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入学式の思い出(Side先輩)
「なぁ、ネコ」
「なぁに? ヨウタ」
ある日の放課後のこと。風紀委員の活動の合間に、ヨウタはネコに話しかけた。
「片倉さんが風紀委員に入るきっかけになったっていう入学式の日のことだけどさ」
「あー、うん」
「ゴミ拾いをしてたっていうけど、あれ、普通に罰だったよな」
「うん、そうだねー」
ヨウタの記憶が正しければ、入学式の準備をサボったネコは、罰として学校のゴミ拾いを命じられ、さらには風紀委員に入るように言われたのである。
「…………お前、片倉さんに何て言ったの?」
「べっつにー? ゴミ拾いをやってるってことと、風紀委員に入ることになったことを伝えただけよ」
事もなげに言うが、面倒なことを回避するためには全力を尽くす彼女のことだ。うまく自分をよく見せて、片倉ナギサを風紀委員に入れさせたのだろう。
……自分の代わりに働いてくれる人として。
「この間も言ったけど、お前、片倉さんに殴られても知らないからな」
「大丈夫大丈夫、覚悟してるからー♪」
ネコがそう言うのを聞きながら、ヨウタは「やっぱ俺が殴っとこうかな……」と思うのだった。