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サンセット商事7

サンセット商事 7


夜 男は眠れないべッドの上でその日の出来事を思い出しておりました


『社員は不安で怖気づいてる始末さ』


『ホームレスに恵んでやった金は その日のうちに酒と博打でパァー』


幸せそうな面でうどんを啜っている爺いの姿


そんな朦朧とする頭の中で 男は 一つの糸口を見つけたのでした


待てよ 俺は なにか 勘違いをしていたのかもしれない これまで人が幸せになるために金を使ってきたが 結局 誰も幸せにはできなかった どうしてか? そうだ 俺は大きな幸せばかり考えていた 例えば あの爺いのように 空腹で倒れそうな寒い夜 一杯の温かいうどんにありつけた事も 幸せには違いないじゃないか 幸せなんていうのは小さな出来事の積みからねなんだから


あくる日の朝 男は社員達を集めて言いました


『今日から わが社は 今までの業務から完全に撤退する』


社員達はざわめきましたが社長は 強い眼差しで全員を見まわし


『明日から食堂業務をはじめる ゼロからのスタートになるが 兎に角 時間がない 協力してくれないか』


そう言うと社長は初めて社員達に頭を下げました が…社員達の受け取り方は様々なのでした


『食堂業務ってなんだろうなぁ? 』


『わからないが あの社長のやる事だからな

何か?裏があるに決まってるよ 』


そこへ また 鈴木が戻ってきて言いました


『今 聞いた話なんだがな 食堂業務ってのは

無料で貧しい人に飯を食わせる事業らしい

しかも 明日からこの場所ではじめるんだってさ』


『ここでか?』 みんな顔を見合わせて 首を傾げました


その日 社員達はどうだこうだ考える暇もなく 指示されるままに準備に取り掛かりました 事務処理用の机は食堂のテーブルに変わり 調理道具が運び込まれました 食材を仕入れる者 料理を作る者 チラシを作る者 社員全員で必死に準備をしました

夕方にはサンセット商事の大きな看板に手書きの文字で 貧困食堂と書かれた紙が貼られました そして 次の日の朝は たくさんのチラシを配った甲斐もあり 貧困食堂の前には長蛇の列ができていました とりあえず 初日はカレーのみのメニューになります カレーといっても肉などがたくさん入った贅沢なものです


開店の準備が整うと社長が社員達に言いました


『いいか 金は幾ら使ってもいい 食材はケチるなよ 美味い物を腹一杯食わせて喜ばせるんだ 今日はカレーだけだが 明日から少しずつメニューを増やして行くからな』


社長の話に社員の一人が尋ねました


『 ところで社長 無料で食べさせて利益は出るんでしょうか?』


途端に社員全員が社長を見ました 社長は社員の一人一人の顔を見ながら言いました


『 利益は人の幸せな顔だ 』


そして 貧困食堂はオープンしたのでした


続く……



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