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漂流

作者: カフカ

妄想を遠慮無い破廉恥な失笑と共に、書き留めただけ

久しぶりに旧友と出会い、その辺をぶらぶらしながら、話を垂れていたのだが、その友人は、僕の話には興味など無いらしく、僕はどうしたのだと聞いた。


その友人は、平たい顔面に皺を繕って、

大したことでは無いと言うのだ。

大したことでは無いと云うのなら、何故そんなに憂鬱なのだ。


友人は頑として口を割らず、その汚い面に卑屈な笑いを作った。


僕は気にしない振りをした。別段理由も無いのだ。他人より、僕の方が逼迫して居るのに、問う権利などないように思った。


結局、何も変わらず、僕は帰った。そうしたら、書きたくなった。

恥ずかしながらも、身を切り、溢れたものを書くのだ。散文的というより、下手としかみえない出来具合いだったが、胸に詰まった水銀は、音を立てて、ゆっくり引いていくのが、分かった。

僕はその文書をその友人に送って、どうだと聞いたのだが、呆れながら苦笑する友人のひでぇ面が、ちょっとはマシになっただろうと想像して、僕は布団に身を投げた。


以来、10年経って、未だ音沙汰無い様子だけど、くたびれたネクタイを見るたびに、あいつのひでぇ面が、目に浮かぶ。

今度、クラス会でもしょうか。会わなくてもいい奴ばかりだが、人数が増えると、奇妙な連帯感が働いて、ドンブラコと必然的に集まるのだ。


********************


13年ぶりのクラス会、大人になると、変わりにくくなって、久しぶりに会った感じが無かった。

奴もちっとも変わってない。僕も、あまり変わって無かった。

例え10年後にまたクラス会をしても、あいつの面は変わらないのだろうか。


三次会の帰り道、酔った頭で考える。


するとあいつが後ろからやって来て、こう言ったと思う。


「自分の為に生きるのも、他人の為に生きるのも、難しい事だよ。僕は自分と他人に対して態度を変えるのが、酷だったっけ。

でも、久しぶりに酔ったおかげで、何も気にならなくなったよ。これから、4次会も来い。祝いたいのさ。嬉しいから、祝杯をあげたいのだ。」


僕はこの馬鹿みてぇな文句を聞き流し、金の無い男は、人の金で飲むものでは無いと、ふざけた文句を返してやって、家に帰って寝た。肺が、新鮮になった気がした。

読んでくださって、ありがとうございました。

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