9
「ねぇ、歴代の召喚者達が使っていた武器や防具はここにあるの?」
「ございます」
「それじゃまずそれを見せて」
「…」
「勿論全部よ」
ニコリと微笑んでみせるとローブの男は何かを察したのか青い顔をさらに青くしたがそんなの関係ない。
たっぷりと時間を掛けてローブの男に説明させながら武器や防具を選んでいく。
武器は伝説級の短剣と長剣とナックルと杖を、防具としてはローブとマントとブーツとグローブと胸当てに装飾品など歴代召喚者達の使用していた物を遠慮無くいただいていく。
どれもこれもダンジョン産なので特別な素材で作られていて付与効果も凄い物ばかり。武器や防具に関してだけはちゃんとしたものを使わせていたようなので、勿論私も遠慮無く使用させてもらおう。
鎧や籠手に脛当てなどはさすがに使わないと思うのでどうしようかと考えたが、歴代召喚者の使っていた物なので使用召喚者の代わりに慰謝料としていただいておいた。
「まぁこんなものか」
それ以上の物に手を着けなかったのは、宝物庫に有る物すべてをいただいてしまったらただの強盗に成り下がってしまう気がして躊躇したのもあるが、ダンジョンから発掘されるのなら是非自分の手で手に入れたいと途中で思いついたからだった。
それにさすがにちょっと疲れていた。
召喚された時点でも疲れを感じていたのに、その後に慣れない隷属魔法を使いまくったのだから仕方ないだろう。この世界で生き抜くにはもう少し体力を付けなくてはならないかも知れない。
「それじゃぁそろそろ部屋に案内して貰おうかしら」
「えぇっとですね」
ローブの男の狼狽えぶりを見ると、歴代召喚者達を収容していた牢獄のような部屋に案内すべきかどうかと悩んでいるのだろう。
勿論そんな部屋に滞在する気はさらさらない。そうとなったら部屋も自分で決めさせて貰うしかないようだ。
「私は賓客なんだから勿論貴賓室よ。決まってるじゃない。さっさと案内して」
「はいぃぃ」
ローブの男をちょっと睨んだら、何故か飛び上がって慌てだした。何かされるとでも思ったのだろうか。
そうして案内された貴賓室は何とも豪華な部屋で本当に驚いた。さすがにお城の貴賓室だけある。
いつかテレビで見たどこかのホテルのスイートルームより凄い。リビングルーム(?)と寝室と他にももう一つ少し狭い部屋があり、バルコニーからはお城の庭園が眺められて景色もとっても良い。
他にもキッチンのような場所とトイレとバスルームもあり、日本で言ったらちょっとした高級マンションのようだ。
絨毯もフカフカで足音なんて立つはずもなく、勿論ベットも広くて縦にも横にも転がれそうで最高としか言いようがない。
「良いわね。この部屋気に入ったわ。それじゃ専属の優秀な使用人もよろしくね。適当な人が居なかったらあなたでも良いわよ」
「ひぇっ」
返事になっていない声を上げ慌てて部屋を飛び出していくローブの男を目で追って、ドアが閉まるのを確認してからベットへとダイブする。
「う~ん、フワフワ。最高! 世の中にはこんなベッドがあるのねぇ…」
前世では綿の布団一枚、所謂せんべい布団と言うやつだった。日本でもそれよりはちょっとマシって感じのやはり布団だった。
だからベッドにスッゴく憧れていたのもあって、天国にでも居る気分を味わい尽くしたいと体の力を抜きまったりとしていた。
ドアをノックする音でふっと現実に戻される。どうやらうたた寝をしていたようだ。
「どうぞ」
ドアに向かって声を掛けると、静かに開けられたドアから五名のメイド風女性が現れた。
「お世話を申しつけられました」
一番先に入ってきた中年の女性がそう言うと、ずらっと並んだ女性が一斉に頭を下げる。
「五人はいらないわよ。自分の事は自分でできるし、連絡係というかちょっとしたことを頼みたいだけだから。寧ろ大勢に居られたら私が困るわ」
他人が部屋にいるのなんて絶対に落ち着けない。別に貴族になりたい訳じゃないので人が多いのは絶対に嫌だ。
「しかし私達も困ります」
多分誰かに命令されてきた以上引き下がれないと言うことだろうか、中年女性が表情を硬くし少々声を張り上げる。かと言ってこちらとしても折れる気はまったく無い。
「じゃぁ取り敢えず着替えを用意して欲しいわ。それとお腹が空いたので食事をお願い。後はそうね。この寝室に絶対に入って来ないで、それさえ守って貰えればあとは自由にして、私も好きにさせて貰うから」
寝室だけでも二十畳は優にありそうだし、ソファーにローテーブルやクローゼットなどの家具も揃っていて、とっても気に入ったバルコニーにも出られる。
この部屋だけで生活するのも可能というか、寧ろこの部屋に居る方が絶対落ち着ける。
「仰せのままに」
「よろしくね」
メイド風の女性達が部屋から出るのを待ってから念のために絶対遮断結界を部屋に張り、再度ベッドに寝転ぶのだった。




