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サンセット商事9 完結編

サンセット商事 9


男は空き地に行きましたが そこは空き地ではありませんでした 男が空き地だと思っていた場所には ずいぶん古い小さな教会が建っておりました 教会の入り口には喪服を着た大勢の人達が中に入れず待っていました 男はその中の一人に聞きました

『 ここは いつから教会があるんですか?』


『 この教会かい?そうさなぁ もう かれこれ100年ぐらいにはなるかね』


この間まで空き地だった場所に100年も前から教会が建っているだなんてことは 考えられません 男はもう一度 まわりの建物を確認しましたが やはり 空き地だった場所です あの老婆さんが茂みの中から出てきたはずの空き地です


『今日は何か?あったのですか?』


『今日は葬儀がありましてね とても 立派な方がお亡くなりました 長く患っていましたが昨夜 天国へと 旅立ちました 』


そう言うと その人は目が涙で滲みました


『お知り合いの方ですか?』


男がそう聞くとその人は答えました


『ずいぶん 助けられましたよ あの方が居なかったら私など 今頃どうなってるかいたか?

亡くなられたのは この教会のシスターです みなさんから 慕われておりました 人の為にお尽くしになって……』


そこまで言うと言葉が悲しみにもみ消されました


そう聞くと男は何かに導かれるように教会の中へと入って行きました 人々の悲しみの渦が教会の中に溢れておりました


そして 男は棺の中のシスターの顔を見たのでした


それは見覚えのある顔でした あの 空き地の老婆さん しかしその顔は 穏やかで優しさに溢れた美しい顔になっていました


男はしばらく 席に座りこんで動けなく 呆然としていました 気がつくと まわりには誰もいなくなっておりました 一人の若い牧師が男に話かけました


『今日は葬儀ににご参列いただいてありがとうございました しばらく 昏睡状態が続きましだが ようやく 神様のお迎えが参りました』


男は若い牧師に尋ねました


『シスターは生前 どんな方だったのですか?』


牧師は一瞬 笑顔になって


『シスターは人の幸福の為なら自らの命さえ差し出しかねない方でしたよ 私もあの方に導かれて神の道に入ったようなものです 』


男は 空き地での不思議なことを牧師に話そうと 言葉が出かかったところで やめたのでした

そのかわりに たわいもない事が口から出ました


『この教会はかなり古いんでしょうね?』


牧師は教会の全体を見まわしながら


『ご覧のように かなり古いく老朽化してます あちこち直しながら 使っておりますが 再来月いっぱいで取り壊しされるでしょう』


『建て直すのですか?』


『いえ 違います ここの土地の地権者が土地を買い取るか?立退くか? と先月言ってきまして 私達には とても買い取るお金などあるはずもありません 仕方なく立退く事になるでしょう』


男は老婆さんにやろうとしていた現金とその他の残高全額を小切手に 書いて 牧師に渡しました


『これでは足りないかもしれないが 使ってください』


牧師はその額を見て


『こんなに多額のお金を これなら教会を手放さなくても いや その他 修復さえもできるはずです あなたは どのような方なのですか?』


男は暗闇の中から薄気味悪く出てくる老婆さんを思い出しながら言いました


『生前 シスターと約束したお金ですから ご遠慮なくお使いください』




それから数日後のことです 社員達が社長に詰め寄りました そのわけとは 会社の事業資金がとうとう底をついてしまったのでした つなぎの為に社長が売却した自宅の金も全額を寄付してしまって どこをどう突っついても金は出てこない状態に陥ってしまったのでした


一人の社員が言いました


『社長 俺は給料もいらないから この貧困食堂続けたい 続けさせてください 俺は今の今まで人に感謝されることなんか一度もなかった だけど こんなにも 充実した生活は味わったことがないんです』


その意見に全員が賛同しました


『 みんなの気持ちは嬉しいが もう 資金が底を』と社長が言いかけたところで 一人の爺さんが入ってきました

あの文句ばかり言って食べている爺さんです


『 ちょっと いいかな やっぱり道理に合わない と思って文句を言いにやって来たんだが

外で聞いていると やっぱり道理に合わない

道理に合うまで 続けるのが道理だろう』


そう言うと 爺さんは小切手を一枚社長に手渡しました そこには想像を超える金額が書いてありました


その爺さんというのは 変わり者の富豪でした

爺さんが多額のお金を寄付した話は 新聞に取り上げられて 貧困食堂の事も知れ渡りました


その記事を読んだ全国の人達から寄付が集まり貧困食堂は今日も営業するのでした


ちなみに社長の癌は、跡かたもなく消えておりました 医者は 検査機器の故障かもしれないなどと 色々な理由をつけましたが 結局消えた事には間違いはなく とどのつまりは

みんな幸せになりましたとさ


ヒッヒッヒッヒッヒッヒッ


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