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「い、異世界人様になんとしても面会を! 是非に是非にお願いいたします!!」
王子が部屋から出て行ってホッとしていると、入れ替わるようにしてまたまた部屋の外に人の気配がありしかも大声で騒いでいる。
(要件の察しは付くけれど、昨日の今日でそんなに慌てるってどんだけ大袈裟なんだろう。それとも最高級ポーションを使うのが勿体ないのかな? それにしても異世界人異世界人って、私にはちゃんと名前があるって言うのにホント失礼しちゃうわね)
と考えて、ふとステータスに名前がなかったことを思い出す。
(あれっ、もしかして私には名前がないの?)
日本での名前も前世での名前もちゃんと思い出せる。しかしそれでもステータスに名前がなかったということは、もしかしたらこの世界では新たに自分で好きな名前を名乗れってことなのかと考えた。
誰の意思なのかどんな理由なのかも定かではないけれど、もしそうだとしたらカレンロゥズを名乗ろうと咄嗟に決めていた。安直だけれど、日本で読んだお気に入り小説の主人公の名前だ。
数々の逆境を乗り越え強く生きる主人公にどれだけ感動し感化されたか分からない。できることなら自分もカレンロゥズのような強い女性になりたいと憧れ何度も何度も読んだ。
前世では時代の風潮に流され、日本では周りからの風評や嫌がらせに逆らわず諦めて生きていた。
でもこの世界でなら、ましてや歴代召喚者達の力を引き継いでいる今なら、なんのてらいもなく余裕を持ってヒロインとしてもっと堂々と生きて行けるのではないかと思えた。
(そうよ。私がヒロインでも良いんだよね。それじゃぁさっそくヒロインらしく堂々としなくちゃね)
そう決意すると部屋のドアを開け外で大声を張り上げる男に対峙する。
「これはこれは異世界人様。お目通りありがたき幸せ。さっそくでございますが」
「カレンロゥズよ」
「はい?」
「私の名前。カレンロゥズよ」
「カレンロゥズ、様…」
「元の世界に戻れないのなら私はもうこの世界の人間になったってことよ。違う? 異世界人と呼ばれるのは不愉快だわ」
「こ、これは…。誠に申し訳ありません」
男は平身低頭の姿勢を取った。なんと謝罪に対する態度は日本と同じようだ。何気にびっくり。それにこの城にもこうしてちゃんと謝れる人が居るのにも驚きで、二度びっくりだ。
「それで要件はなんでしょう?」
素直に謝られるとは思っていなかったので少し動揺し態度がたどたどしくなってしまう。それに悪意を持たない相手に強く出られないのは仕方ないことだよね。
「王が大変な状況でして、是非いせか、いやいや、カレンロゥズ様にお力を貸していただきたく存じます。つきましては王の自室へとお出で願いたくお迎えに参りました」
「私から出向くの?」
待ち伏せされ罠でも仕掛けられていたら面倒というか、折角気分を落ち着けたのにそんなことになったら一波乱ありそうでちょっと嫌だ。この国の人というかこの城の人達は絶対に信用できないというか信用しちゃいけない気がする。
「申し訳なく思いますが、王は既に動けない状態でございまして」
「えっ? 動けないって…」
「既に足首も切り落とされもう猶予がございません。最高級ポーションも後残りわずか、万が一に備え全部を使い果たす訳には参りません。是非とも欠損治療をお願いいたします!!」
思わず呆気にとられてしまう。昨日の今日でいったいどれだけしでかしているのかと呆れるばかり。予測ではもう少し猶予があると思っていた。
「分かりました。急ぎましょう」
王様にそう簡単に死なれるのも寝覚めが悪い。改心してくれるまで何度でも何度でも痛い目に合って貰わなくちゃ隷属魔法に血の契約を仕込んだ意味がまるでなくなってしまう。
まぁ、それでも改心することがなかったらその時は仕方ないだろうけれど、少なくともこの国に私が居る間はせいぜい頑張って貰おう。




