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作者: いぬ


 僕は犬。今の名前はハリーと言うらしい。前の名前は……覚えていない。無かったのかもしれない。


 狭くて透明な部屋から僕を出してくれたのは優しいご主人様。

 僕を丁寧に抱きかかえてくれた温もりは今でも忘れない。


 

 ご主人様は散歩が好き。

 ご主人様が僕に紐を着けて一緒に歩き出す。

 最初の頃はすぐ疲れちゃったけど、今ではもう慣れっこで楽しみになっている。

 だから決まった時間になると吠えて教えてあげる。ご主人様との散歩が好きだから。



 僕はご飯を食べてみたい。

 いつも決まった時間にご主人様の家族がご飯を作り出す。

 それはいつも種類が違って凄く美味しそうで涎がとまらない。


 でも食べたことは無い。いつもご主人様達が食べている横で、茶色いカリカリばかり。

 それが終わったら骨みたいなのをかじって気を紛らわせる。

 いつか僕も一緒のご飯を食べてみたい。



 ご主人様と僕は遊ぶのが好き。

 最初は何したら良いかわからなかったけど、決まった動きをすると喜んでくれる。

 たまに間違うけどそれでも喜んでくれる。

 ご主人様が喜んでくれるのが好きだから、僕はご主人様と遊ぶのが好き。



 

 でもそんなご主人様が、もうこの家には居ない。




 決まった時間に吠えると来てくれるのはご主人様の家族。

 散歩の道が変わった。速度も変わった。

 見る風景が変わるのも楽しい。


 ご飯は変わらず茶色いカリカリ。

 でもあっちの料理も同じのが続く日がある。

 いつかまたいろんなご飯を見てみたい。


 遊び方も同じ。決まった動きをすると喜んでくれる。

 でもすぐ飽きちゃうのかな? 遊ぶ時間は少ない気もする。


 毎日を過ごしていると地面がどんどん変わっていく。

 熱くなったり、葉っぱが落ちてたり、冷たくなったり。


 僕はここに居続ける。



 

 そんな日を過ごしていると透明な壁の向こう側にご主人様の姿が見えた気がした。

 黒い布に包まれてるけど間違いない。

 扉が開く音が聞こえてくる。



 やっぱりご主人様だ! 



 うれしくて尻尾を揺らしているとあの温もりと共に抱きかかえてくれる。


 黒い布が白くなる頃、美味しそうな料理がいっぱい見えた。





 

スーツがあああああああ!

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