日常。お兄ちゃん。
※この作品のストーリーはフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。ですが一部の地域や建物など、実在するものも含んでいます。
【残り362日】
コンコンっ
零助「.......優助ぇ〜、起きとる〜?」
声をかけた後中から音がするのかドアに耳をつけて確認する。
少しガサゴソという布が擦れる音と軋むがしてから少し落ち着いたためまぁ起きてはいそうだ。
零助「あー、今まだ朝の6時やねんけどまぁ起きぃ?」
そう言って自分は洗面台に向かって朝の歯磨きをする。
自分の歯ブラシを持って歯磨き粉をつけている間に扉が開く音がした。
一度歯磨き粉のチューブをすぐ置いてから優助の部屋前に行くとまた芸術作品みたいな寝癖の優助が居た。
零助「おぉ〜おっはよぅ〜」
優助「.....また芸術作品がどうじゃらこうじゃらやろ...?」
そう目を擦りながら目覚めたばかり故に、鋭くキツい目つきで言われた。
なんだ、心が読まれていたようだ。
思わず勢いよく笑ってしまった。
優助「....はいはい」
零助「今日はお母さんがご飯作ってるよ。今日はパンケーキ」
優助「パンケーキ!!?」
すると呆れたような顔と声で部屋に戻ろうとしていた優助は食いついたのかさっきの様子から一気に変わって嬉しそうに勢いよくこっちを振り返ってきた。
頷くとよっしゃあ!と先程の様子が嘘のように喜びが溢れ出していた。
零助「んじゃ、お兄ちゃんも後で下行くから着替えときや。ちゃんと自分の部屋で」
優助はリビングルームで着替える癖がある為念押しをしておいてから洗面台に戻る。
後ろからは階段を早く駆け降りる音が聞こえた。
途中で隣の風呂場用にある着替えの服入れカゴが振動しているのに気づいた。
スマホを置きっぱなしだったのを思い出して急いで確認する。
電話の相手はウィリアムからだ。
零助「Oh, hi Will! What’s up?(おう、ようウィル!どした?)」
すると突然感謝から始まった。
俺はよく分からずどうしたんだ?と聞いた。
ウィリアム「Wally sent me a photo with a mail yesterday. I wanted to let you know I was really happy to see that he seemed to be enjoying himself. Thank you, Rei.(ウォリーが昨日メールと共に画像を送ってくれたんだ。アイツも楽しそうで良かったって伝えたかった。ありがとう、零。)」
そう言われて頬が緩んだ。
零助「No. It’s not a big deal!(いや、大した事ないよ)」
そう言ってお互い笑い合う。
ウィリアム「Oh yeah—Yusuke, right? He was in the picture too. He seems like a really good kid. He looks like he’s grown a lot since the last photo I saw in the States.(そうだ。えっと...優助だっけ?一緒に写っていたぞ。良い子じゃ無いか。最後アメリカで写真を見せてもらった時より成長したんじゃないのか?)」
零助「Ah, yeah, that’s right—but the photo I showed you in the U.S. was from when he was nine. So he was a lot smaller back then than he is now.(あー、そうそうでもアメリカで見せたのはアイツが9歳の時の写真だからさ。アメリカに居た時より小さいんだよ。)」
そう言うとウィリアムは「I see.」と返してくれた
そんな懐かしい話をしていると、気づくころには時間が早く過ぎて行ったようで先にウィリアムからやる事があるからと言われて話を終える事になった。
俺も終わった後時間を見てから急いで歯磨きを終えてから下に下がる。
リビングルームの扉を開けると嬉しそうにパンケーキを頬張る優助が居た。
いじってやろうと思って向かい側の椅子に座ってやる。
零助「18歳児のお子ちゃまやなぁ〜?」
それに対して優助は何も言い返さず、ただこっちを睨みつけながら、頬を動かし、もぐもぐとしていた。
俺も朝に使った皿を残しておいた為、フォークナイフで一枚の皿で数枚重ねられたパンケーキを取った。
零助「あぁ、そうそう。昨日写真撮ってくれたんだな。ありがとう」
そう聞くとコクリと頷いた。
零助「どう?連絡先とか交換できた?俺経由で伝えられるの面倒だったっしょ?」
優助「.....できたよ」
あまり興味もなさそうに淡々と答えてくれた。
俺はこの話に興味はないならと思って話題を変えてみる。
零助「そうや、今日は家族でモール行こうや。お兄ちゃん今日早いねん〜。やから今日は弟さんのとこ行かなくて良いよ。たまにはお互い、休憩せんとな」
優助「.....ん、りょーかい。あ、そうやった。これあげるって言ってたんやわ」
そう言って椅子の隣にもたれるかのように置いてあった鞄から何か取り出して拳を向けられた。
なんだと思い、受け取ろうとこっちも拳の下に手を伸ばすと手の中からおととい百貨店で見た猫と同じキーホルダーをもらった。
そういえば昨日電話であげると言われていたのだった。
零助「....三毛猫や!!!」
優助「うん。言った通りやろ?」
零助「....でも俺犬派やで」
そう冗談を伝えると微妙な顔をした後また手を出して返してくれと言ってきた。
俺はそれを断って取れないよう遠くに持つ。
正直、お兄ちゃんは嬉しかった。
零助「んなら、これ。あげんとやな。」
そう言って俺も近くにあった自分のカバンから財布を取り出して600円を目の前に置いた。
優助「え....、なんの?」
零助「弟さんにあげた分と、お兄ちゃんにくれた分。一つ300円やったんやろ?」
ウォレスに関わる事は全部俺が負担するようにしている、昨日そう伝えたはずだが驚いた様子を見せていた。
優助「......は?」
零助「あれ?お兄ちゃんが負担するって言ってなかったっけか?」
優助「いや、言ってたけど... ガチャも...?」
零助「うん。お前のは払えないけどな。」
そう言うと納得した様子で頷いた。
優助がその600円を取るのを確認して、それから俺は直ぐに財布を鞄に直して、背負った。
その後先程の猫をポケットに突っ込んだあと、パンケーキを手で掴んで数回折って口に突っ込む。
優助「ん?もう行くん?早ない?」
零助「...ああ、うん。行くよ。買い物にね〜♪」
優助「....塾での英語の先生、楽しい?」
初めて優助から聞かれた。
嬉しくて思わず笑みが溢れてしまった。
零助「おう!生徒も慣れたら可愛いもんや!」
優助「何その普通は暴れる動物みたいな....」
そう言われて確かに、と思い頷いた。
すると優助はいつもの呆れた表情で見てきた後パンケーキに目線が戻った。
俺はそんな様子を見た後、食べながらすぐに玄関から出た。
零助「んじゃ、行ってくるわ。その芸術作品なんとかして気をつけて行ってきぃや〜」
優助「あ〜い」
優助の小さな返事を聞いてから外に出た。
バイクのキーをクルクルと回しながらそのバイク置き場まで歩いていく。
父「おお、零助」
零助「お父さん」
バイクの籠に荷物を置いて跨ろうとした時、父に話しかけられた。
庭に咲いている花の面倒を見ていた様子で片手にはジョウロを持っていた。
父「お買い物、行ってらっしゃい」
零助「ん。あ、お酒いる?モールから帰ってきたら飲んだりしていいんちゃう?」
父「あー、せやな。買ってきといて!」
零助「了解っ」
そこからバイクに鍵を差し込んでエンジンを吹かした。
零助「んじゃ!いってきま〜す!」
父「おぉ、いってらっしゃい」
父のいってらっしゃいの声はエンジン音にかぶせられ、最後あたりは聞き取れなかった。
そこからは風に乗って進んでいった。
バイクに乗ってる時、服の上から感じるのは少し難しいが最近春風を感じることが多くなった気がする。
そう風を感じていると横に凄い速度で何かが通った。
零助「.....っわ」
最近近所のスーパーに行く時酷いほど大きなエンジン音を立て、バイクで荒い運転をする人がいる。
最近は特に事故らないか不安なレベルだ。
だがここを抜けるといつものスーパーはすぐだ。
一度ポケットに手を突っ込んで買い物リストがあるか確認しようとした。
すると信号が変わってしまい急いでハンドルに手を戻した。
スーパーに着いてからすぐに先ほどのポケットに手を突っ込んだ。
零助「....よしよし...」
しっかりと持っていることを確認でき、安堵した。
とにかくそのリストを取り出して内容を確認する。
すると他の物も出て来た様子で何か床に軽く落ちた。
見ると、先程の三毛猫だ。
急いで拾って少し見る。
こんな可愛いもの、どこに付けようか....?
そう思ってスーパーの入り口で立ち止まった。
零助「...俺のイメージに合うかなぁ...」
「おい!邪魔だぞ!」
零助「あっ、すみませ...」
そう言われて屈強なおっさんに怒られた。
少しずれてその人に道を譲る。
その人は、怒った様子でぶつぶつと言いながら入って行ってしまった。
確かに周り不注意だったなと思いながら反省し、とにかく後で考えようとまた猫をポケットに突っ込んだ。
零助「えぇっとぉ.... 玉ねぎ、豚肉....ちくわ、油揚げ....?...なんや、母ちゃん豚汁作るんか?」
もう暖かくなってきたのに、そう1人呟きながら店にやっと入った。
朝っぱらから店に居るような人はほぼ居なくて、音楽がただ鳴っておりそれ以外は物静かだった。
優助はこういう場所なら楽だろうな、なんて考えながら上を見上げ案内板を確認する。
途中で冷凍食品コーナーを横切った。
零助「あ、これ....」
優助が好きな魚の揚げ物だった。
今日の朝に優助分のお弁当を作る時、使い切ったことを思い出して買おうか悩む。
優助は喜ぶだろうか。
逆に飽きているかもしれない。
零助「(予算的な問題でやめるか...)」
お買い物のお金は母にもらっている為、とにかく一度リストにあるものを買うことにする。
正直、買い物へ行く事は好きだが買い物をする事は苦手な方だ。
母によく値段やグラムや質をしっかり見て考えて手に取ること!と言われているが、正直金以外どうでもいいと思ってるので適当に安そうなものを取っていく。
何かおかしなものがあったら怒られるかもしれないが一度そんな考えは放っておいた。
零助「最後に豚肉か...まっ、これでいっか.....よし」
流石に豚肉は色味を見て選んだ。
前に値段重視で考えていた時、色味が悪いものを買ってきてしまって母にこっ酷く怒られた事がある。
それ以来反省して渋々だが肉に関してはしっかりと考えることにしている。
零助「豚肉、玉ねぎ... よし!」
全て入っている事をしっかりと確認してからレジへ向かう。
その道中でまたあの冷凍食品コーナーの横を通ったため一度目の前で立ち止まる。
ふと優助のことを思い出した。
零助「.......いやいや」
やはり予算の事を考えたら、私情を挟んで使うと母に怒られてしまう気がする...
頭を抱えながらまた歩き出した。
零助「........いやぁ...でもなぁ......」
酷く悩んだ結果、カゴには最後に魚の揚げ物の冷凍食品が入ることになった。
零助「(....やっちまったなぁ...)」
怒られるだろうなとしょぼしょぼと覚悟しながらセルフレジに通す。
合計金額はそこまで高くは無い、だが結局一万円札をもらっている為そのままで済ませる。
「ありがとうございました〜」
零助「...っす」
扉が開閉する度に鳴るアナウンスにそう小さく呟いて外に出る。
結局買ってしまった。
だがもう後悔をしても意味はない為とにかくバイクに戻り、早めに家に帰った。
零助「うい〜、てでぇ〜まぁ〜」
家に入るとイーストの香ばしい香りに包まれた。
母「お帰り〜全部買えた?」
そう言ってエプロン姿の母が玄関までバタバタと音を立てて来てくれた。
零助「あぁ、買えたよ。....もしかして今パン焼いてる?」
母「そうそう!まだ焼き始めたばっかりやけどな!」
そう母は聞いてくれた事が嬉しいように笑って言ってくれる。
母がバッグを受け取って中を確認し始めた。
零助「あーちょっとだけ謝っておきたいんやけど冷凍食品買ってきてん。2つくらい」
母「冷凍食品?え?どれ?」
少し表情を怪しくさせた。
俺はその様子を見て唾を飲み込んだ後口をまた開く。
零助「これ、優助が好きなやつ。今日無くなったから預かってたお金から買ってきたんよ。」
母「これ?...あぁ〜確かに優助これ好きだよね〜... いいよ。優助も喜ぶし!」
そう言われて少し安堵した。
だがやはり気持ち的にはつっかえがある。
零助「....いややっぱ、お金出すわ...」
そう言って俺はすぐ財布を取り出した。
自分が欲しいものは自分のお金で買えと言われている。
うちは冷凍食品を買うことがほぼないのに自分の気持ちで買ってきたのだ。
だが母は取り出した手を下ろさせた。
零助「.....え?」
母「別にいいよ」
零助「えっ、え、やけど....俺が買いたいもん買ったんやで?払うに決まっとる」
母「確かに自分の欲しいものはお金使わないでとは言ったけど、別にあんたのためじゃないんでしょ?」
零助「まぁ...別に俺は食わへんけど...」
母「お母さんも優助の好きなものを食べさせたいし、丁度良いよ。」
そう言って母は笑顔で答えてくれた。
俺は安堵して肩を下ろす。
なんというか珍しく怒られなかったのだ。
いつも少し完璧主義の母なので買い物の行くとグジグジ言われる。
母「でも今日は珍しく、お菓子コーナーにあるおもちゃは買わなかったね」
零助「あー、はい。」
だがまぁ、母が言った通り変なものを買っていた自分の所為なのだが。
母「いいんだよ。優助の為に考えてくれてるんでしょ?良いお兄ちゃんしてるよ」
そう言って母は俺の頬を少し引っ張った後頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。
思わず嬉しくなって引っ張られた方の頬に手を当てる。
その後母がまた家の奥に戻っていくのを見て靴を適当に脱いでから俺もついていく。
零助「あー、なんか手伝う事ある?」
母「あぁ!今洗濯機に入ってる服とか畳んでくれたら助かるわ〜」
そう言われて洗濯機がある2階に向かう。
確かに階段を上がっている時には乾燥機が回る音がする。
乾燥済み服用のカゴに全て入れて、部屋でベッドの上に座って服を畳んだ。
零助「これ...っボロッボロやん...」
優助がお気に入りと言っている赤のシャツだが所々穴が空き、明らかにボロボロになっていた。
確かこの服は部屋着にしか使わないと言っていたが...
渋々畳んで優助の服グループに入れる。
あとで優助に服について聞かないといけない。
零助「...はい終わり〜」
そうひとりごつをし、ベッドから立ち上がる。
自分用の服をよそに、他の家族分を持って運ぶ。
母、父、優助用をしっかりと分けて部屋に運んだ。
零助「....ってかマジで少ないな...優助の...」
元から服のバリエーションは低い方だが、最近は酷い。
いつか朝起きた時に着れる服が無くて困るんじゃないかと心配なレベルだ。
母「零助〜!終わった〜?」
零助「うん!終わった〜!」
下の階から母の呼び声がしてそれに応答した。
すぐに俺は服を置いて、優助の部屋を出てから階段を駆け下がる。
零助「なんか次の手伝い?」
母「うん!パンの味見!」
零助「えっ、えぇ!!?出来立て食っていいん!?」
溢れる嬉しさと興奮を抑えてそう聞くと母は笑顔で頷いてくれた。
それを確認して一つパンを取った。
母「あぁちょっと——」
零助「っだぁっつ!!!」
どうやらガチの出来立てらしく、指を軽く火傷してしまった。
そのはずみでパンを机の上に落とした。
零助「ぁっちぃ〜...」
母「言ったのに...」
母は呆れた表情でそう言ってきた。
俺はなんだが恥ずかしくなって頭を掻いたあと、その一度掴んだパンを慎重に持って口に運んでひと齧りする。
零助「.......ミルクパン?」
母「うん、好きでしょ?」
零助「めっちゃ美味い!クソ好き!」
そう伝えると母は笑ってくれた。
母「優助も気にいると思う?」
零助「俺が気に入ってるんやで?アイツなんか一発やろ!お母さんのご飯、アイツ好きやし」
そう言いながらまた一口と齧る。
母「あぁ、そうそう。ここ最近優助、お弁当美味しいって言ってるよ」
零助「...マディ?」
口に含んだままそう聞くと頷いてくれた。
零助「へー、あいつ俺には言ってくれないのにお母さんには言うんだー」
母「直接言って欲しかったらお兄ちゃんがお弁当作ってるよーって伝えたらいいのに」
零助「いやそれはなんかちゃうやん...あいつ絶対言い換えてクソまずいとか言ってくるし絶対気に入らなくなるし...」
母「実際、照れてるんでしょ〜」
そう言ってニマニマと俺を見てくる。
母には図星だったようだ。
俺は最後の一口を頬張りながら小さくゆっくり頷いた。
母「自信持ちなさい、あんたみたいなお兄ちゃん、持てる弟も幸せ者よ」
零助「....うん」
そう言ってまた頭を撫でてくれる母。
俺はしっかりと飲み込んだ後にそう答えた。
母の言葉には強い安心感がある。
零助「(はずっかしー...)」
そう思いながら今朝座っていた椅子にしっかりと座った。
母「服ちゃんと畳めた?最近頑張ってるんでしょ?」
零助「あー、そうそう。優助の服さ、ボロボロやから新しいの買わん?今日モール行くんやろ?」
母「そうなの?じゃあ買いにいこっか。優助、賛成してくれるかな?」
零助「今日の朝、了解って言ってたし... まっ、俺がなんとかするよ。大丈夫。引っ張ってくから」
そう駄弁っていると携帯が鳴った。
12:00のアラームだ。
母「....なんのアラーム?」
零助「あー、バイトだよ塾の。大体ここあたりで準備せんと俺遅れるからさ」
そう言って席を立って階段に向かう。
母「今小学4年生の子に色々と話よくするんだっけ?」
零助「そうそう!最近話だけしすぎて塾長に怒られちった」
そう言いながら2階に上がる。
自分の部屋から軽く荷物を持ってきて着替える服を用意した。
母「英語はどう?教えるの難しいでしょ?」
零助「あー、まぁね... でも最近はコツ掴んできて楽しいよ。その小学生の子、物覚えが良いし」
本当はあまり急ぐ必要は無いため、ゆっくりと着替えながらそんな話をする。
母は興味津々で聞いてくれて会話が弾んでいる。
母「同僚とかは?仲良いの?」
零助「前にファストフード店とかちょっと奢ったりしたし、まぁ....いいのかな?」
母「まっ、あんたなら簡単に友達できるし、お母さん心配してないよ」
零助「えー」
そう言って母はまた俺の頭を撫でたあと、キッチンで洗い物をし始めた。
その後俺は自分のスマホを見る。
Williamからメールが来ていた。
零助「....ん?」
文章と共に写真が貼られていた。
『アメリカから愛を込めまして』
そして、先ほど撮ったのであろうWilliamの家族の写真だった。
零助「うぅっわ懐かしぃ...」
大学三年の時にアメリカへ留学に行った際、慣れて4ヶ月目くらいの時に2週間ほどWilliamの家にホームステイさせてもらっていた。
同じ大学に通っていたWilliamだし、彼自身が俺のことを家族に話していたらしく、温かく向かい入れてもらったのを鮮明に覚えている。
俺の英語もまだまだ拙いガキ見たいなものだったがそれでも優しく、丁寧に対応してくれていた素敵な家族だ。
零助「(アメリカに帰りテェなぁ...)」
するとすぐにメールが返ってきた。
ウィリアム『Wallace isn’t here, but this feels nostalgic, right?(ここにウォレスは居ないけど、懐かしいだろ?)』
そう言われて「そうだな」とすぐに返信した。
そういえばあの時のWallaceは心配するほどかなり痩せていたイメージだったが今はふくよかそうで安心した。
相変わらず長袖しか着てないらしいが、変わった事といえば一目瞭然なほどに笑顔が増えた事だ。
零助「....ってかWallaceがしっかり笑ったとこ、日本に来て初めて見たな」
そんな思い出に浸っていると意外と時間が流れるのが早いようだ。
セットしておいた出発のアラームが大きく鳴った。
零助「わ!もう行ってくるわ!ちょっと帰ってくるの遅くなるけどモールには間に合うくらいやから!」
そう言いながら玄関を出る。
ギリギリ母の返事が聞こえたため安心してバイクに乗り込んだ。
そこから10分ほどで仕事先に着いた。
すぐにヘルメットを取って色々と準備を終えた後、すぐに持ち場へ行く。
「唐島くん、4分遅刻...」
零助「あー、すみません....」
先輩にそう言われてコクコクと謝りながら急いだ。
零助「っしょ.....お、」
教室に行くといつものあの小学生の子が居た。
晴久「せんせぇおそーい!!」
零助「ごめんごめーん!晴久くん、今どこまでやってるぅ?」
そう聞くと彼は、満面の笑みでプリントに指を指して「ここ!」と教えてくれた。
俺は急いで向かい側の席に座り、指してくれたところを見た。
零助「そうやなぁ...。こっから分からないところとかある?」
晴久「えっとねー」
プリントを見るに大体答えれている様子で、チャレンジ問題も上手に答えれている様子から彼の聡明さが垣間見えた。
零助「...晴久くんすごいね...」
そう呟くとこっちをキラキラとした目で見てくる。
晴久「うん!かいと兄ちゃんが教えてくれる!」
零助「え、晴久くんお兄ちゃん居るん?」
晴久「うん!」
そう言ってふんっと鼻息の音を立てて自慢げに笑う。
零助「お兄ちゃん、英語得意なんだ?」
晴久「うん!さいきん学校でいそがしそうやけど帰ってきたら、えいごおしえてくれる!」
零助「ええお兄ちゃんやね〜」
意外と晴久くんのお兄さんの話を自分と優助に重ねて聞いていた。
でも自分は教えようとしても優助にずっと「面倒だ」と断られていたなぁ、と心の中でちょっとした思い出に浸っていた。
零助「お兄ちゃん何歳?」
晴久「20才だよ」
零助「大学生?」
晴久「うん」
零助「何大学に行ってるの?」
晴久「うーん。わかんない」
もしかしたら同大学の同学科で自分の後輩かもしれないと少し淡い期待したが... まぁそりゃ、小4に聴いても大学なんてちんぷんかんぷんだろう。
零助「丁度ね〜 先生にも弟が居ってね〜 君のお兄さんと同じ大学生なんだよね〜 ....あ、名前書き忘れ。」
晴久「え?」
そう言ってプリントの名前を書く所を指差す。
零助「ほら、ちゃんと“鈴木 晴久”って書かないと。」
晴久「えーべつに良いし。先生、ぼくのだって気づいてくれるし」
零助「今気づいてくれてても、中学校に入った時だーれも気づいてくれへんよ〜」
そう言うとほっぺたをプクーっと膨らませて、不貞腐れたかのように名前を適当に書き始めた。
正直綺麗に書いて欲しいのだが....もっと注意すると、もっとやらなくなるためまぁ及第点だろうと見逃した。
そこからは真面目に宿題に取り組んだり、少しの休憩がてらに自分も別の子も見ているのを軽く放棄して晴久くんと話をしたりなどをしていた。
気づけば早く時間が経っていたようで、腕時計を見たら時間が超過していたようだった。晴久くんは帰る時間となった。
もう帰る時間だと彼に伝え、荷物をまとめさせた。
零助「お母さんかお父さん、どっちがいつも迎えに来てくれてる?」
晴久「おかあさん」
零助「へー、お母さん運転するんだ?うちはお父さんだけなんよ〜。かっこいいねぇ」
晴久「ううん。うんてんバカ下手だよ僕のお母さん」
零助「えぇ〜!」
そう言って笑い合いながら晴久くんを外まで送った。
鈴木母「いつもありがとうございます先生... あの...迷惑とかかけてないでしょうか?」
零助「いえいえ。いつも真面目にやってて... 私の説明なくても良いくらいですよ〜 ね?」
そう本人に確認を取るとコクコクと頷いた。
その様子を見てお母さんも安堵したのか笑顔になってくれていた。
それを見て、俺もまた笑顔になれた。
晴久くんの車が遠くに行くまで見届けてからまた教室に戻った。
零助「ふー....」
「あ、唐島さんもお疲れさん。予定あるんでしょ?もう帰ってOKよ」
零助「あぁ、ありがとうございます...」
そう同僚から言い渡されてお先に失礼しますと言って、荷物をまとめてから職場を出た。
零助「忘れ物とか...———」
「唐島さん唐島さん...」
零助「ん?え、あ、はい...」
忘れ物などの確認中突然呼び出されたと思ったら、ただ、ここ最近は事故が多いためお気をつけてくださいと言われただけだった。
俺はその場で深く感謝してヘルメットを被ってからバイクのエンジンを吹かせた。
零助「(怖いなぁ...)」
急ぐわけでもなく、言われた通り気をつけるように遅く帰った。
幸い、その事故には遭わず、無事に家まで帰って来れた。
零助「(あ、優助帰って来とる...)」
バイクを停める場所に、しっかりと優助の自転車も置かれていた。
きっとみんなを待たせたと思い、すぐに玄関に向かった。
ピンポーン...
『はぁーい』
零助「たでぃまぁ〜 愛しの零ちゃんでぇす☆」
『....なんや』
そう言うとすぐにインターフォンが切れて、玄関の電気がついたのを確認した。
ガチャ
零助「よっ!」
優助「...遅い」
零助「ごめんごめん〜!いやー、今回はアルパカが脱走して道路を...」
優助「アホか。はよ帰ってきぃ」
みんなずっと待ってたぞと言われ、申し訳ないと感じながら家に入った。
荷物を下ろしてからは、すぐに自室に戻り別の服に着替えた。
零助「(これでええかな...)」
優助「兄貴ぃ〜!」
零助「はーいよ!」
一階から大きな声で呼ばれてすぐに部屋から飛び出して、階段を駆け降りた。
優助「もうお母さんとお父さん、車に乗ってるで」
零助「待っててくれてありがとうな」
2人で外に出て、鍵を閉めてから、車に乗り込んだ。
母「さーて、2人は今日何あったの?」
零助「お!今日の報告タイムや〜!俺からいい?」
そう聞くと優助は「どうぞ」と言うかのように手を差し出してきた。
それを確認してから口を開く。
零助「今日いつも教えてる小4の子にお兄ちゃんがおるって聞いてきた!あんたと同じ大学生やねんて〜 一歳年上らしいけどな〜」
優助「一息でよう言えたな... いや、ってかそこら探したら大学生はどこにでもおるやろ...」
零助「まぁねー」
そんな話をしていると運転中の父が話しかけてくれた。
父「優助は?何かあったのか?」
優助「えっ」
父「こういうの、零助が話始めると止まらないから」
零助「テヘッ☆」
運転中の父はあまり話をしないが、突然話しかけてきたことに驚いた上に、優助もびっくりして思わず座席から身体を起こして前のめりに、驚いた表情をしていた。
その後に優助から相変わらず飽きられた表情を向けられ、こっちを見たまま優助が口を開いた。
優助「...あ、...なんか....、いや、なんもない」
零助「いや、なんかあるなぁ...?」
優助「なんもないって...」
零助「えー、教えてぇなぁ〜」
そう言って優助の頬をツンツンするとウザそうに手でどかされ、もっと睨まれた。
父「なんでもいいんやで?教えてほしいわ」
優助「.......なんかライブやっててん。軽音部の...」
零助「お!どうやったん?上手かった?」
優助「....演奏良かったけど、まだ俺とか兄貴とか...姉貴の方が歌上手いと思う。音程外れてばっかりやったし... あんなんで人集まるんすごいわ...」
そう、ぐちぐち言い始めた。
母「あー、音程外れてるのはキツイなぁ」
零助「俺ら聞いたら耳塞ぎたくなる?」
優助「無理無理絶対無理。聞かれへんと思うわ」
優助は明らかに眉間に皺を寄らせて、首を振っていた。
母「まっ、仕方ないよ。私たちがストイックすぎるだけだよ。みんな聞きたいもの聞いて盛り上がれたらいい」
零助「そうだよなぁ... 俺らが上のもん求めすぎてるだけやんなぁ... 特に優助は...」
優助「.....でもドラムだけ... ドラム担当の人ピカイチやったんよ」
俺は思わず目を見開いた。
ドラムといえば、下手すれば大きな音が鳴るはずだ。
HSP故に大音量が苦手な優助がその大音量を出すドラムを評価し出した。
零助「えっ、それ優助が言うレベルってマジすごいんじゃね?!」
母「あんたが珍しいね...」
優助「うん、俺もなんかおかしいこと言ってる気ぃするわ...」
そんな話を長々としていると気づいた時にはモールに着いた。
俺は優助と自分のシートベルトを外してから、優助を引っ張って、母と父より先にモールへ入った。
零助「優助、服買お」
優助「は?なんで?」
零助「あんたいっつもおんなじ服着てるやん。あと、服ボロッボロなやつあるやんか」
優助「いや、毎回言われるけどうちの洗濯機乾燥機ついてるやん。朝には乾いてるんやし別にええやろ汚ぁないんやから... あとボロボロになんは家でしか着んし...」
零助「いや第三者目線からしたらだいぶキショいで?」
そう言うと「え、そうなの?」という表情でこっちを見てきた。
俺はその顔を待っていましたと言わんばかりに、先程まで引っ張っていた方の優助の腕を離して、次は両肩を掴んで、後ろから押す形でそのまま服屋に直行した。
モールの位置的に道中で本屋が一番近く、いつもなら先に優助がそこに入っていくが、今回は無視して行った。
優助「いや、ちょ.... ちょっと本屋さんとか先に...」
零助「服屋終わったら困るからそっち優先や!諦め!」
そう言うと優助もしっかり諦めて、服屋に行けた。
優助「服屋とか... 久々な気ぃするわ....」
零助「あんたの服の状況見たら久々なんわかるわ」
そう言いながら服屋に入って、ぶらぶらと歩いた。
時折カッコ良さそうな服を見ては、特に商品を手に取ったりをしない優助を見て、逆に俺が商品を取って、測るかのように優助の体に重ねて見せた。
零助「優助、これとかカッコいいんちゃう?」
優助「...それLサイズや。俺そこまで太ってないわ。」
零助「いやー、将来的に太るかもしらんやん」
そう言ったら、肩を軽く叩かれた。
俺はそれに対して笑ってごめんごめんと言ってから、先程の服を元あった場所に引っ掛けた。
そこからまた歩いて色々と見ていく。
零助「優助って何着たいん?好みあるん?」
優助「ないよ別に。着れたら何でもええもん」
零助「んー....んじゃあこれ?」
優助「それは大阪のおばちゃんすぎるわ。嫌に決まっとる。」
明らかな豹柄の服を見せびらかしてやった。
思い通りの反応する優助が面白すぎてそこから長い間ツボっていた。
優助「なんやねん...」
そこから父と母が追いついたようで、カゴを持ってきてくれた。
母「決まった?....それ?」
優助「いや、ちゃうって」
零助「ブ....っひゃひゃひゃっっ!!!」
母が眉間に皺を寄せて驚いている反応があまりにも面白すぎてお腹が痛くなった。
母「あんた店で声大きいよ」
優助「うるさい」
零助「あぁ、ごめっ...!」
あまりにも面白すぎてその場で笑い死にそうだった。
そこからはまた歩き回ってだったが、母に言われると優助も楽なのか意外にもすぐに服が決まった。
春になってきているからか、店のラインナップも半袖が多く、選んだものも自然に半袖になっていた。
....まぁ元から優助は半袖派だ。
母「久々に服買ったね〜。意外にも高かったから明日からちゃんと着てな」
優助「ん。」
零助「そうせんと俺貰うで」
母「こら」
そう笑い話しながら来た道を戻って、優助が行きたがっていた本屋に入った。
そこからは父と母と目的が変わる為、終わったら連絡してと言い合ってから別れた。
零助「んで、優助何か買いたいん?」
優助「別になんもないけど... ただ小泉八雲の本もっと売れてるかなぁって」
零助「あー... 島根帰らんとほとんど見ぃへんもんな?うーん....お、あれで探す?」
そう言って、本屋内にちょこちょこある本の検索パソコンの一つを指差した。
丁度人が居ないのを指差した。
俺が行くと、優助もついてきた。
零助「小泉八雲やろ?」
優助「うん」
零助「ラフカディオハーンの方がええんちゃう?」
優助「いや、小泉八雲の方が出やすい。たまに英語で出てくるから」
零助「ほーん」
そう言いながら画面にある文字列を指で押していく。
零助「こいずみ...やくも..... お、出た出た」
検索すると、想像よりは多めの量が検索に引っかかった。
その後に優助と位置を交換し、優助が画面を操作し始めた。
優助「....日本の面影、怪談.... はぁ...無いな、全部持ってるわ」
零助「この“こころ”ってのは?ってかこれ夏目漱石の本ちゃう?」
優助「ん?あぁ、いや... 小泉八雲のであってるよ。西田千太郎っていう彼の親友宛の本や。夏目漱石の方と同名やから最初はちょっと困惑するけどな」
零助「え、優助これも持ってるん?」
優助「持っとる」
そうかーと言いながら、そのパソコンをホーム画面に戻してからその場から離れた。
零助「え、もう目的終わった?」
優助「うん。俺は終わったわ。兄貴は?」
零助「ちょっと漫画とか見ていい?」
優助「ええよ」
そう言ってから漫画コーナーへ向かう。
俺は、今追っている漫画の新刊を手に取ってすぐにレジへ向かった。
優助「え、早ない?」
零助「もう本屋とかこれしか目的ないからさ」
そう伝えるとふーんといった様子でこっちを見てきた。
零助「......エロ本とか買って見るタイプやと思ってた?
優助「思ってないわアホ」
会計後、すぐに本屋から出て、別で買い物をしている両親を待つため近くにあった椅子で大人しく座って、2人で待機した。
零助「...っしょーっと.... せや。気になるんやけどさ、ドラムの人どんな風にすごかったん?」
そう聞くとうーむ、と思い出す仕草を見せてくれた。
優助「...リズムが効いてて心地よかったんよ」
零助「おー!リズムかぁ〜!リズム良いと聞いてて気持ちいいよなぁ〜」
優助「うん。マジ良かった」
本当に珍しく、ドラムの音を評価していた。
しかも柔らかい表情で。
俺は面白くて思わず冗談を言いたくなった。
零助「あんたも今度なんかライブとか連れてって———」
優助「兄貴とは無理、騒がしい」
そう言って嫌な顔をして拒否されてしまった。
明らかな落ち込んだ様子を演じていると父と母が来た為、顔を上げた。
優助「ん?終わったん?」
母「うん。本屋見た?」
零助「おん、見たけど... 優助の欲しいものはなかったっぽいわ。俺は買ったけど」
父「もう帰るで」
珍しくすぐ帰りたい様子を見せる父。
零助「あ!ただ今日買ってきたビール飲みたいだけやろ!!」
父「バレたぁ?」
零助「おい、このぉ〜!!」
そう言ってニヤニヤと笑う父。
母「零助のボケは貴方譲りね...」
優助「ホンマやな...」
そう言われて父と笑いながら車へ向かって歩いて行った。
続く




