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最強ヒロイン ~理不尽に召喚された少女は歴代召喚者達から受け継いだ能力(チート)で無双する~  作者: 橘可憐


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王は寝室で布団を頭から被り、何かに怯えるようにしてすっかり憔悴していた。


「何故我がこのような目に…。何故だどうしてだ」


良く聞くとブツブツとそんなことを繰り返し呟いている。ここまで来てもまったく何も理解していないようだった。


「王よ。聖女様にお出でいただきました。お顔をお見せください」


「聖女が現れたのか!」


「いえ、異世界より召喚しました少女です。彼女が欠損治癒を施せると申していたではないですか。ですからこうしてお出でいただきました」


「何!? 本当か!」


王は布団から出ようとするが手足が欠損しているせいでバランスが上手く取れず、ましてや余程焦っているのかおかしな動きになっている。


付き添っていた男が慌てて支え起こすが、王はそれさえも忌々しげに、今にも殴りつけそうな勢いでイラついていた。


「本当に治せるものなら今すぐに治してみせよ!」


「帰りますね」


ギリリと睨み付けてくる王に心底呆れ、部屋に帰ることにした。


考えてみたら治してあげる義理なんて何もなかった。ここで王が死のうがどうしようが私には何の責任もない。


まったく変わる気配も無いし、いまだに偉そうに反抗的になれる元気があるのなら治療の必要もないだろう。それこそ本当に一度死んで生まれ変わるしかこの王には他に方法が無いと思える。


「おのれ、異世界人の分際でとことん我を愚弄するか! このままで済まされると思うでないわ!!」


叫ぶ元気があったようだが、しかし王の元気もそこまでだった。


「あぎゃっ。いだいいだいいだいいだいだい。はぁ、はぁ、は、は、早く最高級ポーションを持って参れ! は、早く…」


既に左肘から先が無くなっていて、今度は右肘の切り落としが始まった。


(猶予はあと二回ってところかな。あっ、でも腕や足の付け根がまだあるからあと六回か)


息も絶え絶えに痛みに苦しみ藻掻く王の姿を意外にも至極冷静に見ている自分に驚きだった。


「お願いにございます。王の欠損治療を是非に是非に」


ここまで案内してくれた男が頭を下げて来るが、どうしようかと本当に悩む。


「この人に必要なのは欠損治療じゃないと思うよ。悔い改め改心する方が先だよ。教会の偉い人にでも教えを乞うたらどうですか」


「王の次に枢機卿の治癒もお願いしようと思っておりました」


「聞いてないよ?」


王様の治療だけではないという後出しにも呆れるが、本来は教えを説かなくてはいけない枢機卿という教会の偉い人があの召喚の間に居て、さらに血の契約の犠牲になっているとは本当に呆れ果てて言葉もない。


「どうかお願いにございます。このままでは本当に国が乱れることになりかねません」


「私に何か関係ある?」


(国が乱れたら仕方ないからその時は他国にでも移動すれば良いだけだけれど、まだまだこの国でできることもありそうだし…)


「国の権力者が一斉に亡くなると言う事態だけは避けなければ、最終的に困るのは国民です。どうかお慈悲を」


多分この男の人もあの召喚の間に居たと思う。いち早く血の契約の内容を理解し改心したのか、それともただ単に便宜上装って居るのかは分からない。血の契約は言葉に出さない限りは発動しないみたいだから、なんとも判断できないところが難しい。


かと言ってここでわざわざ心を読んで万が一不愉快な思いをするのも得策じゃない気がする。何より自分の心の平和が優先だ。


「でもなぁ…」


「王や権力者が総入れ替えとなりますと、カレンロゥズ様の処遇もどうなるか責任が持てませんよ」


(処遇って…)


この国に長く滞在する気はないが、今のところまだ出て行く気もない。そうとなったら今の待遇はできれば維持していたい。確かに権力者の入れ替えの度に全員また隷属させると言うのも面倒だ。


それに第一あくまでも復讐のための隷属魔法であって、歴代召喚者にまったく関係ない人まで隷属させていたら自分もこの下劣なヤツらと同等になってしまいそうで嫌だ。それならばお互い納得の行く方法を考えた方が得策だろう。


「治療費次第ですね」


「治療費ですか?」


「ええ、まさかタダで欠損治療をして貰おうなんて考えてませんよね。結果的に命を助けることになるのですから当然それなりの金額をいただきますよ」


「そ、そうですね。勿論お支払いいたします」


「では、現金前払いでお願いします。それとその前に治療費の算出方法と金額を確認させてください」


(旅に出るにはまずお金が必要だよね。この際じゃんじゃん稼がせて貰っちゃおう)


「え、ええ、当然、ですね…」


男は何かを飲み込むようにして言葉を絞り出していた。


「話が長引くと本当に王の命が無くなってしまうかも知れませんね」


ニコリと微笑んでみせると男はゴクリと大きく唾を飲み込むのだった。



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