おばあちゃんから聞いた話
数年前に亡くなった祖母(以下ばあちゃん)から聞いた話がいくつかあります。
ばあちゃんのお母さんの結婚話と、ばあちゃんが娘さん時代の話です。
いつかこの話をネタにして小説でも書こうかなと思っているのですが、そのままでも充分面白い話だったので先にこちらだけでも公開しようかなと思います。
少し耳を傾けて頂ければ、光栄です。
【ひいおばあちゃんの話】
ひいばあちゃんは御百姓さんの家に生まれたそうですが、農家をやるのが嫌で仕方がなかったそうです。
縁があって東京の下駄屋さんに奉公へ行き、ますます農業をしなくてもいい暮らしに憧れを持つようになりました。
もっともそれは期限付きの奉公だったため、約束の3年が経ちひいおばあちゃんは田舎に戻されてしまいました。
そんな時に持ち上がったのが、ひいおじいちゃんとの結婚話。
しかしひいおじいちゃんの家は御武家の家柄で身分違いの上、兄弟に何人も結核にかかる人がでたといういわゆる結核持ちの家系。
ひいおばあちゃんの両親は、そんな家に嫁には出せないと言ったらしいのですがひいおばあちゃんはもう一度東京に行けるならばと、結婚することに決めたそうです。
なかなか思い切ったおひいばあちゃんです。
ひいばあちゃんは生きていれば百十歳くらいとのこと。
なので少なく見積もっても九十年以上前の話ですよね。
厳格な人だったらしいひいおじいちゃんと、漫画に出てきそうなくらい明るく楽天家だったというひいおばあちゃん。
時代観がよく現れているエピソードと合わさって、とても興味深い話でした。
あと、おばあちゃんの娘時代の話も面白かったです。
【戦前のお話】
ばあちゃんは結婚する前は、今の麻布十番のあたりに住んでいたそうです。
ばあちゃんは普通の民家に住んでいたらしいのですが、すぐ近くには豪邸ばかりが建っていたそうで、おばあちゃんのお友達にもお嬢様がいたそうです。
しかもそのお金持ちっぷりが半端じゃない。
箇条書にすると、
・周囲はどこも滝やら池のある家ばかりで、おばあちゃんはお友達から朝早くにくれば 鯉 の 滝 登 り が見れるからと誘いを受けたらしい。
おばあちゃんは鯉の滝登りを見たのはそれが初めてだったとか。私も見たことないよ、そんなの。(笑)
・当時、氷屋さんに氷を切り出してもらうのが当たり前だった時代に、なんと製氷機付きの冷蔵庫があったとか。
ちなみにばあちゃんのお母さんは女給さんに頼んで見学させてもらって、お土産に氷を貰って帰ってきたとのこと。
・軽井沢の別荘に行くからと、そこにグランドピアノがあるにも関わらず自分の家のアップライトピアノを運んでいったとか。今の基準から考えても、お金持ちの行動です。
ちなみにおばあちゃんは、その時にお友達から一緒に別荘に行こうと誘われたらしいです。
パジャマだけ持ってくれば、あとは全部こっちで用意するよと言われたらしいのですが、当時の寝巻はパジャマなんかではなく古い浴衣をほどいたようなもの。
おばあちゃんはお母さんに頼んで、百貨店でわざわざパジャマを買ってきてもらったそうです。おばあちゃんはこの時初めてパジャマを着たのだそうです。
おばあちゃんのお母さんは、こんな高くつくなら別荘なんて行かなくてもいいんじゃないの、と言ったそうですが娘時代のおばあちゃんは軽井沢なんて行ったことないからどうしても行きたかったそうです。
うん、その気持ちはすごく分かるよ。
【戦時中の話】
戦時中、おばあちゃんは疎開ができない年齢で軍事工場で働かないといけなかったそうです。
お父さんは戦争に行き、お母さんは弟と千葉へ疎開していたため、おじいちゃんと二人暮らしをしていました。
工場では遅くまで働いていたため、夜は真っ暗。もちろん街灯なんてないから本当に闇の中です。
だからおじいちゃんが懐中電灯を持って、迎えに来てくれたそうです。
工場の外で懐中電灯を一回くるりと丸く回してから、今度は四角く回すのがおじいちゃんが来たという暗号。
それが見えると、お友達が『スガタキ(おばあちゃんのあだ名)、迎えが来たわよ』と教えてくれたそうです。
他の友達も皆家族が迎えにきてくれるため、それぞれ自分の家の合図を決めていたとのこと。
大変な時代だったとは言え、なんだかそれは面白いなぁと思いました。
【戦後の話】
おばあちゃんが暮らしていた所は、普通の人の暮らしていた所とお屋敷が固まっている所とで別れていたそうです。
普通の民家は戦時中の区画整理で皆壊されてしまったそうですが、お屋敷の方は戦後に進駐軍に没収され返して貰えなかったとか。
それでお友達ともばらばらになってしまったらしく、きっと淋しかった(それどころじゃなかったかもしれないですが)でしょうが、没収されてしまうくらいなら壊されてしまってまだ良かったかもね、なんて話もしていたそうです。
昔の話を聞くのは本当に面白いですね。
おばあちゃんが生きているうちに、機会を得られて本当に良かったなと思います。
皆さんも田舎に帰って話を聞くタイミングあったら、おじいちゃんおばあちゃんに昔の話をねだってみるのも良いかもしれません。
そんな感じの、おばあちゃんから聞いた話でした。