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最強ヒロイン ~理不尽に召喚された少女は歴代召喚者達から受け継いだ能力(チート)で無双する~  作者: 橘可憐


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セイランが書庫の中に作業机を置いてくれたのでここのところずっと書庫が私の執務室のようになっていた。


記憶本を作る作業をしている司書の他にここを訪れる人も殆どいないから、静かでそこそこの薄暗さが心を落ち着かせ居心地も悪くない。


セイランは仕事が早く頼めばすぐに動いてくれ、電動泡立て器もミキサーも本体は既にできあがっていて、あとは魔方陣を完成させるだけとなっているのにそこがまた一歩も進んでいなかった。


「何かお困りですか?」


「えっ?」


まさか司書の方から私に話しかけてくることがあるとは思っていなかったので本当に驚いた。


この何ヶ月もここに通っている間初めは迷惑そうな態度を隠そうともせず、最近漸く慣れたのか作業机が置かれたことで諦めたのか態度は多少和らいでいたが、それでも驚かずにはいられない変化だった。


「宰相様からお困りのようだったら手助けをするようにと仰せつかっております」


「あぁそういう事か…」


セイランから命令されたら従わずにはいられないということなのだろう。セイランにも司書にも気を遣わせてしまったようだ。


「新しい魔導具を作成していると聞いていますが本当にそんなことができるのですか?」


「作るつもりでいるけど、思うようにできないから悩んでるんじゃない」


「何に躓いているのか聞かせていただければ多少の助言はできると思いますよ」


「何しろすべてが初めてなの。一から作り上げるってこんなに大変だとは思わなくて、何に躓いているのかも分からないから困ってるのよ」


できれば助言を欲しいところだけれど、そもそも何がダメなのかも分からないから何を聞けば良いのかも分からない。分かってる人にはこんな気持ちは分からないよねきっと。


「一から作り上げているのですか?」


「そりゃそうでしょう。新しい魔導具を作るとなったら一から魔方陣の紋章を作らないでどうするの?」


魔導具の要と言っていいのは結局そこだ。あとは命令通りに動いてくれる器はきっとどうとでもなるんだから。


「要所要所を書き換えれば良いだけですよ」


「ぇぇっ…。魔方陣って一から作るんじゃないの?」


そりゃぁ召喚の魔方陣も一カ所を書き換えただけだけれど、それにしても本当にそれですべてが上手く行くとは考えづらかった。


いや、実際には召喚の魔方陣も大爆発という結果だったけれど、思った通りに上手く行った。

そうしてみるとやはり何かの魔方陣を書き換える方が簡単なのか?


「一から魔方陣を作り上げることができたらそれはもの凄い快挙となるでしょう。そういう仕事をしている者も居ますがそう簡単ではないですよ。大抵は古代から受け継がれている魔方陣を応用させているだけです」


「……」


どうやら私はその簡単ではないことに知らずに挑戦していたようだ。


「作りたい魔導具似合った魔方陣を見つけ書き換えて作るのが一般的な流れです」


魔方陣の勉強と称して何冊か本も読んでいるのに、それを応用しようなどと考えもしなかった。

召喚の魔方陣を書き換えた少女がそうしていたというのに、まったくもって迂闊というかなんというか、自分の考え足らずなところを自覚して落ち込んでしまう。


「もっと早く気付いていれば…」


「聞いてくれればそれくらいは教えましたのに」


司書の溜息交じりの反応に、余計に気分が落ち込んでいく。ちょっとじゃなくて馬鹿にされた気分だった。それに何気に言葉遣いも変わった気がするし。


そもそも私が話しかけるのも迷惑そうにしていたくせに、セイランの助言があったから話す気になったからって、それまでは何か聞いたとして本当に素直に教えてくれたのか疑問だし。なんだか司書の反応に腹が立ってくる。


「貴重な情報を教えていただきありがとうございます。お陰で少しは作業も捗りそうです」


たっぷりの嫌味を込めて怒りを抑えた返しをする。絶対にこんなヤツの手を借りたくないと思っていた。

こういうヤツは少しでも手を借りたら成果はすべて自分の手柄としかねない。絶対にそんなことされてなるものかと極上の笑顔を作って見せた。


「いえいえ、宰相様からお話は伺ってます。有用な魔導具だったら国の利益に繋がるという話でしたからね。それにこれを成功させたらきっと次々と魔導具の開発をするだろうと宰相様も期待していらっしゃいましたので、是非この私に何でも相談してください。手助けいたします」


セイランってば私が電動泡立て器を成功させたらきっと他にも魔導具を作ると読まれていたのは驚くほどでもないが、やはりコイツはそのおこぼれどころか手柄を取るつもりなのが見え見えなのに本当に腹が立った。


それに私が開発した魔導具が国益に繋がるって話にまでなっているのもまったくもって面白くない。祖母のような人に便利だと喜ばれたいとしか考えていなかったから尚更に裏切られた気もしてくる。


「今は大丈夫ですからご自分のお仕事に戻ってくれて結構ですよ」


多分この司書は私が嫌味で極上の笑顔を作ったのを何か勘違いしたのだろう。本当にがっかりなヤツだ。


だけれどこれだけ見え見えな態度のヤツにしてやられることはない。それにセイランの考えも聞けたことだし、そう簡単に思い通りにはさせないと誓いを立て、笑顔を崩さずにきっちりと一線を明確に引くことにするのだった。



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