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神々の語り部  作者: 黒奇
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爆音の歓迎者と鳥に好かれるポニテ

 神津島 前浜港 桟橋


 ついに島の港、前浜港に到着!

 航路の終点だから、たとえ船内で熟睡していても寝過ごすことはないのはありがたい。実際思ったよりよく寝れちゃったし・・・。


「さて、父さんによると、宿の人が迎えに来るはずなんだけど・・・。」


 今日は3月25日。春休み期間中で、島の高校の寮にはまだ入居できないため、しばらくは島の宿に泊まることになっているのだ。


 そして、父から伝えられていた宿の人をキョロキョロと探す僕を、背後から出迎えたのは


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 という、怒号に近い野太い声だった。

 余所見していた僕の後ろからの不意打ちだったので、アニメみたいに跳び上がるほどビックリした。

 周りのお客さんも驚いてずっこけそうになる人がいた始末だ。実にはた迷惑。

 港に来ていた他の島民らしき人達は「相変わらずだねぇ」みたいな視線を送っていたので、どうやら日常茶飯事らしい。

 大砲のような爆音を間近に受けて耳鳴りがしている僕に、その声の主は両手を広げて快活に話しかけてきた。


「おおっと、驚かせてしまったかね?すまない!ちょっと喉のボリュームのネジが抜けててなガハハ!

 君が風見 月陽さんだね?私は碓氷 吾郎!君が暫く泊まる宿の主だ!ヨロシク、なっ!!」


 そう言うと、吾郎は金髪の浅黒く彫り深い顔に白い歯ではにかみながらサムズアップした。ウ~ン暑苦しい。


「あぁ、それと紹介するよ!息子の賢治ーー・・・あんれ、アイツどこ行った?オーーイケンジィィィィィ!!!」


 と、その男は声を張り上げながら辺りを一瞥する。

 僕もメガホンおじさんと一緒になって桟橋を見渡すと、少し離れた港近くのテトラポットのある辺りで、海鳥が不自然に集まっているのを見つけた。

 よーく見ると、鳥の群れの中心に、少し日焼けした短めのポニーテールの人がいた。肩や頭に鳥を乗せている。一瞬、鳥に餌でもやっているのかと思ったが、そんな様子はない。

 え?まさか野生の鳥を、餌なしで手懐けている・・・・?

 顔を少し上げながら、楽しそうに鳥と会話しているように見える。

 その光景に、僕は少し神秘的な魅力を感じていた。


 そしてその光景は、吾郎の目にも入ったようで、


「お、いたいた!!相変わらず鳥に好かれる子だな!オーーイケンジィィィィィ!!」


 と声を一段階ボルテージを上げながら鳥山の方へ駆けていく。その声に驚いたのか慌てて散り散りになる海鳥達。

 そりゃ怖いよね、あんなのが大声張り上げながら迫ってきたら・・・、と若干失礼なことを考えながら僕もそれについて行く。


「あ~~・・・、もぅ父さん、鳥達が驚いて逃げちゃったよ。折角近況を聞いてたのに。もうちょっと静かに・・・イヤ、父さんには無理だよね、ウン。」

 肩や頭に羽毛やフンをひっつけたその男の子は、半ば諦め顔で肩を落とした。うわぁ、一瞬前まで少し神秘的に見えてた僕の気持ちを返してほしい。


「紹介する!息子の賢治だ!君とは同学年だから、来月からの学校で一緒になる!仲~よく、してやってくれ!!」


 そう言いながら、賢治の肩をそのガタイのいい腕でバツンと叩いた。悶絶する賢治。痛そう・・・。



「君のお父さんから、君は「視える」人だと聞いている!この島は何かと視える存在が多いから、慣れるまで少し時間がかかるかもしれん!私も賢治も、程度は軽いが視える人間だから、信仰体関係で何かわからないことがあったら、いつでも俺たちを頼ってくれ!あと、古風な格好をしている人がいたら、その方は島の神社の神様だ!見かけたらちゃんと挨拶をしておくように!」



 神

 ――それは、宗教や神話、民間伝承等に登場する、所謂「神様」と呼ばれる存在である。彼らはそれぞれ個別の意識を持ち、人間同様自分の意志で行動する。大抵は自分の社(神社や祠、御神体等)を持ち、それらと、契約した神主、宮司等の人間から常に一定の信仰力が供給されている。また、その名を多くのの人間に知られていればいる程、その信仰力が増大する。地域、あるいは国単位で影響力を持ち、物理法則に基づかない様々な能力を行使する。――



「そして、君の荷物は既に届いている!先に部屋に運んでおいた!早速これから宿に案内しよう・・・・と、言いたいところなのだがぁ」


 と、吾郎は一息入れて


「今日はそこそこ宿のお客さんが来ていてな、送迎用のマイカーに君を乗せられないのだ・・・。本当に申し訳ないが、君は歩いて宿の方に来てもらえないだろうか?道案内はコイツにさせるからよ!」


 そう言って、吾郎は背中を擦っている賢治を親指で指差す。


「・・・まぁ、僕は構わないですけど・・・」

「ヨシありがとう、助かる!!では先に行って待ってるぜ!!後でな!!!」


 と、吾郎は月陽の返答の間もなく踵を返し、お客様ぁぁぁぁオマタセシマシタぁぁぁ、とドップラー効果を響かせながら車の方に走っていった。まるで暴走機関車のような人だ。


「・・・ホントにごめんねぇあんな人で。びっくりしたでしょ。・・・・風見君、だっけ?改めて、俺の名前は賢治。ヨロシクね!」


 そう言って、賢治は少し辿々しく握手を交わ・・・そうとして、自身の汚れっぷりに気付いたのか


「アッゴメン!これはさすがに嫌だよね!ちょっとトイレ行ってくるねっ!待ってて!」


 と、慌てて港の建物の方に走っていった。

 ハァ、上陸した瞬間からこんなんで、今後大丈夫なんだろうか、と、これからの離島生活を憂いていた最中


 ゾグッ


 と、後から、僅かだが刺すような視線を感じた。

 直ぐに後を振り返るが、視界には桟橋と何人かの観光客、釣り人、今乗ってきた船があるだけで、視線の主は居なさそうだ。とは言っても、この視線の先、他には海しか無いのだが・・・?


「・・・お待たせ!家までは少し歩くけど、そこまで遠くはないよ!

 ・・・あれ、何かあった?風見君?」

「イヤ・・・・何でもない。あと、月陽でいいよ。僕も賢治って呼ぶから。」


 そう言いながら、未だ主の分からぬ視線を気にしつつ、僕は賢治の元へ歩を進める。




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