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頭ポンポン
「ナギサ、おはよーっす」
朝の通学途中、そう言って私の頭をポンポンと叩いてきたのは幼なじみのダイチだった。
「ちょっと! そういうのやめてくれる?」
「わりーわりー、ナギサの頭がちょうどいい位置にあってさー。チビだからかな」
ダイチはそう言ってケラケラと笑う。
「チビって言うな!」
身長がみんなと比べて少しだけ、ほんの少しだけ小さいのは私が気にしてることだ。ダイチはそれを知っててからかってくる。嫌なやつだ!
そんな様子を見ていた人に、私は気付かなかった。
数分後。
「片倉さん! おはよー」
そう言って頭をポンと叩いてきたのはダイチ……ではなく、別のクラスメイトの男子だった。
「……は? 何?」
「ひっ!」
私が怒ってそう言うと、その男子は脅えたような声を上げた。
「女の子の頭を触るなんて何を考えてるの!?」
「え、だってさっき大隅が……」
「言い訳するな! さっさと謝る!」
「ご、ごめんなさい!」
ついには涙目になってしまう男子。
この日を境に、片倉ナギサはちょろくないという噂が広がったのだった。
……いや、私は最初からちょろくないから!