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第6章 外遊

いよいよ舞台がオーストラリアに変わります。お楽しみください。

第6章 外遊



 何度訪れてもどこからこんなに人が湧き出てくるのかと思うほどの人ごみだった。

「来た来た来た、誠ちゃん身体が大きいからファーストクラスにしたよ。」

 夕方八時に成田空港のレストランで待ち合わせと言うので、時間丁度に入った今成誠治に一郎が大きな声をかけた。

 ファーストクラスなんて前もって判っているのに、見栄を廻りに振りまく。廻りがみんな見ているじゃぁ無いか。いつもの一郎の悪い癖だ。

「待たせたかな、8時と言うのでゆっくり来たんだが。」

「ううん、僕達もちょっと前に付いたところだよねぇ。」

 一郎が横にいる二人の女性に目配せをしながら答えた。

「とりあえず誠ちゃん。紹介しとくよ、この娘が猿渡真由美ちゃん、ジャズダンスのインストラクターやってる娘、誠ちゃんの横の娘が、写真のモデルやってる娘で塩山沙也佳、沙也佳ちゃんだよね。かわいいだろぅ。」

 さすがにジャズダンスのインストラクターをしていると言う猿渡真由美は、顔も細くスマートだ。

 今成誠治のずんぐりとした身体とは比べ物にならない。椅子にかけているので足は見えないが、それもすらっと長くて素晴らしいものに違いない。背中まで伸びた黒髪も本当に魅力的だ。これならいっちゃんが熱を上げるのも無理は無い。

 写真のモデルをやっている塩山沙也佳は少し太りぎみだが、横から見る胸は大きくグラマラスな身体を持っている。昼間からでも欲情を醸し出す程だ。

「よろしくおねがいしま〜す。」

 二人揃って同じ様な声を出し、今成誠治に挨拶を送った。

「こんなかわいい娘が一緒の旅行だと、退屈しなくて済みそうだな。よろしく。今成誠治です。」

「誠ちゃん、なに食べる、さっきから注文取りに来て待ってるよ。」

「あ、そうそう俺コーヒー。」

「じゃ、コーヒー4つね。」

 一郎が、怪訝そうに話しに聞き耳を立てていたウエイトレスに注文した。

「君達おなかすいて無いの、いっちゃんが社長だから何でも頼みなよ。」

 今成誠治はいつになく軽い口調になり、二人の美女に言った。

「駄目だよ、誠ちゃん、ここは金を払わなくちゃならないけれど、VIPルームだと何でもただだから、早くコーヒー飲んで、出国手続きを済ませてVIPルームへ行ってゆっくりただ酒飲んで、ただ飯食うの。」

「いっちゃんは、いつも変なところで小さい事を言うんだ。」

 今成誠治が少し、顔をしかめて横の塩山沙也佳に言った。

「だけど、面白い人ですね。」

「そう、僕ちゃん面白い人。」

 一郎の軽さに、ついつい今成誠治も顔をほころばせて、

「ぼくちゃんも面白い人になろうかな。」

 と、言ってしまった。


 4人を乗せたカンタス航空機は、明け方6時過ぎにブリスベン空港へと到着した。

 入国手続きを済ませ到着ロビーに出てきた4人を待っていたのは、先日亀山一郎が言っていた野々村俊介である。

 野々村俊介は東京大学で建築工学を学び、ケンブリッジ大学に留学。帰国後に世界的にも有名な丹田建築設計事務所で勤めていたと言う。やや細面で眉がきりりと引き締まり、どこか映画俳優に似た人がいそうだ。

 ゴールドコーストで不動産屋をやっていると言う野々村俊介の案内で空港前に待たせてあったキャデラックのリムジンに乗り込んだ。

 カンタス航空のファーストクラスのサービスも良かったが、このリムジンも最高だ。シートは勿論革張り、運転席と助手席の中間後ろ側にはカラーテレビが埋め込まれ、ビデオも備え付けられている。横には小さなバーもある。

 よこ三列に並んだシートの内、運転席以外の二列の中央には銀製のテーブルがある。

運転席との間にはガラスで出来た防音シャッターがあり、電動で上下する。後ろ二列の席での会話は運転席に届かない様になっていて、ドライバーや助手席とはインターホンで話す。

 今成誠治と一郎が最後列のシートに深々と座り、女性二人と向かい合った。

 浅い音で流れてくるミュージックは今成誠治にとって耳にした事が無い様なクラシックミュージックだが、車のシートと共に非常に心地良い。

 今成誠治は内心自分の身分が遙か雲の上まで昇ったのでは無いかと錯覚をも覚えた。まして美女を連れての外遊だ。


 この空の青さは何だ。埼玉や千葉の空も東京に比べて綺麗と思っていたが、生まれて初めて見る空の青さだ。廻りに見える樹木には新目がふいているのか鮮やかなトーンを持った緑。それが空の色とマッチして心に染み渡る様な景色だ。

 道路は何だ。八車線!土地が広いってゆとりだなと感慨を深めた。

「もうこのあたりからゴールドコーストに入っています。」

 助手席に座った野々村俊介からのインターホンを通じた声でふと現実に戻った今成誠治は小さな声で、

「ところで、いっちゃん。野々村俊介さんっていっちゃんの友達じゃ無かったの。」

 と、聞いた。

「う〜ん、僕の友達の友達かな。同じレースやってる鍵田って奴の紹介なんだ。だから会うのは今日が初めてだよ。」

 一郎の前にシートから突き出ている猿渡真由美の綺麗な足を眺めた視線を保ったまま、うるさそうに言葉を返した。

「あの野々村さんって、眉毛書いてません。」

 塩山沙也佳が膝小僧を両腕で包み隠す様に身体をかがめて今成誠治にささやいた。

「そう言えば、そうだな。」

「顔も少し化粧していた様よ。」

 猿渡真由美も同じ様にして言ったので、必然的に4人が前屈みでこそこそ話しになった。

「あいつ東大出てるって感じかい。」

「本当かなぁ。」

「・・・・・・・」

「まぁ、そんなこと良いじゃないか。ゆっくり楽しもうよ。」

 本来の今成誠治に戻って、改めてシートに背を戻して言った。

「それよりか、さっきから眺めている景色。日本のどこへ行っても無い様な景色だろう。やっぱり土地が広いと気持ちがいいもんだね。」

「そろそろ、ホテルに到着します。」

 インターホンから流れる野々村俊介の声に今成誠治が聞いた。

「野々村さん、ゴールドコーストってカジノが有るそうだけど、近くかな。」

「えっ、聞いてませんか、カジノの有るコンドルホテルに宿泊するのですよ。」

「あっ、誠ちゃんが忙しかったのでホテルの名前までは言ってなかった、ごめんごめん。コンドルホテルだからいつも混んどるな〜んて。」

 一郎がはしゃいで言った。いつもの軽さに更に磨きがかかった様子だ。


 錯覚に酔いしれている今成誠治は一郎の駄洒落も耳に入らない。塩山沙也佳の足を見つめたり、車窓からの景色を眺めたり、これからの自分を想像していた。

 今成誠治達を乗せたストレッチリムジンが速度を落としてゴールドコーストのホテルに横付けされた。ドアマンが急ぎ足で近づき、恭しくドアを開け最敬礼をして今成が車から降りてくるのを待っている。最高の気分だ。夢の様な気分だ。ひょっとしたら俺は王様にでもなったのかとも考える。

 野々村俊介の案内で2階にある受付ロビーへとエスカレーターで上がる。1階にもロビーはあるが、クラークは2階になっている。さすがカジノだけあって昼間から人が溢れていた。

「とりあえずチェックインの手続きをしますからこちらへお越し下さい。」

 早速ドッカとソファーに腰を降ろしている今成誠治に野々村俊介が声をかけた。

「え〜俺は英語出来ないからいっちゃんと野々村さんでやっといてよ。」

「じゃ、亀山さんお願いします。」

「オッケー、オッケーまっかせなさ〜い。」

 やはり一郎の軽さに拍車がかかっている様だ。


「誠ちゃん、これが君の部屋の分、21階だって、僕は20階。」

「どうして隣り合わせじゃないんだ。」

「野暮な事は言わないの。まぁそう言う風にしか部屋が無いんだから仕方が無いじゃないの。 じゃぁ野々村俊介さん僕達は部屋に入って片付けものをするから。」

「そうですね、とりあえず部屋までご案内します。」

 野々村俊介はそう言ってエレベーターホールの方へと歩き始めた。

「あれっ、いっちゃん荷物は?」

「あっ、言い忘れましたが既に部屋の方へと運んでいる筈です。」

 野々村俊介が振り返って今成誠治に説明した。


 ゴールドコーストでも最高級と言われるこのホテルでの最上階のペントハウスでは無いけれど21階のスイートルームも今成誠治には満足なものであった。

 ドアを開けると8畳ほどのエントランスがある。右側に広いラウンジが有り、左側はメインダイニングルームになっていて、ここにもラウンジがある。ダイニングテーブルには10脚の豪華な椅子が並べられ調度品も最高級な物に思われる。ダイニングルームに続いて写真でしか見たことが無いキッチンがある。寝室は落ち着いて寝られるかが心配な程の広さがある。ダブルベッドが二つあり、更に同じ程度の広さがあるサブベッドルームがある。メインベッドルームの別の扉を開けると8畳ほどの広さがあり、そこはローブと言って、いわゆるタンスルームだとの事だ。部屋には20畳ぐらいの浴室が付いていて、5人ぐらいが一緒に入れる程の大きさのスパーがある。いわゆる日本で言うジャグジーかな。今夜は泡風呂だなんて頭をよぎった。

 窓からはゴールドコーストのビーチが眺望として飛び込んでくる。20畳もあるかと思うベランダへと出てみた。このホテルの形状は最上階に近づくにつれ階段状になっているのでベランダの上には一部分しか屋根がない。青く透き通る空が覆い被さる様に迫って来た。

 パノラマに広がるゴールドコーストの景色が手に取る様に目に飛び込んできて、その眺望は脳裏に焼き付く様であった。

 ここに塩山沙也佳と二人で1週間生活するのだと思うと、なんと俺は幸せ者なんだろうと考えるばかりだった。

「昨夜は飛行機でゆっくりとお休みになれなかったでしょうから、夕方5時にお迎えにあがりますのでそれまではごゆっくりとお過ごし下さい。」

 野々村俊介はこの部屋の説明をし、一郎の部屋番号を告げて引き上げて行った。

「沙也佳ちゃん、昨夜は余り眠られ無かっただろうし、風呂にも入って無いし、先に入ったら?」

 早速、今成誠治が塩山沙也佳に優しく声をかけた。

「いえ、今成さんからどうぞ。」

「沙也佳ちゃん、これから一週間一緒にいるんだから今成誠治さんじゃおかしいから、誠ちゃんと呼んでくれた方がいいよ。」

「でも、、、」

「ま、なんでもいいか、とりあえず僕は風呂に入ってくるよ。」


「いかがですか、ゆっくりとお休みになれましたか?」

 チャイムを鳴らして野々村俊介が入ってきながら意味ありげに聞いた。

「日本では5時だともう暗いのに、ここじゃまだ昼間だね。いっちゃん、いや、亀山さんはもう用意出来ているのかな?」

 今成誠治はほくそ笑んで言葉を交わした。

「いえ、まだ亀山さんの部屋は覗いておりませんので、今から確認してきます。」

「じゃ、彼女も化粧をするだろうし、僕もシャワーを浴びたいから1時間だけくれませんか。」

 野々村俊介は今成誠治の視線に合わせて寝室の方へ顔を向けた。

「それじゃ、亀山さんの方へもその様に伝えます。6時には2階のレセプションデスクがあるロビーに来てください。」

「じゃ、たのむな。」

 今成誠治が開けた扉をくぐる様にして野々村俊介が出ていった。

「沙也佳ちゃん、もういいよ、1時間あるからもう一度シャワー使ったら?」


 浴室に入った二人はドアを閉めた途端に激しく抱き合った。塩山沙也佳はうっとりと目を閉じた。唇が触れ合った、入り込んだ今成誠治の舌がゆっくりと回転する。沙也佳の頭の中に熱い物が走った。甘くて柔らかい性感が全身に広がる。沙也佳は立っていられない程下半身の力が抜けて行くのを覚えた。


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