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「ところで最高級ポーションって買うとなるといくらするの?」
欠損治療の対価としての目安にしようと思い尋ねてみた。
「私共は買い取ったことしかないのでその価格でよろしいでしょうか」
「それって商品として購入したことはないということ?」
「はい、最高級ポーションは見つけ次第国へ提出すると言う決まりがありましたが、それではあまりにも一般冒険者に対して誠意がないと言うことになり今は三百万ゴルドで買い取っています」
(やっぱり居たんだ冒険者!)
歴代召喚者達の記憶ではただただ城の兵士とダンジョンの攻略をさせられていたが、召喚者と兵士だけでダンジョンを攻略しているとは考えづらく、もっとダンジョンの情報が欲しいと思っていたので少しだけテンションが上がる。
「その三百万ゴルドってどの位の貨幣価値があるのか教えてください」
「そうですね一般の市民なら一年は生活できる金額ではないでしょうか」
貨幣は石貨一ゴルド・鉄貨十ゴルド・銅貨百ゴルド・銀貨千ゴルド・白銀貨一万ゴルド・金貨十万ゴルド・白金貨百万ゴルドと種類があり、貨幣価値としては日本の一円がそのまま一ゴルドくらいの感覚だろうか。もっとも物価や商品価値が多少違うものもあるだろうからなんとも言えないが。
それから一般の冒険者がダンジョンで見つけたポーションや魔導具に武器防具と言った発掘品は、すべて国が買い上げ管理することになっていて、一般国民や冒険者はダンジョンから採取できる物や魔物からドロップするアイテムを冒険者ギルドや商業ギルドに買い取って貰って生活しているそうだ。
そんな説明を聞きながらなんか変だと感じていたが、今は追求して話を聞く猶予はなくなっていた。
「大丈夫でございますか!」
言葉にならないうめきをあげる王に付き添っている男が慌てふためいている。
王が何を喚いたのか聞いていなかったが、右肘の切り落としが終わっていないのに左膝の切り落としまで始まってしまった。ホントびっくりだよ。
もしかしたら私が傍に居ることで余計に王の何かに拍車をかけているのではないだろうか。まぁ、そんなこと気にしてやる必要もないけどね。
「お、お願いにございます。是非とも早く欠損治療を!」
「だから今そのための治療費を決めているんでしょう。じゃあ分かったわ、この際はっきり聞くけど、そちらとしてはいくらが妥当でいくら出せると考えているの?」
男はゴクリと喉を鳴らすと冷静を取り繕い思案げにしてから口を開いた。
「最高級ポーションの買い取り価格と同じではいかがでしょう」
「王様の命の値段ってその程度なのね。まぁそうね、こんな王様にそもそも価値なんてないわよね」
交渉しようと思えばもっと方法もあるだろうし、もっとぼったくろうと思えばできないこともないだろうが、欲をかいても良いことはないだろうと妥協することにした。
それにこのあと枢機卿の治療も同じ値段で請け負うことになるだろうし、少なくとも旅費の問題はなくなるし、何よりここに滞在している間これで済む訳がないのは簡単に予測できる。
「それでは急ぎご用意いたします」
男は現金前払いの約束通りお金を用意しに急ぎ部屋を出て行った。
私は獣のような呻き声を上げ涙とよだれなどの体液で体中をグシャグシャにして暴れる王に一歩近づき助言する。
「声に出さなければ血の契約は発動しないみたいよ。この際何を思おうとも言葉にしないことね」
一応言葉は耳に届いたのか、王の虚ろな視線が一瞬こちらを向くので、声が届いているのならこの際お説教くらいはしてやろうかと言う気になった。お説教と言うよりずっと言いたかったことだった。
言いたいことを溜め込んでいるとストレスの元になるし、この際はっきり言わせて貰おう。
それと今はまだ私の推測だかれど、血の契約は多分他者に対して伝わると発動されるのだと思う。
だから言葉にしなければ発動されないが、もし文字にして他人に伝えてもきっと発動されることになるだろう。
だからこれがもし日本だったら匿名でSNSに描き込んでも発動してしまうだろう。ホント怖いよね。さすが召喚者の発想だ。きっとあの少女はそういう苦労をかなりしていたのかも知れない。
「あなたは感謝の気持ちを持つべきだわ。王が居るから国があるんじゃないのよ。国民がいるから国があり王で居られるのよ。もっと国民に感謝し国民が豊かになることを優先させた方が国も発展するんじゃないかしら。感謝の気持ちを忘れなければ人を欺くことも私利私欲に走ることも他者を見下し嘲ることもなくなるはずよ。血の契約内容をもう一度良く思いだし理解することね」
これだけ言っても理解できず変わらなかったらそれはもう仕方ない。私が国に居る間はお金儲けの元になって貰おう。
そうして男が金貨を三十枚持って現れたあと、王の肘と膝の切り落としが終わるのを待って欠損治療を始める。
初めてだったけれど初めてじゃない不思議な感覚を味わいながら治癒魔法を発動させると、本当に驚いたことに失った手足が再生されていく。
切り落とした手足をくっつけるのじゃなくて再生していくその様子は、理解していたつもりだったけれどなんとも理解しがたいものがあった。
自分でも何を言っているのか良く分からないが、アニメで見て知識としては理解していたつもりでも、現実でそれが起きるとなんとも頭のどこかで拒否している感じがあった。
しかし同時にこれって失った歯も再生できるのかと考えて、それはさぞかしありがたがる人達が大勢いるだろうと思っている自分もいて笑えた。
「それでは次にお待ちの方もいらっしゃいますのでこ、のままお願いできますか」
「ええ良いわよ。勿論現金前払いでね」
そうして王の治療を終わらせ、当然王からお礼を言われることもなく、男の案内によって次なる欠損治療へと出向くのだった。




