第五話【セレス】
盗賊との一方的な戦闘を終えた礼二は、早速身柄を確保しようとしていた。
盗賊を村に引き渡し、名声を上げようという根端だ。
と、手頃なロープでも無いかと探してる時に、ふとある事に気がついた。
そう、盗賊に女性がいないのだ。野蛮な性格を持っているのは大概男性だったが、この世界ではそれが通じるかと思っていたが、やはり女性の盗賊とはレアなのかもしれない。
しかし、それならさっきの女性の声は気の
せいだったのだろうか。
と、一人長考していると奥に通じる細い道を発見した。
「ふっ、これこそ奥の細道ってね!」
なんてシャレを言いながら、その先に進んだ。
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奥の細道なう。
必ずしも、盗賊がいないという保証はない。
油断は出来ない。
慎重に奥に進んだ。
っと、ロープ発見。拾っておこう。
ロープを懐にしまう時、掠れ音がしたのか向こうから声が聞こえた。
「ん?交代の時間か?」
と、何やら野太い盗賊みたいな声が聞こえた。
まぁこういう見張り的な物に交代は付き物だからな。
俺は交代と知らせた。
幸い辺りは暗く顔は見られなかったし、相手も慣れが命令しているのか、半分寝ながら向こうに行った。
まぁ、面倒なので眠らしておくが。
パシュッ!
とサプレッサーの音が鳴る。
それと同時に…て、まぁ言わなくても分かるだろう。
さて、あの男は見張りをしていた。
それが何を意味するのかは、礼二にもわかった。
何か他人には触れて欲しくない物があるに違いない。もしくは、バレてはいけない物とか。
俺はそそくさと、男のいた場所に向かった。
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そこにあったのは大きな鉄格子だった。
牢屋と言うべきか。
中には、何だろう…。人…?
人が入っているのか、時々布などが擦れる音がしたから、なにか生き物がいるのだろう。
さて、鍵なんて無いしこじ開けるか。
俺はブリューナクを出し、扉をこじ開けた。
「あのー、誰かいますか?」
ピョンピョンと跳ねるブリューナクを横目に、鉄格子の中の人に向かって言った。
しかし、返事なんて来なかった。
流石に恥ずかしくなったので、辺りをくまなく探していると、
「いるに…決まってるじゃないですか…。」
と、か細い声が聞こえた。
「えっ」
マジでいた。
流石に驚いた。
「えーと、君も盗賊の一人?」
いやまぁ流石にそれはないと思うが…。
「いえ、私は盗賊にさらわれた一人です…。他にも沢山村の女性がいたんですが…、もう…。」
と、涙ぐんでいたんで焦った。
「あ、すいませんっ。そんな失礼な事を言ってしまいっ。」
って敬語になってるし、俺。
「いえ、別に気にしないで下さい。で、あなたは誰ですか?」
「俺は霧風礼二。旅人さ。」
やべ、探偵って言おうとしてた。
「旅人さんがどうしてここへ…?」
ったく、説明しないといけないのか。と、面倒臭くなりながら、今までの成り行きと、異世界から来た事を言った。
彼女の名前はセレスというらしい。可愛らしい名前だ。
いや、見た目もかなり可愛い、と思う。暗いからよくわからん。
んで、セレスはエルフの血を受けていて、なにやら家族を守るために自らが捕まったと、そういうベタな設定だった。
「じゃあ、セレスさん、ってセレスでいいか?」
「あ、はい。好きな様に。」
オッケーらしいな。
「んじゃあ、ここに対して名残もなさそうだし、村に帰るか?」
「は…はい?」
と、何やら疑問を抱いている。
「えっと…、礼二さんは盗賊に捕まってここに来たんじゃないんですか?」
はい勘違いきたー。
「イヤイヤ。俺は盗賊を退治しにきたんだよ。もう一通り捕縛しておいたさ。」
と言うとえらい驚かれた。
何やらこの世界ではならず者が多く、ここの盗賊は国も手を焼いているらしい。
あんまし数はいなかったのだがな。
まぁそういうわけで、無理矢理セレスを引っ張って洞窟の外まで連れて行った。