第1章 プロローグ
虚構ビジネス
第1章 エピローグ
「今日はやけに風がうるさいなぁ。」
今成誠治はベッドの上で起き上がり独り言をつぶやいた。
横には半年前から付き合い始めた美恵子が軽い寝息をたてている。
「亀山の親爺が死んだときも確かこんな時だったな。」
大きな身体を揺すりながら、そっとベッドを降り、今成誠治は窓際へと歩いた。カーテンをそっと右手で開けてみた。
さして大きいとも言えないマンションではあるが、4階にある今成誠治の部屋の窓から手が届く程の距離に中庭の大木が枝を伸ばして来ている。反対側のベランダからはオーストラリア大使館が目の前に偉容を誇っている。東京都心でもここだけは閑静な街である。
風の強い日にはこれが安眠の大変なさまたげとなる。マンションはこの中庭を挟んで各階に八戸の住宅を持つ六階建てである。
何年も前から住民の大半から切り倒す様に管理人に交渉しているが、費用の問題もあるのか今成誠治が入居してからこのかた半年のあいだ何ら対策が講じられてはいない。
「あれからもう2年にもなるのか。」
女の人生で最大の転換期は結婚と言われるが、男の人生には大きな転換期が幾つかある。勿論結婚もその一つに数えられるが、女性ほどの位置を占めるものでは無い。
その多くは人との出会いと別れである。今成誠治にとって彼の人生の大きな転換期の一つとなった亀山大三郎の死を彼は思い出していた。
(作者より)
登場人物名はかなりチェックは致しておりますが、類似される方々とは一切関係はございません。