2日目 その2
「教会でかっ!」
パジはのけぞるように見上げた。教会は町の中心に、どーんと建っている。見た目はイスタンブールにある西洋と東洋の融合した感じの建物だ。
「ほんとうに立派」
レナも珍しくぽかんとした表情で見ている。
「初めてここに来たとき、俺もそうなった。まあ、入ろうぜ」
「うん」
「はい」
外門は解放されており、そこをくぐると建物まで幾分歩く。
「アオテア教会にようこそ」
中から現れたのは生成りのローブをきた女性だ。
「あー、今日は二人の素質を見てほしくてな」
「「よろしくお願いいたします」」
「はい、こちらへどうぞ」
二人は、小さな木の椅子とテーブルの置かれた部屋に案内された。
「ここで見聞きされたことは外界には出ていきませんので、ご安心ください」
なんらかの魔法で、アオテア教会の小部屋は諜報活動が出来ないらしい。だからステータスを見ても大丈夫と説明された。それを見せてくれるシスターには見えないシステムということだった。
二人は大きさがアイパッ○の黒板を渡された。
「その中に文字が見えます“ステータス”」
パジは文字が読めないときはどうするんだと心で突っ込みを入れる。
「あ、読めるわ。え、なにこれ」
黒板に書いてある文字に突っ込みを入れる。
名前 パジ・アサート(偽名)
年齢 15(29)
名前 レナ・アサート(偽名)
年齢 26
「いや、確かにそうだけどさー。お姉さん、年齢のところにかっこがあるんですけど何でしょうか?」
「珍しいことではありませんよ。最初にある文字が肉体的な年齢です。成長によって得たものが、かっこないの数字ですね」
異世界にきたら肉体は若くなったけど中身は変わらないということですねと遠い目をした。
「お二人には魔法の素質がございますので、魔法を購入できますがいかがいたしますか?」
「「生活魔法を2つください」」
二人は声をそろえて注文した。
「入口に係りの者がおりますので、お求めはそちらにお願いします」
期待していた祝詞を詠んだり、呪文を唱えたり、水晶を覗いたりする過程はなかった。
お姉さんはステータス見せる係でした。とはいっても別にHPやMPが見えるわけではなかった。
「魔法って、値段が高いのねー」
生活魔法以外は桁が違っていました。
生活魔法 3点セット(クリン、マッチ、ウォータ)1000EN
攻撃魔法 10000EN~
補助魔法 10000EN~
記録魔法 10000EN~
空間魔法 10000EN~
回復魔法 100000EN~
「これは買ったらすぐに使えますか?」
パジの隣でレナの抑揚のない声がする。そして相手の声は震えている。額の汗をぬぐうおじさんは七三ヘアだった。
「あのー、素質のある方で、えー、さらに魔素の量がある方で、えー、使い慣れるとご使用になれます」
「修行がいるということですか? 山ですか? 滝ですか?」
「えーと、どこかで山に籠るとか、滝にうたれるとできるということではなくて…」
という隣を無視しながらパジは使い方について質問していた。
「生活魔法は、皮膚をきれいにする“クリン”と火を起こすときに使う“マッチ”と飲み水が湧き出る“ウォータ”があります」
パジは感動し頷きまくった。
「使う時の注意は、火は燃え広がらないように決められた場所で使うことと、使用後に眠くなっても大丈夫なように初めて使うときは誰か保護者と行うことですね」
「使用後に眠くなるの?」
「はい、初心者は自分が何回使えるかわからないので使用し過ぎて強制睡眠が起こることがあります」
MP切れを起こすと回復まで眠くなるということでした。
「保護者はいるから大丈夫です!」
「そうでしたか。では、こちらの水晶に手を当てて下さい。“トランスファ”」
パジは水晶に乗せた右手から暖かい目に見えない何かが流れ込んでくるのを感じていた。
「暖かいね」
「アオテア神の御心です」
受付のおじさんはにこやかだ。
万能ギルドカートは万能だ。ステータスで得た情報も、取得した魔法も載せられるのだ。お金も入れられて、身分証にもなり生体反応まで登録できるなんて作った人に会ってみたい。
ちなみにホルダーは無事に入手済みである。
「ありがとうございました」
パジの隣で受け付けしていたレナも生活魔法を受け取ったようだ。受付の人は、なぜか顔色悪かった。
「パジ、どうだ初めての魔法は」
ゲオルクは初孫にでれでれのじーちゃんのような顔をしている。
「受付のおっちゃんが七三だった。びっくりした」
その答えにがっくりとしたゲオルクをみたレナはどんまいと心で思っていた。