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2日目 その1

 閑話休題的な…

 朝、家から出ないとレナは言い張っていた。

「レナちゃん、大丈夫だって可愛いんだから」

「…女性のたしなみです」

「ほら、おねえちゃんだって化粧してないでしょ」

「…いつもしてない人と一緒にしないで下さい」

「小麦色の肌を目指そうよー」

「日焼けは老化を加速します」

「飯食いに行こうぜ」

 ゲオルクは参ったなとお手上げだった。

「レナちゃん、どこからみても大人な女性だからさー」

 そこに、ぐーぎゅるぎゅると特大のパジの腹の虫が鳴り始めた。パジは恥じらう様子もなく、頑張って妹を説得するという使命感にもえていた。腹の虫は鳴り続ける。1つため息をつきレナは諦めて出かけることにした。


「いやー、すごいね。朝から外ごはんできるんだねー」

 小さな屋台が並んで香ばしい匂いが辺りに漂っている。商店街にある広場の中に三人はいた。ベンチが並んでいて町のひと達が、おもいおもいに過ごしていた。

「そりゃ、モグモグ。俺らみたいなやつが多いからな。モグモグ。門から出たらいつ食えるかわからねぇし、腹ごしらえは必要だ」

 甘辛く煮た大きな肉の塊をはさんだサンドイッチを食べながら行儀悪くゲオルクは答える。

「モグモグ。なるほど~。ズゾーゾー」

 パジも口に含んだパンをスープで飲み込みながら話している。

「食べるか、話すかどちらかにして下さい」

 レナは変わらず不機嫌だ。

「うっかりしてたが、モグモグ。飯食ったらまず服屋だな」

 ゲオルクは最後の一切れを大きな口に放り込んだ。

「モグモグ。なんで?」

「俺はあんまし女のことはわからんが、お前さんらが着てる服はなー」

「ツケにして頂けますか?」

 目立ちたくないと思っているレナはこの出費は必要と見積もっていた。

「ああ、いいぜ」

「ゲオさん、おっとこまえだねー」

「な、なに言ってる! そんなんじゃねぇ」

 会話だけ聞いているとカップル(死語?)みたいだが見た目は父と娘だった。


 パジは、ファッションに興味がないタイプだ。清潔にみえる感じの服装ならばAll Okである。そして、レナは何を着ても似合うのだ。

「お前ら、すっかり地元民だな」

 ゲオルクはうんうんと頷き、自分の見立てに納得している模様だ。そう、この粗野なワイルド風の男性は意外なことに洋服をチョイスすることができた。

「…ありがとう」

「その意外だという顔をやめろ」

 レナのお礼にゲオルクが言い返す。

「ありがとう、ゲオさん」

「おお」

 外を歩く人々にファスナーの服を着ている人はいない。二人は、草色に染められた麻のチュニックと踝まで丈のあるスカートをはいている。アルプスの少女風だ。

「よかったのか? これじゃ、町の外に出るのは厳しいぜ」

 そう、叢や藪をスカートで歩くとどうなるか想像してほしい。虫刺され、草かぶれ、果ては蛇に噛まれるなどの大惨事になることが予測される。しかも、ここは日本ではない。スパイクスネークがでるのだ。ただではすまない。

「私たちは、討伐なんて絶対にしませんから大丈夫です」

「いや、採取だってあんだろ」

 ギルドの仕事は主に討伐、採取、依頼の3つのカテゴリーからなる。

 討伐は、ゲオルクが行っていたように定期的に討伐対象となる魔獣を倒すものや、魔獣の巣ができてしまったから掃討するなどの依頼をこなす。

 採取は、薬草や魔石のかけら(あの原色カラーの石は魔石のかけらだった)、毒草集めなんていうものもある。

 依頼は、町の清掃やお使いにはじまり、貴族の家庭教師など多種多様なものだ。すべてランクがあり、自分のギルドランクにあったものを選択できる。

 採取に多いのは薬草関係であり、当然町の外の森や野原に存在するため、外に出る必要があった。

「それは、このお姉さまが行きますので大丈夫です」

「まっかせなさーい!」

 パジはスカートのほかにズボンも買ってもらっていた。何故か。

 彼女の服は、子ども料金でよかったからだ。

「よろしくお願いしますね」

 そのやり取りをみて、一人ため息をつくゲオルクであった。

 彼は、とてつもなく、”いい人”なのだ。そして、そのため息を聞きながら、レナは、うふふと笑むのであった。



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