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こんな夢を観た

こんな夢を観た「一発芸のネタを探す」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/08/15

 今度の休みにみんなで集まって、一発芸を披露し合うことになった。

「おれ、腹踊りをするぞ。得意なんだ、あれ」桑田はそう言うと、腹を出して体をくねらす。

「ちょっと。今、やることないじゃん。見せないでよ、そんなお腹っ」わたしは思わず顔をそむけてしまった。

「そうですねえ、なら、わたしはマジックでもやりましょうか」志茂田の長い指が、ひらひらっと踊る。パッと、ピンク色のカーネーションが現れた。

 おーっ、と歓声が上がる。

「すごいじゃねえか、やるなあ、お前」桑田が手放しで褒めちぎる。

「いいなあ、みんな芸があって。ああ、どうしよう。何をしたらいいか、わからない」わたしは困り果てた。


「何かできるだろ? 例えばほら、歌って踊る、なんてどうだ」桑田が勝手なことを思いつく。

「音痴だし、踊りなんて、小学校の時に体育の授業でやったマイム・マイムしか知らないよっ」とわたし。

「落語はどうでしょうか、むぅにぃ君。座布団に座って、ただ一席ぶつだけですよ。簡単でしょう?」志茂田はこともなげに言う。

「えー、毎度ばからしい話しを1つ。熊さんや、隣の塀に囲いができたってねえ? だから、どうしたっ」テレビの寄せで見た演目を、うろ覚えでしゃべってみた。

「あー、落語以外の、何か別なものを探すとしましょう」志茂田の顔に、あからさまな落胆の色が浮かぶ。

 もうっ、自分で振っておいて!


「とにかく、簡単なものがいいのよ」中谷までもが口を入れてくる。「なんてったって、あんたは不器用だし、覚えが悪いし、それに慌て者だからさぁ。幼稚園児でさえできる、むっちゃ簡単なもの。何かないかなあ……」

 考えてくれるのはありがたいけれど、どうしてこんなに腹が立つんだろう。

「そうだ。あんた、睫毛にマッチ棒を載せなさいよ。それならできるでしょ?」

「そんなの、一発芸でも何でもないし」わたしは渋った。

「なら、もっとすごい物を載せればいいじゃない」

「例えば、どんな?」わたしは聞いた。

「バーベルなんてどう?」そんな無茶を言う。

 

 できるわけないでしょ、と口を開きかけた時、あちこちの席でパラパラと拍手が起こった。

「いいな、それ。見てみたいもんだ」「うんうん、盛り上がること間違いなしだぞ」「おいら、会社の同僚も連れてきちゃおうかな」

 期待と尊敬を含んだ嵐のような拍手が、広がっていった。

「一発芸大会、すごく楽しみになってきたなあっ!」

 今さら、断ることなんてできやしない。


 帰りの道で、わたしは近所のホーム・センターへ寄った。

 脇目も振らずにスポーツ・コーナーを目指し、バーベルを選ぶ。こうなったらヤケだ。一番重いやつを買っちゃえ。

「すいません、このバーベルください」近くを通りかかった店員に声を掛ける。

「はい、こちらの60キロですね。ありがとうございます。お持ち帰りですか?」

「いえ、今持ち上げようとしたら、びくとも動かなかったので、家に送ってください」わたしは頼んだ。

「かしこまりました。お届けは明日でよろしいでしょうか?」

「ええ、午前中なら部屋にいますから」

 店員は、バーベルを片手でひょいっとぶら下げて、レジへと運んでいった。


 明日から、睫毛でバーベルの練習かあ。まぶたが腫れたらどうしよう。やだなあ、面倒くさいなぁ……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マッチ棒からバーベル……ハードル上げ過ぎー しかも60キロ、片手で持つ店員さんも凄いけど、練習しようとする方がもっとすごい!
2014/11/20 15:00 退会済み
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