に何人かの住人が餌食になったであろう体が欠けた死体がいくつもあった。

 そして逃げている途中で腰を抜かして立てなくなった男と真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の目が合った。


「……や、やめてくれ……」


 男は震える声で助けを求めるが化け物にその声は届かない。

 真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の巨大な鋏が男に近付いた瞬間、一陣の風がその場に吹いた。

 男の目の前に剣を持った銀髪の冒険者と思しき女性が立っていた。


「早く逃げて下さい!早く!!」


 男は這い蹲りながら路地へと消えていく。

 ベリスティアは間一髪の所で間に合った。

 移動しながら千里眼で真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)を確認していたらちょうど男に襲い掛かろうとしていたのだ。

 男の目の前に転移して剣に風を纏わせて攻撃を弾き飛ばしたのだ。


 ベリスティア真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)と正面から対峙し、手にする剣から冷気を放射する。

 一般的に虫系の魔物は寒さに弱い。

 それを知っているベリスティアはウヴァルの凍結の力が込められている魔剣から冷気を放ち、周囲の気温を下げて動きを鈍らせようと考えたのだ。


 先程、一撃を加えて分かったのが甲殻が異常に硬い事だ。

 ベリスティアの加えた一撃で傷一つ付いていなかった。

 彼女の攻撃ではダメージを与えられない可能性が高いと判断したのだ。

 そうなると一番、可能性が高いのがアリアの破壊だ。

 如何なる物でも破壊するアリアの能力であればこの硬い甲殻を破壊する事が可能だであると考え、彼女自身はサポートに回る事にしたのだ。


 だからと言って攻撃をしない訳では無い。

 ベリスティアは間合いを詰める。

 真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)は鋏を振ってベリスティアを払い除け様とするが、攻撃が当たる瞬間、ベリスティアの姿が消える。

 姿を現したのは目の直ぐ傍。

 目は甲殻に守られていないので硬くないのだ。

 冷気を纏う剣は目を斬り付けると傷口毎凍らせる。


 突如、襲う目の痛みに真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)は暴れ始める。

 ベリスティアは冷静に距離を取った場所に転移して安全な場所へ避難する。


凍結霧(ネーベル・アイス)


 暴れている真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)に向けて氷の霧を放つ。

 これは敵を凍結させる霧なのだが、真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)程の魔物になれば簡単に凍結する事は無い。

 動きを鈍らせる為に周囲の温度を下げる目的なので凍らなくも問題は無い。


 氷の霧が晴れると暴れていた真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の動きが緩慢としていた。

 ベリスティアの考えは間違っていなかった。

 ちょうど良いタイミングでアリアとミレルが追い付いて来た。


「アリアちゃん、甲殻が硬いのでそこを破壊して下さい!ミレルさんはアリアちゃんの援護をお願いします!」


 硬い甲殻を破壊すればベリスティアやミレルでも攻撃が通るのだ


「分かった!」


「了解」


 アリアは動きが鈍った真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)との距離を詰める。

 ミレルは前線を走るアリアを見ながらどれだけの実力があるのかと見たかった。

 昔のアリアしかミレルは知らないので戦うアリアを想像出来なかったのだ。

 今、アリアが手にしている不釣合いな漆黒の大剣も違和感があった。

 あの小さいアリアがどうしてそんな大剣を武器にするのか。


 アリアは動きが鈍った真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の腕を掻い潜り大剣を振るう。


破壊(デストラクト)!」


 その一撃は容易く腕の甲殻を破壊する。

 接触しないと効果は無いが、触れてしまえば最強の攻撃である。

 アリアは破壊の魔力を手にした大剣に込めると黒い魔力が刀身から揺らめくように放たれる。

 手近な甲殻を手当たり次第破壊していく。

 寒さで動きが鈍った真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)はアリアを振り払おうとするが、動きの鈍った攻撃ではアリアを振り払う事は出来ない。

 それ所か振るった鋏が大剣とぶつかり、一番硬い鋏の甲殻も破壊される。


「私も仕事しないとね」


 ミレルはその隙に甲殻が破壊されて中身が剥き出しになった所を攻撃していく。

 甲殻の中は筋繊維が詰っておりそれなりの強度はあるが剣が通らない程では無い。

 腕の筋繊維を集中的に攻撃をする。

 一撃では大した威力にはならないが、何回も攻撃すれば筋繊維をズタズタにする事は出きる。


「良い感じで足を止められましたね」


 真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の視界で派手に甲殻を破壊しまくるアリアを余所にベリスティアは二本の左脚を氷付けにしていた。

 二本の腕を除くと八本の脚が付いているが二本も動かなくなれば動きは非常に鈍くなる。

 脚を使った動きはまともに出来ない。


 ミレルが片腕を潰した事によりアリアの動きは自由になる。

 真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)はどんどん甲殻が破壊されていく。

 腕より前にある甲殻で破壊されていない所はほぼ無い様な状態だった。

 真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)はアリアの前で大きく口を開けた。


『下がって!!』


 カタストロフの声に従い大きく後ろへ下がると先程いた場所に緑色の液体が高速で発射された。

 地面からは何かが溶ける様な音を発していた。


『危ない。油断は禁物。恐らく消化液だよ』


 真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)はアリアに向けて消化液を発射したのだ。

 カタストロフの注意を受けたアリアは口の動きも意識する。


 腕が潰れてもう一本の腕もズタズタにされかけ、全ての足が氷付けにされた真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の動きは非常に鈍っている。

 その状態で攻撃出来るのは口からの消化液と尻尾ぐらいだ。

 残っている尻尾もベリスティアが甲殻の隙間から凍結の力を持つウヴァルの力が込められた魔剣を突き刺し、根元を半分近く凍らせていた。

 まとめに動けない真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)にベリスティアを攻撃する術が無い。

 一方、ミレルも碌に動かないもう一つの腕を徹底的に潰している。


 アリアは真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の目の前で漆黒の大剣を構える。

 碌に動けない真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)は消化液を吐こうとするが、アリアは大きく飛び上がり射線上から外れる。

 狙うは脳天。

 いくら巨大な魔物とは言え脳天を潰されれば大抵の魔物は死ぬ。

 それは真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)とて例外では無い。


「やぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 アリアの破壊の力が宿った漆黒の大剣が振り下ろされる。

 その一撃は真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の破壊された甲殻は砕け散り、脳天を破壊する。

 追い討ちを掛けんとばかりに剣を突き刺した。


雷撃(サンダーボルト)!」


 雷が真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)の内側から駆け巡り体内を容赦なく焼いていく。

 いくら外側が強固だからと言って中を直接焼かれては堪った物では無いだろう。

 真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)は身の内から体を焼かれ大きな音を立てて沈み込む。


 アリアは真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)から離れてミレルとベリスティアの元へ。


「あれで倒したので良いのかな?」


 アリアは動きを止めた真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)が死んだのか確認する。

 動きは止まったが完全に倒せたか分からないのだ。


「多分、あれで倒せていると思います。暫くしたらギルドの方が来るので後処理は任せたら良いでしょう」


「そうね。でもこんな魔物がどうして街中に……」


 ミレルの疑問はこの場にいた全員が疑問に思っていた。

 魔物に詳しいベリスティアは蠍の魔物は大陸南部、または砂漠地帯にしか生息していない事を知っているので余計に疑問が浮かんでいた。


 真紅の死を象徴する蠍(アンタレス)を倒して一息を吐いていると突如、街の南側から巨大な青い火柱が上がり、町全体を震わす。

 アリアはそれを見てその火柱が何か直ぐに分かった。


「……リアーナさんが戦ってる……」


 街中であれだけの威力が出る攻撃を使っている。

 それは普通に考えて単なる戦闘では無い事は明らかだ。


 ベリスティアはどうするべきか判断に迷っていた。

 リアーナから自分の戦闘にアリアを近付けない様に指示されていたからだ。

 ただあれだけ力を開放して戦っている事を考えると加勢しない危ないのでは、とも思ったのだ。


「ベリス、ミレルさん、きっとリアーナさんが戦ってる!加勢に行くよ!」


 アリアは迷わずそう判断した。

 冷静なベリスティアはミレルを同行させるのは避けたいと考えていた。

 何故ならアリア達には知られてはいけない秘密がたくさんある。

 特に全開で戦っているリアーナの姿を見せれば説明のしようも無い。

 だが緊急事態の可能性を考慮すると、そうは言っていられない。


「ミレル様、私とアリアちゃんでリアーナ様の加勢に行きますのでギルドへの対応をお願いしてもよろしいですか?」


 ベリスティアは色々と考えた結果、この場の処理をミレルに丸投げする事にした。


「ミレル様はカーネラルの騎士なのであんまりややこしい事に関わるよりはここで魔物を討伐した事ぐらいに留めておいた方が良いのでは無いかと」


 正直な話、向こうの戦いに参加した所で大きな問題にならないのだが、ミレルを遠ざける単なる方便である。


「私もリアーナ様に加勢に行きたいけど、確かにそうよね……」


 ミレルはベリスティアの言葉を聞き、留まる方が良いと考え始める。


「残念ながら皆さんにはここにいて貰いましょう」




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