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悪魔となって復讐を誓う聖女  作者: 天野霧生
第一章:復讐の聖女
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16:Eランクでは困ります

「どう言う事でしょうか?」


 少し戸惑いながらミランダに聞き返すヒルデガルド。


「実戦のレベルだとヒルデガルドさんは間違いなくAランク以上だと思います。その様な方が低ランクの依頼ばかりしてランクを上げるのは勿体無いと思いまして……。出来る事なら早めに高ランクの依頼を受けて頂いた方がギルドも冒険者にとっても有意義なんですよ」


 ヒルデガルドは少し思案する。

 いざお金が必要になった時を考えると高ランクになっておいた方が得かもしれないと思った。

 高ランクの依頼は総じて難易度は高いが報酬も高い。

 ヒルデガルドはゴザがBランクと言うのを考慮すれば自らがどのくらいの強さにあるかは大よそ予想が付いていた。


「因みにどうやったら昇級試験を受けられるのですか?」


「ギルドからピックアップされた依頼を受けて頂く形になります。それらを全て受けて頂いたら昇級試験を受けて頂きます」


 ヒルデガルドは説明を聞き、可能なら受けた方が良いと思った。

 だがアリア達の行動を邪魔してまで受けるつもりは無かった。


「アリアちゃん、可能なら受けたいと思っていますが、大丈夫でしょうか?」


「うーん……状況次第なんだけど……リアーナさんはどう?」


 アリアとしては急ぎの用事さえ無ければ構わないと思っていた。


「折角のチャンスなんだから受けておけば良いんじゃないか。私とハンナで例の件はやるからアリアとヒルダ殿で依頼を受けておいたら良いんじゃないか?」


「私も問題無いと思います。寧ろヒルダ様が早めに高ランクになれるなら後々、都合が良いと思います」


 リアーナとハンナは問題無い様だった。

 それを聞いてヒルデガルドの答えは決まった。


「是非、その話に乗りたいと思います」


「そう言って頂けると助かります」


 ミランダは嬉しそうに言った。

 彼女の事情として早期に高ランクになれる冒険者を見つけるとその冒険者のランクが上がった際にボーナスが貰えるのだ。

 心の中でガッツポーズをしており、ある意味ゴザには感謝していた。


「受けて頂く依頼がこちらになります」


 依頼書五枚をカウンターに広げる。


「まずDランクの月影草の採取。次にCランクのグレーターブルの討伐、Bランクのボモツリーの実の採取、Bランクのワイバーンの討伐、最後にAランクのハンタータームの巣の駆除の五件です。これをDランクの依頼から順に受けて頂きます」


 月影草は西の海岸沿いの断崖絶壁に生える薬草で使い道は解熱効果と沈静効果があり重宝されている。

 グレーターブルは西に広がる草原地帯に住む大型の牛の魔物だ。

 ボムツリーは実に刺激を与えると爆弾の様に爆発するこの地方特有の植物だ。

 西の草原地帯の水場付近に自生している。

 主に砲弾や爆弾に使用される。

 ワイバーンは厳密には竜では無いが小型の竜の様なモンスターだ。

 素材は割りと高い値で取引されている為、Bランク以上の冒険者から良い稼ぎ口として人気のある魔物だ。

 ハンタータームは草原に救う巨大な蟻の魔物事だ。

 単独であればCランクだが、巣の駆除となると最低でも五十匹以上相手にせねばならず、単体ではCランクだが数の多さからAランクの扱いとなっている。


「これは私も一緒に受けて良いの?」


「同行は構いませんが依頼を受けるのはご遠慮下さい。一応、依頼自体が試験となっておりますので。後、ギルドから監督官役の冒険者が同行しますのでご了承下さい」


 昔、貴族の子供に高ランクにする為に冒険者を雇って不正を行った経緯があり、ギルドでは必ず監督官役の冒険者が付き添う事になっている。


「危ない時は手を出しても良いんだよね?」


「それは問題ありません。それでは依頼の受注を行うのでカードをお願い出来ますか?」


「あ、はい」


 ヒルデガルドは先程受け取ったカードをまたミランダに渡す。


「受注処理が終わりました。今回は全て西の草原地帯に集中してますので頑張って下さい。監督役については明日から一週間日程を確保しますので、朝の九時にギルドの受付までお願いします」


 ミランダからカードを受け取ったヒルデガルドは少し不思議そうにカードを見て懐にしまう。

 受注処理の終えたミランダの元に別の受付嬢が来て何か耳打ちした。


「リアーナさん、アリアさん、少しお時間宜しいでしょうか?」


 引き止められて首を傾げるアリアとリアーナ。


「何かありました?」


「昨日お受けになられた盗賊討伐の精算が終わりましたので、依頼完了処理をしてしまっても大丈夫ですか?」


 二人はあぁ、と思い出した様だ。


「お手数ですがカードをお願いします」


 二人は懐からカードを出しミランダに渡す。

 ミランダは受け取ったカードさっと手元の魔道具に通し、完了の処理を済ませカード返却する。


「依頼料金貨十枚に加え、人質救出で銀貨五十枚になります」


ミランダは金貨十枚と銀貨五十枚の入った麻袋を手渡す。

 リアーナは金貨と銀貨の入った麻袋を腰に下げているポーチに入れる。


「うむ、確かに受け取った」


「これで依頼は完了です。皆さんはSランクなので出来ればたくさん高ランクの依頼を受けて頂ければ有難いのですが……」


 アリア達はここに来る途中で倒したマーダーウルフの所為でこの街で数少ないSランク冒険者になってしまっていた。

 リアーナとハンナはAランク、アリアはDランクで元々高ランクのパーティーとも言えたのだがそれに拍車を掛けた形だ。

 ギルドとしても流れの高ランク冒険者には出来るだけ高ランクの仕事を片付けて欲しかった。

 理由は単純に対応可能な人員が少ないからだ。

 ピル=ピラに他のSランク冒険者いない訳ではない。

 街一の剣士と名高い剛剣のガリアス、魔術研究一筋の天網の魔女サベージュの二人のSランクがいるが、どちらも一癖も二癖もある人物なのだ。

 片方は修行に余念が無い剣術馬鹿、もう片方は引き篭もりの研究馬鹿と言うまともに依頼を受けない二人なのだ。

 実力はあるが素行に色んな意味で問題がある為、ギルドは頭を悩ましているのが現状なのである。

 しかし、アリア達にそんな事情は関係無い。


「当面はアリアとヒルデガルドが依頼を受けるが、そこまで期待はしないで欲しい。用事が済めば他の街に行く予定だからな」


 リアーナはやんわり断りを入れる。

 対象の動き次第な部分はあるが、リアーナの予想ではそれ程長い時間は掛からないと踏んでいる。


「そうですか。また宜しくお願いします」


 少し肩を落としたミランダに申し訳無いと思ったリアーナだが、都合がある以上、仕方が無かった。

 まだ夕方には早い時間だったが、中途半端な時間なのでアリア達は宿舎に戻る事にした。



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