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悪魔となって復讐を誓う聖女  作者: 天野霧生
第一章:復讐の聖女
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14:ヒルデガルドが仲間になった

 現在、アリア達はギルド併設の宿舎の食堂ではなく、ギルドの表でのんびりヒルデガルドを待っていた。

 中の酒場で待っていても良いのだが、昨日絡まれたばかりなので外で待つ事にしたのだ。

 三十分程待っているとギルドの前に一台の馬車が止まる。

 御者台から一人の女性がアリア達の方に顔を出す。


「みなさんお待たせして申し訳ありません。馬車はどちらに停めたら宜しいでしょうか?」


 御者台にいたのはヒルデガルドだった。

 昨日と違い、神教の刻印は無く、少し立派な馬車だ。

 金属フレームと木の合わせ作りで広さも普通の馬車より広そうな作りになっている。

 野営時に四人は中で寝るスペースは確保出来そうな広さだ。


「ヒルダ様、馬車置き場には私がご案内致しますので隣りに乗っても宜しいでしょうか?」


 ハンナが前に出てヒルデガルドの案内を買って出る。


「はい。それではこちらへどうぞ」


「失礼致します。リアーナ様、アリア様。これから馬車置き場と宿舎をご案内しますので、ギルドの中で待っていて頂いて宜しいですか?」


 馬車の御者台に乗り込むハンナ。


「じゃあ、中で待ってるから」


 アリアとリアーナは馬車を見送りギルドの中で飲み物でも飲みながら二人を待つ事にした。

 暫く待っているとハンナとヒルデガルドがこちらにやって来た。

 今日のヒルデガルドは昨日着ていた神教の法衣では無く、非常に冒険者らしい格好になっていた。

 麻の長袖のインナーの上から皮で出来たトップスに膝丈のスカート、皮のロングブーツに上からフード付のマントだ。

 腰の左右にショートソードが一本ずつに大振りのナイフと小振りのナイフ、更に投擲用のナイフもあり、ちょっとした刃物マニア状態だ。

 実際に彼女自身は武器を眺めるのが好きだ。

 【錬成】の能力に目覚めてから自分で武器を作って、それをじっくり眺めながら一人でお茶をするのだ。

 手持ちの装備のほとんどは彼女自ら錬成した物だ。


「お待たせしました。部屋は皆さんと一緒にして頂き有難うございます」


「まぁ、パーティーみたいな物だし、宿を取る時に毎回別の部屋にするのはお金も掛かるからこっちもその方が都合が良いしね」


 冒険者のパーティーとなると日々依頼を受けてお金を稼いでいるが、何時如何なる時にお金が必要になるか分からないのだ。

 実際に装備が壊れてしまったらかなりの出費になる。

 武器や防具はそこそこの物を揃えようとすると金貨百枚なんて言うのはあっという間に消えてしまう。

 この面子に限って言えばお金には困っていない。

 新たに加わったヒルデガルドは金貨より更に価値のある水晶貨、価値としては金貨千枚相当の貨幣を十枚以上手持ちにある。

 これは母親の遺産もあるが、錬成で作った物を小遣い稼ぎの為に定期的に売りに出して稼いでいたのもある。

 実はカーネラルの王都ドルナードのある武器屋の上質な武器のほとんどがヒルデガルドが錬成した武器だったりする。

 錬成を行うに当たり武器の作り方が知りたくて、その武器屋の主人と仲良くなり武器を卸す様になったのだ。


「じゃあ、登録を先に済まそう」


 アリアは彼女の手を引っ張り受付に向った。

 それを見ながらリアーナはコーヒーを飲みながら優しく見守っていた。


「あの二人は仲が良いな」

 

「はい。神殿におられる時にお茶に誘って頂くのはいつもアナスタシア様かヒルダ様でした。暇な時はアリア様とよく喋っておられました」


「そうか、それは良かった。我が家に来てからアリアには友人と呼べる人間がほとんどいなかったから心配だったんだ」


 アリアは聖女になる為に箔付けとしてリアーナに引き取られた。

 それからは礼儀作法、必要知識の勉強で外にで知人を作る事が出来なかった。

 聖女になってからは周りが自然と距離を取る様になり、家族以外に心を許せる者がいなかった。

 アリアがいた孤児院はカーネラル南方の国境付近の為、気軽に行く事が出来ない場所だったから尚更だ。

 リアーナはその事を非常に気に掛けていたのだ。

 ヒルデガルドと楽しそうにするアリアを見ると少しほっとしていた。

 リアーナは例の事件で壊れてしまった部分はあっても自分達がいる事によって少しでも以前のアリアに近づけないかと考えていた。

 例え悪魔になったとしても心は変わらないで欲しいと言う願いを心に秘めていた。

 子を成さないリアーナにとっては大切な娘なのだ。


「大丈夫ですよ。正直、ヒルダ様が一緒に来られる事になったのは僥倖だったと思います」


 ハンナはヒルデガルドの同行は諸手で賛成だった。

 アリア達の事情があるにせよ、神殿にいる時の二人の様子を一番近くで見た来たのだ。


「そうだな」


 朝の苦めのコーヒーを飲みながらリアーナは受付で一生懸命ヒルデガルドに説明するアリアを眺めていた。





 ヒルデガルドの手を引っ張りギルド内のカウンターに来たアリアはミランダが座っている受付に向う。


「新人の登録をお願いします」


 ミランダは不思議そうにアリアを見たが、後にいるヒルデガルドに気付いた。


「もしかして後にいる人?」


「はい。今日から私達とパーティーを組む私の友達のヒルダさん」


 アリアに紹介され前に出て一礼をする。


「ヒルデガルドです。宜しくお願いします」


「私はここ、ピル=ピラのギルドで受付を担当しているミランダです。宜しくお願いします。それではまずこちらの用紙に必要事項を記入して下さい」


 ミランダから用紙を受け取りヒルデガルドはさらさらと記入していく。

 必要事項と言っても名前、年齢、特技、魔法の使用可否だけである。

 記入した用紙をミランダへ提出する。


「お名前はヒルデガルドさん、年齢は二十五歳、特技は剣、魔法は氷属性と土属性ですね。必要事項の記入は大丈夫ですね。実技試験と魔力適正検査が奥の修練場であります。開始時間を確認しますので少々、お待ち下さい」


 ミランダは足早にカウンターの奥の部屋に消えていく。

 一応、冒険者ギルドに登録するには実技試験がある。

 これは実力が無い者が無闇に冒険者になって命を落とすのを防ぐ為だ。

 直ぐにミランダが戻ってきたが、何処かその表情は渋い。


「あの……一応、今日の午後からなのですが、もしご都合が宜しければ登録を明日にずらしませんか?」


 アリアとヒルデガルドは首を傾げる。


「何かあるのですか?」


 ヒルデガルドの質問に彼女はアリアの方を少し見た。


「実は今日の試験教官が昨日、アリアさん達に絡んできたゴザさんなんですよ。多分、アリアさん達のパーティーの方だと分かったら碌でもない事になる気がして……」


 アリアは少し困った顔になり明日に登録を伸ばそうかと思った。

 変に絡まれるのは面倒だし、友人の登録に厄介事を持ち込みたくなかった。


「問題ありません。どの程度の方かは存じ上げませんが、相手の実力も分からず絡む様な方であればどうにでもなります」


 ヒルデガルドはアリアを心配を意に介さず午後からの実技試験を了承した。

 アリアはそれを聞き少し嫌な予感がした。


「ヒルダさん、急いでないから明日でも良いんだよ。無理に今日でなくても……」


「そうですよ。何かあってからでは遅いですので……」


 アリアとミランダ、二人でヒルデガルドを止める。


「いいえ、時間は有限です。折角の機会ですのでアリアちゃん達にも私の戦い方を見てい頂きたいのです」


「分かりました。午後の枠で入れておきますのでくれぐれも無茶はしないで下さいね」


 ミランダは渋々受け付けた。

 彼女とすれば登録から絡まれて嫌な思いをして欲しくなかったのだ。


「魔法の使用は大丈夫ですか?」


「問題ありません。相手を殺す様な行為や周囲に大きな損害を与える行為はダメですが、他は特に制限はありません」


「分かりました。有難うございます」


 アリアとヒルデガルドは受付から一旦、離脱する。


「ヒルダさん、明日でも良いんだよ」


 心配そうに登録を明日にする様に促す。


「アリアちゃんに絡む様な不届き者には裁きを与えねばなりません」


 ヒルデガルドの目が完全に据わっていた。

 アリアはしまった、と頭に手を当てて天を仰いだ。


「一応、実技試験だから大怪我とかもダメだよ」


「大丈夫ですよ。ちょっと実力を見せるだけですから」


 にっこり笑って返すヒルデガルドにアリアは背筋に嫌な汗が流れた。




アリア「ギルドに登録してなかったんだね」


ヒルダ「神殿に篭っている神官がギルドに登録している筈ないじゃないですか」


ア「普通そうだよね・・・・・・。そう言えば何で御者出来るの?他の人がやってもらえそうな気がするけど」


ヒ「あれは一人旅がいつかしたいと思って暇な時間を見て教えてもらっていたんです」


ア「因みに腰に刃物が多いのは何で?」


ヒ「たくさんあった方がカッコいいと思いませんか?刀身とか見てるとうっとりしませんか?」


ア「・・・・・・」


ヒ「・・・・・・」


ア「・・・・・・」


ヒ「何か言って下さい。何か私が変な人みたいじゃないですか」


ア「刃物マニアの神官。猟奇殺人の匂いしかしないよね」


ヒ「それはあんまりでは・・・・・・」


ア「ヒルダさんは普段は何種類ぐらい刃物を持ってるの?」


ヒ「えー、調理用の包丁とナイフで五本、解体用ナイフ大中小で各一本ずつに解体用鋸が大小一本ずつ、戦闘用のショートソードが二本、後は投擲用のナイフが予備含めて五十本、夜の観賞用に十本ぐらいですかね」


ア「・・・・・・引くよ。収納のほとんどが刃物じゃないの?バラバラ殺人の犯人でもそんなに持ってないよ」


ヒ「そんな人を猟奇殺人犯を見る様な目で見ないで下さい」


ア「・・・・・・それより性質が悪い様な・・・・・・。そもそも夜の観賞用の十本とか謎」


ヒ「美しい刀身を見ながら飲むお酒は美味しいじゃないですか」


ア「マニア怖い・・・・・・」


ヒ「そんな目で見ないでぇ~」


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