5. 物忌奈命
先日参加した「コミケ106」にて頒布した自作小説です。
神津島と、私の大好きな黒曜石
これらをPRするために書き始めたものです。
折角なので、この場を借りて定期的に投稿していこうと思います。
遅筆になるかとは思いますが、楽しんでいただければ幸いです。
港からしばらく歩いている間、賢治とは色々とりとめのない話をした。どうやら賢治は、僕が都会の人間だから仲良くなれるか不安だったようだが、少し話をしたらその不安は解消されたようで、今は朗らかに僕と話すようになっていた。「よかったぁ、恐い人だったらどうしようかと思ってたよ。」とは本人談。
・・・・そういえば、先ほど感じた視線は今はもう感じない。となると、やはりあの桟橋に何か居たのかな・・・?
そうこうしていると、典型的な鳥居と階段がある場所に辿り着いた。そしてその鳥居の根元には、今の時代には合わない古典的な格好をした、背の高い凛とした雰囲気の人物が1人。・・・・あの人がこの神社の神様かな?
「あ、モノ様。こんにちは!今日は正装なんですね!」
「おお賢治か、こんにちは。今日は観光客も多いから分かりやすくしないと、な。」
モノ様と呼ばれたその神は、その平安貴族の衣装のような服を見せるように体を一回転させる。
ふむ、随分とフレンドリー。僕の地元の神様とは大分雰囲気が違うなぁ。もっと老獪な感じを想像してた。
「おや、随分と『眼の良い』子を連れているじゃないか。宿のお客さんかい?」
「ううん、島外からの留学生だよ。寮に入るまではうちの宿で過ごすことになってるんだ。」
「・・・・は、はじめまして。風見月陽と言います。これからしばらく、お世話になります。」
「はじめまして。私はこの神社の主神である『物忌奈命』と申す。よろしくね。・・・・ふむ?」
・・・なんだ?随分と舐め回すようにジロジロ見られるな。
「・・・・いやすまない。これだけ眼が良い子は島内でも珍しいのでな。いくら私が村の主たる神々の一柱とはいえ、初めて会った私を、視るだけでなくこうも明確に捉えて会話できる人間は中々いないのよ。島外の人間なら尚更だ。」
・・・・そういえば、初めて会う神様なのに、随分ハッキリと視えるな。前はここまでしっかりと視える神様なんて、有名どころに限られてたのに。
「あの〜、モノ様、もう良いですかー?これから家に案内しなきゃなんです。」
賢治が少し申し訳なさそうに物忌奈命様を見上げる。
「おおっと、そうか。引き留めてすまなかったね。落ち着いたら、是非また連れて来ておくれ。色々と話を聞いてみたい。」
「時間ができたらそうします〜。」
賢治はそう言い手をヒラヒラさせながら歩き出し、僕は軽く会釈しながら賢治の後を追いかける。
そんな二人の姿を微笑ましそうに眺めながら、物忌奈命は呟く。
「・・・・ふむ、これは中々に面白き子が来たな。日向や母様にもお伝えせねば。然し・・・・」
「あの子の纏う雰囲気、何やら違和感があったが・・・・気の所為かの?」
今後この後書きにて、必要があればちょっとした補足、裏話を入れていこうかと思います。
賢治がそそくさと物忌奈命様の前を立ち去った理由
――とてもお喋り好きな神様なので、一度捕まると時間単位で放してくれなくなるため。
面倒なので、賢治は普段も理由をつけて物忌奈命様から逃げている。
それでも、物忌奈命様と会話できる島民は多くないため、たまには話に付き合ってあげている。優しい子である。




