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サンセット商事8

サンセット商事 8



腹を空かせた人達が次から次へとやってきました 貧しい子供や老人達が夢中でカレーを頬張っています


薄汚れた爺さんが言いました


『旦那 こんな美味しいカレー 本当に無料でいいんですかい?』


貧しい少年が言いました


『おじさん ここのメシはなかなかイケるね 明日も来ていいかい?友達も連れて来るよ』


そんな言葉を社員達は その日 何度も聞きました その度に なんとも言えない 今までに感じた事のない感情が芽生えるのでした

不思議なことに 忙しく働いたにもかかわらず 疲労感はなく 心は満たされていました

次の日も次の日も貧困食堂には人々がやってきました メニューも日々増えていき

社長も社員達と一緒になって働きました


貧困食堂は来る人来る人が幸せな顔をして帰っていくのでしたが その中に一人だけ いつも腹立たしく文句を言っている老人がおりました


老人は『まったく 道理に合わん 俺は納得がいかん ふざけた話だ 偽善だ 』そう言いながら 毎日のように無料のメシを食い 帰って行くのでした 世の中にはそういう変わり者が一人や二人はいるものです その老人は他の人よりも小綺麗な格好はしているものの 結果は食い詰めた見栄っ張りな可哀想な爺さんなのだろうとみんなは思いました


それからひと月程がが経ちますと 社員達の顔も以前とは変わっておりました どんな顔と言えば良いのか?まぁ 一言で言うなら みんな幸せな顔になっておりました


同じく社長にも変化が現れました どんな変化かと申しますと 死を受け入れる覚悟と言えば良いのでしょうか 最後の最後に人に喜ばれ死ねる 幸せとでもいいましょうか やはり 社員達と同じように幸せな顔になっておりました


でも 利益の出ない事業が長続きするわけもなく 会社の金もそろそろ底をついてきました


社長は自分の自宅を売却して 多少の金を作りました


『これで 俺の金運も尽きたな どうせ死ぬ運命だ 残しておいても仕方がない でも 待てよ そう言えば あの老婆さんにお礼の金を渡してなかったな 結局死ぬ間際に こうして穏やかな毎日を過ごせるのも 元はと言えば あの老婆さんのおかげだからな』


社長は自宅を売却した金の一部を持って老婆さんのいる空き地へと向かったのでした


続く…


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