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悪魔となって復讐を誓う聖女  作者: 天野霧生
第三章:闇に沈みし影の刃
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133:カヤとの邂逅

 翌日、アリア達はリードル商会へ寄ってから冒険者ギルドへ来ていた。

 森の魔物の討伐依頼を受ける為だ。


 帰りの護衛依頼についてはハンスが満面の笑みで了承した。

 結果的に希望通りになっとのでハンスとしては願ったり叶ったりなのである。

 更に未知の魔物に興味を示し、討伐後に死体を見てみたいと興奮する始末。

 そこに関しては冒険者ギルドと相談すると言う形で納得して貰った。


 冒険者ギルドへ入ると昨日と一緒で閑古鳥が鳴くぐらい冒険者が少ない。

 だが昨日とは一つ違い、受付カウンターで一人の女性冒険者が受付嬢と何か話していた。

 開いている受付がそこしか無い為、その女性冒険者の後ろに並ぼうとすると受付嬢がリアーナの姿に気付き、声を掛けてきた。


「リアーナさん、もしかして依頼を受けてくれるんですか!?」


 受付嬢の声に女性冒険者も一緒に振り向く。

 その女性冒険者は艶やかな黒い髪を後ろで一本に纏めて、黒い瞳と言うこの大陸では決して見ない特徴を持っていた。

 黒い髪であればヒルデガルドみたいに珍しくはないのだが、黒い瞳を持つ人間はこの大陸ではまずいない。

 何よりも目を引くのが腰に差した刀だ。

 西の大陸のある国でのみ作られている武器で片刃の独特の反りを持つ剣だ。

 この大陸ではまず目にする事は無い。


「あぁ、そのつもりだ」


「カヤさん、良かったですね。これで討伐メンバーが揃いますよ」


 カヤと呼ばれた女性は静かにアリア達を見る。


「討伐メンバー?彼女も森の魔物の討伐依頼を受けるのか?」


「はい!出来れば成功率を上げたいので一緒にパーティーを組んで当たって欲しいと言うのがギルドとしての意向と言いますか……」


 受付嬢は少し申し訳無さそうにリアーナを見る。


「受けるのも構わないし、彼女とパーティーを組むのも構わないが、一つだけ条件がある」


「条件ですか?」


 条件と言われ受付嬢の表情が曇る。


「あぁ、大した条件じゃない。私達は十日後にピル=ピラへ護衛依頼で戻るからその期間だけでならと言う条件だ。もしその期間に達成出来なければ当然、報酬は無しで良い」


 受付嬢は少し考える。

 今回の条件は期間が区切る事によって討伐未達成のペナルティを無くす為の案だ。


「う~ん……カヤさん、短い期間ですが、良いですか?」


「……彼女達なら問題無い」


 カヤは即答した事にリアーナは少し警戒をする。

 何故なら見ただけでリアーナ達の事を知っていると感じたからだ。

 同時にハンナのもカヤの警戒を示した。


「……あなた達、ピル=ピラで有名だから。実際にギルドで何回か見た」


 カヤの言葉は最もだった。

 追っ手が掛かる身として警戒は解けなかった。


「私はカヤ。Aランク。一時的にだけどパーティー組んでもらって良い?」


 最初にパーティーを組むのは構わないと言った以上、断る選択肢は無かった。


「あぁ。知っていると思うが、私はリアーナだ。右からアリア、ハンナ、ヒルデガルド、マイリーンだ。短い間だが宜しく頼む」


「ん」


 カヤは静かに頷く。


「そう言えば一つ依頼でギルドにお願いある」


「何でしょうか?」


「出来ればギルドから一名から二名、随行して欲しい」


 リアーナの申し出にカヤが訝しげな表情を浮かべた。


「私が信用出来ない?」


「いやそう言う訳じゃない。君はピル=ピラの合成獣(キメラ)討伐に参加したか?」


 カヤは静かに首を横に振る。


「昨日、森の魔物の説明を受けた時にピル=ピラで討伐した合成獣(キメラ)と同じ特徴を持っていたんだ」


「切ったら分割して触手を出して動き始めるんだよ」


 アリアがリアーナの言葉を補足し、その内容を想像したのかカヤが少し気分が悪そうな顔をする。


「……何それ……気持ち悪い……」


「普通に切っても倒せないから跡形も無く消し炭にするしか無かったんだよね」


「森の魔物も同じ様な合成獣(キメラ)だった場合。討伐するのに死体が残らない可能性があるんだ」


 死体が残らない依頼の場合はギルドの職員が証人として随行する事は珍しい事では無い。


合成獣(キメラ)なんているんですか?」


「ピル=ピラではかなりの数を討伐している。ここからは離れているが、この森に研究所があった事から森の魔物が合成獣(キメラ)の可能性があると考えた。そもそもここの狩人は昔からこの森に住んできた人達だ。その者が見た事が無い魔物、且つピル=ピラでの合成獣(キメラ)騒動。どうしても疑いたくなるさ」


 リアーナの言葉にカヤと受付嬢は納得した様な顔だった。

 受付嬢はピル=ピラの合成獣(キメラ)事件の顛末については重要案件として通達として来ていたので覚えがあった。

 カヤ自身は別ルートで情報を得ていたので納得しやすかった。


「分かりました。人選や調整もあるので明日でも大丈夫でしょうか?私一人では判断出来ない事もありますので」


「私は大丈夫だ。君は?」


「……私もそれで良い」


「皆さんギルドの宿舎に泊まっておりますので各部屋に決定次第お伝えに行きます」


 受付嬢はそう言い残してカウンターの奥へと消えていく。


「……また明日」


「あぁ、また明日」


 カヤは踵を返し宿舎の方へ戻っていく。


「只者では無さそうな雰囲気ですね」


「実力は一緒に戦えば分かるだろう。でもAランクか……初めて聞く名前だな」


 ファルネットで活動する有名所の冒険者の名前であればある程度は頭に入っているリアーナだったが、カヤの名前は記憶に無かった。


「何処か私に似た匂いがします」


 ハンナは直感ではあるがそう感じた。


「つまり表の者では無いと言う事か?」


「はい。それに血の匂いも濃いです」


 ハンナの言葉にリアーナの表情が険しくなる。

 冒険者に血の匂いがするのは何も珍しい事では無い。

 ハンナの嗅覚は人よりかなり優れており血の匂いでも魔物の血か人の血なのか判断出来る。

 カヤの刀に付く血の匂いは圧倒的に人の血の匂いが濃かった。


「それに私達に合わせてこの街に来た可能性も否定出来ません。それに彼女は私達全員を一瞬で判断していました」


「判断が難しいな。アリアはどう感じた?」


 リアーナはアリアへ振る。

 負の感情を敏感に察知出来るアリアなら何か分かるかもしれないと思った。


「敵意や殺意は無さそうだけど。こっちに向いている負の感情は無かったよ」


「そうか。ハンナは一応、彼女の警戒を頼む。魔物は援護をヒルダ殿とマイリーン殿、前衛は私とアリアと彼女になるだろう」


 リアーナはざっくり方針を決めて一日、ギルドでのんびり過ごす事になった。



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