表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/24

13.会合の始まり

 ドーム状の建物を眼前に、煉華は不思議そうに首を傾げていた。


 「これが、研究棟」


 象牙色の壁にはいくつもの魔法石が埋め込まれており、そのどれもが外部からの攻撃を防ぐための防御壁となる効果を付与されていた。

 制服の上から桜の刺繍を施したローブをまとった煉華の隣には、ユリウスが白い隊服に身を包み緊張した面持ちでたたずんでいる。


 「急ごしらえで用意したものだそうで、内外部ともに大規模攻撃はさすがに防げないかも知れません。ですが、大抵の攻撃には対処できるかと」


 「……瘴気と魔素の研究に使いたいだけだから」


 大規模攻撃魔法を想定しているユリウスの言葉に、煉華は肩を竦めて研究棟に足を踏み入れる――寸前で足を止めた。


 「この先には、賢者ノルンと聖魔法士エリファスが待っているわ。ユリウス、貴方、私と一緒にいて嫌な思いしたりしない? 大丈夫?」


 気遣うような煉華の言葉に、ユリウスは少しだけ笑みを浮かべる。


 「問題ありません。レンカ様のお側にいることは既に伝えてありますので」


 あえて明るく返事を返すユリウスは、煉華の手を取って建物の中に入っていく。


 「それにしても、瘴気と魔素の研究とは一体どのような事をなさるのですか?」


 不思議そうに首を傾げるユリウスを見て、何も考えずに今まで浄化をしていたのかと呆れてしまう。

 聖女がいるから。聖人がいるから。と、ろくにどういったものかも調べていないのだろう。

 説明が長くなりそうだと感じた煉華は、応接室についたら説明する。と、言って質問を流した。

 瘴気の仕組みを考えた事も無い人にざっくり話しても新しい疑問が生まれるだけになるだろう。それならば、まとめて説明した方が早い。

 そう考えた上での返事であったが、ユリウスは同席が認められて嬉しそうに笑いながら返事をしてくる。

 

 今回の件、一番反対していたのはエリスであった。

 瘴気によって体調が悪くなっていることは、既にばれてしまっている。そのこともあり、エリスは今日の会合には最後まで反対した。

 なかなか首を縦に振らないエリスであったが煉華が何度も説得した。瘴気に関しての協力を依頼するだけだということ、そう長くは話し込まない事、終わったらすぐに休む事を約束し、ようやく首を縦に振らせることが出来たのだ。


 魔素研究。それ自体は、魔法士たちが日常的に行なっているものである。

 だが、瘴気研究を行うものはほとんどいないと言っていい。

 聖女と聖人たちがいればすぐに浄化する事が出来る。魔族に関しても、直接対峙する事は少なく「いる」ということはわかっているがどこにいるかなど具体的な事はわかっていない状態であった。


(魔素を濃くするだけではなく、何らかの効果が付与されているはず。身体能力の向上。魔力を放出した際の出力上昇。それに伴って起きる倦怠感、発熱、全身の痛み、そして痣。これらとの関係性も調べないと)


 考えながら歩いていたからか、あっという間に応接室の前にたどり着く。なんの変哲もない扉ではあるが、その中にいる者達の緊張が伝わっているのか、重苦しい雰囲気を醸し出している。少しだけ竦んだ足を咎めるように視線を落とすと、煉華は真っすぐ顔を上げユリウスに扉を開けるように合図する。

 ユリウスは扉を開けると、中にいた2人を見ながら声を張り怒りを宿した目で一瞥してから、煉華が中に入る事が出来るように道を開ける。


 「聖女、レンカ様より話があるとのことだ」


 「ありがとう。ユリウス。始めまして、和泉煉華よ」


 頭を下げる事無く自己紹介を終えると、唖然としている2人の青年をそのままに上座に置かれたソファへと腰掛ける。


 「ユリウス、こちらの方々は舌を無くしてしまったみたい。紹介してくれるかしら?」


 煉華が誰の許可も得ずに腰かけた事か、それとも聖女と紹介された事か。或いはその両方か。

 憮然とした表情で睨みつける2人に対し、煉華は気にも留めずにユリウスへ話し掛け、提供された飲み物を口に運ぶ。

 

 「レンカ様より、右側の者が賢者ノルン、左側にいる者が聖魔法士であるエリファスです」


 「そう。では、2人ともこれがなにか分かるわよね」


 金糸の施された黒いローブを身にまとっている青年をノルン。白いローブと銀の花をモチーフにした留め具を身に着けている青年をエリファス。と、紹介したユリウスを後ろに控えさせ、煉華は自身が着ていたローブを脱ぎ、肩から腕を見せつける。

 赤黒い斑点のような痣が浮かび上がり肌の色が赤くケロイドのような状態となっている姿を見て、エリファス。と、呼ばれた青年が息を呑んだ。

 瘴気被害にあっている者を多数見てきたが、この状態になって何事もなく動けている者を見た事がない。何故目の前にいる女は倒れる事もなく話しているのか。その疑問が口から出る前に、ユリウスが煉華にローブを渡し口を開いた。


 「レンカ様は、瘴気を自身の体内に吸収し浄化を試みている。だが、この通り、体内の瘴気は確実にレンカ様を蝕んでいるんです」


 我々が何もしなかった間も。そう続けたユリウスを見て、煉華はその手を軽く叩く。


 「あなた達は、聖女交代について調べてくれているし、治安も維持してくれているから十分よ」


 適材適所。と、気にしないようにと労う煉華の姿にユリファスとノルンは驚いたように顔を目を見開き顔を見合わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ