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王子は王とは違い上っ面を取り繕うのがかなり上手いらしく指の欠損はたいしたことはなかったが、男性のシンボルをもう既に三回も再生させているそうだ。
さすがに三回目には学んだと言うより懲りたらしく、今はもう無いままにしているという噂が聞こえてきた。
しかし私が考えるに実のところは最高級ポーションが手に入らずにそのままにしているのだと思っている。
それに私に近寄るなと言う命令が効いているので治癒魔法を頼むこともできず、仕方なしに王子自ら治癒魔法を使える者を従えダンジョンに入って最高級ポーションを探しているそうだ。
それには治癒師に身体の再生も可能な魔法を覚えさせる考えもあるらしく、少なくとも召喚者に頼りっきりの王よりはちょっとは見所がある感じだった。
城の中とは言えそのような噂が私の耳にまで入るとは大変なことなのではないだろうか。と思っていたら、婚約を破棄した令嬢の身内が触れ回っているようだ。
信じていた王子に裏切られたと令嬢はかなりショックを受けて伏せっているとかいないとか、令嬢の親が恥をかかされたとばかりにかなりお怒りだとか言うような話も添えられていて、それが噂を広げる格好のスパイスになっているのは確かだった。
まぁ、私にはまったくもって全然関係ない話なのでどうでもいいと聞き流していたら、その噂のご令嬢からお茶会への招待状が届いた。
貴族令嬢のお茶会なんてお話の中だけのことだと思っていたので本当にびっくり仰天。
初めて貰った招待状についうっかり舞い上がってしまい、お茶の作法なんて知らないよとか着ていくドレスはどうするんだとか考えてしまったが、考えてみたら行く必要なんてなかった。
別にその令嬢と親しくする気もないし、噂の真相を聞くために自分の大切な時間を使う価値など見いだせないし、そもそも王子の話など興味もない。
この世界ではこの私がヒロインなのだから、何をして何をしないか、誰と付き合い誰と付き合わないか、選ぶのも決めるのも自分次第。
少なくとも今は上辺だけの友達を作る気もないし、その令嬢がどんな腹づもりで招待状など送って寄越したのかも分からないので行く必要も感じない。
それに噂では伏せっている筈なのにお茶会など開いて大丈夫なのだろうか。そこからして何をどう考えても胡散臭すぎて関わらない方が絶対に良いと判断できた。
もっとも日本に居た時に食べたスイーツより美味しいお菓子が提供されるなら考えないでもない。スイーツは正義だ。今は何をおいても優先されるかも知れない。
何しろこの世界のスイーツはバリエーションが少なすぎるのが難点。けして美味しくない訳ではないが料理ほどに研究されていないのか、形と甘さが違うクッキーと言うよりビスケットみたいなものか堅いパンケーキみたいなものしか食べたことがない。ここはお城だというのに大問題だ。
生クリームもホイップクリームもシロップもジャムもバターも無い甘いだけのパンケーキにはまったく魅力を感じない。
かと言ってお城の料理番に頼んで作って貰うほど知識が豊富ではないので困っている。
何しろ前世でのスイーツは蒸かしたり焼いたりした芋が主流で、砂糖が手に入るとカボチャやジャガイモを甘く煮るか、あんこを作って草餅やしんこ餅におはぎを食べたくらいだし、日本では簡単に購入できたので自分で作ったこともない。
材料くらいはなんとなく知っているが、分量とか作り方まで詳しくは知らないから教えようもないのが難点だ。
できることなら是非スイーツ研究部署を作って貰いたい。って、他力本願ではなく自分で作れば良いのか?
いや、自分で研究して作るには時間が足りなすぎる。今は魔方陣の習得が途中になっているのでここで投げ出したくはない。となったら作るしかないか。スイーツ研究部署。
「さっそく相談してみようっと」
隷属魔法を掛けて唯一無事だった男はセイランと言いこの城で宰相をしていて、今ではすっかり仲良くなったと言うより何かあると彼の所へ行くので親しくなった感じがしていた。
実際のところ彼がどう思っているかは知らない。心を読むのは簡単だけれど、それをしてしまったら何かが終わってしまう気がしてやらないでいる。
心を読むのは相手の悪事を暴くときだけと堅く線引きしているのは、自分の精神安定上当然だろう。
私はさっそくセイランの所へ出向くと令嬢のお茶会のお断りを頼み、スイーツ研究部署の開設を命令ではなくお願いという形で頼むのだった。




