表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/19

3.訓練

読んで下さりありがとうございます!

 役目果たすにも、瘴気を浄化するための方法が分からなければ動きようがない。

 1週間で国や世界の成り立ちを理解した煉華が次に取り組んだものは、魔法を理解し使用する事だった。

 

 学び始めて数日。ひたすら魔力の基礎を学び、自身の属性魔法の特徴を座学で学んだ。魔力とは何か。属性と呼ばれる分類の特性。魔法を使用する際に魔力が体内をどう巡るのか、等。魔法士団の副団長であるゲーボが自ら教えを説いていた。45歳となるゲーボにとって、煉華は自身の娘と大差ない年齢である。聖女として召喚され、慣れない環境であっても適応すべく努力をしている煉華の姿勢は誰よりも評価していた。

 魔法士団の育成を取り仕切っているだけあって、ゲーボの講義は非常にわかりやすい構成となっている。座学、体感、実技。その3つをバランスよく組み合わせて教えることで、効率よく魔力を扱うことに慣れていくことが出来る。煉華はそれを理解し、感謝していた。


「ここまでで、なにかわからないところは?」


「問題ないわ。もう少し詰め込んでもらっても大丈夫よ」

 

 十分詰め込んでいると思っていた講義だが、煉華は言外にペースを上げて欲しいと要求した。

 実技を重視している煉華にとって、座学は実技へのつなぎでしかない。実技で詰め込んだものが理解できているかはすぐにわかるのだ。

 その時に理解できていない部分を詰めて理解すればいい話なのだ。


 実技も、ゲーボが担当している。

 分かり易い講義内容に実践の指摘も的確。これ以上ない講師であると煉華は評価していた。


 (いい講師にあたったわ。適当な人をつけられたらどうしてくれようかと思ったけど)


 「それでは始めよう。前回と同じ要領で行うように」


「わかったわ」


 数回。呼吸を整えてから、煉華は体内に眠る魔力を血液と同じように身体に廻るイメージを抱く。体を廻る血液のように循環するものだと教わり、実際に魔力を体内に廻らせる体験をしている。互いの手を合わせ、温もりと共に感じたものが魔力であると理解した時から、常に廻らせるようにしてはいる。だが、日本と言う魔力を必要としない世界に生きていた煉華にとって、少々てこずる課題でもあった。


 魔法を使用するためには魔力循環をスムーズに実施出来なければならない。

 煉華の属性は神聖魔法。瘴気の浄化と回復、対象者として認識した者に対する能力の向上などがある。

 浄化に関しては、聖人と呼ばれる者たちの力を引き出して初めて成功する。と言われているが、神聖魔法に浄化能力があるならば、聖人たちがいなくても問題ない。というのが煉華個人の見解だ。だが、それを伝えてしまうと今までの制度だけではなく、ハクの神託も否定する事に繋がるだろう。と、口をつぐんでいた。講義を詰め込んで欲しいと要望しているのは、実際に瘴気被害の地に赴き、浄化を試したいと考えているからでもあるのだ。それを言葉にするほど煉華はこの国を信用していないが、ゲーボには考えが伝わっているのか、実践はそこそこスパルタだった。


 体内を廻る魔力を素早く発動させる。そのためには、魔法の仕組みだけでなく対象の仕組みも理解しなければならない。と、魔法を応用して体内を透視するために、他人の魔力の流れを知る方法を身に着けている最中だ。

 手の平に魔力を貯め、それをかざして相手の魔力にぶつける。イメージとしてはレントゲンのようなものだろう。と、煉華は理解しがたい仕組みを、自身の世界にあるもので例える事とし、感覚的に理解するよう努めていた。

 

 ところが、理解だけできても意味がないというゲーボの一声により、魔力の流れを見ながらを補助魔法をすばやく発動させる。という課題が与えられた。

 

 (悔しい。どうしても数秒、遅く発動してしまう)

 

 騎士団の練習場。そこで実際に補助魔法を使ってみることとなり、練習場の片隅で過ごす事数時間。

 惜しみなく補助魔法を発動させているゲーボを見て、煉華は下唇を軽く噛む。

 補助魔法だけでなく、軽い回復魔法まで使いこなすゲーボの属性が()()()()()()などと、この状況で誰が思うのだろうか?

 実際、煉華も同じ属性か、それより劣るとは言われているが聖属性だと思っていたくらいだ。ゲーボ自身が水の使い手だと知った時は首を傾げてしまった。ゲーボから自身の持つスキルにより、神聖魔法に近い魔法が使用できると知っていても、幾分か劣るはずのゲーボより遥かに遅く緻密さに欠けている事が悔しくてならない。

 魔法に触れていなかった事を言い訳にはしたくない。と、煉華は集中力を高めていく。


 「もう少し速くすることは難しいか?」


 「……今はまだ、難しいかも」


 「これでもまだ、基礎の部分なんだがな」


 苦笑交じりにそう言ったゲーボは、話しながらも補助魔法を発動させていく。

 講義で学んだ理論を用いて魔力を発動させていけば、理論上はゲーボと同様に発動する事が出来る。実際に行っていて理解したことといえば、魔法の使用は緻密なイメージと繊細な操作を要するという事だった。


 イメージを抱く事も含めて、ひたすら実践していくしかない。

 そう判断した煉華は、ふっと息を吐いて自身の脳内を整理していく。

 

 (体内の構造に大きな変化は無い。私自身がレントゲンなら、魔法は放射線か磁力ね。それを投影するなら頭がモニターになるということだから……)


 ゲーボが最初に教えた事は、魔法とは想像である。ということだった。

 緻密なイメージを持てば、少ない魔力で発動が可能となる。理論上はそうなのだが、そこまで緻密なイメージを抱く事が出来るものは少ない。

 その為、実際のところは詠唱によってイメージを強化する詠唱魔法か、陣を描いて強化するかに分かれている。ゲーボ自身は無詠唱での発動が可能であるが、それは本人が日々様々なものに触れ続けた結果である。


 魔法以外にスキルと呼ばれる固有の能力が存在している。ゲーボが持つそれは、複製であった。見たもの。触れたものを複製できる。そのスキルによって、イメージする事が容易く、より記憶に残りやすいのだ。

 だが、感覚的なものを教えることは容易くない。ゲーボ自身がそれをよくわかっているからこそ、あえてそこは深く教えていない。煉華が、最初にいう事は最も大事な事なのだろうと理解し、イメージを抱く事から始めているのは嬉しい誤算ともいえた。


 騎士団の者は通常の訓練を行う。


 一列に並んでもらい魔法をかけるのは容易いが、それでは実践にならない。と、普段通りに動いてもらい、そこに補助魔法をかけることとなっている。

 対戦が始まるとゲーボと2人、補助魔法をかけていく。先に魔法を発動した方が有利となる為、結果がすぐに分かる実践であった。


 ひたすら魔法をかけ続ける実践は日が暮れるまで続き、煉華は少しずつではあるが、感覚を掴む事が出来るようになっていくのを肌で感じていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ