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サンセット商事4

サンセット商事 4



胃に激痛をくらって病院に駆け込んだのは

1週間後の事でした 最初は酒の飲み過ぎやら食あたりだろうと 呑気に考えておりましたが 結果を知らせる医者の顔を見て 男は嫌な予感に襲われるのでした 結果を言い出す前に家族の有無を聞かれ いないと伝えると 医者はそれなら単刀直入に という言葉で自分に勢いをつけて 一言


『 癌ですね 』


大事な命も消えかかってるよ 来年にゃ 土の中さね………ヒッヒッヒッ あの老婆さんの薄気味悪い声が耳元を囁くように擽りました


『癌てっ 癌ていっても初期ですよね 先生 』


男はカラカラに乾いた口から掠れたような声で聞きましたが医者はカルテから目を離さずゆっくり首を振りました


『 もっても 三か月 変な話 いつ死んでもおかしくない状態です 残念だが ここまで進行してしまうと手の施しようがありません』


医者は もう一度 残念ですがと付け加えると

背中を向けてしまいました


男は病院を後にすると絶望の淵を無我夢中で彷徨い歩きました どこをどう歩いたのか 気がつくと この間の空き地に立っていました


『 なんだい あんたかい また あの女との相性かい? ヒッヒッヒッ…』


『 ふざけるなぁ』


男はそう怒鳴りつけると 急に咳き込んでその場に座りこみました


『 そんなに 怒るもんじゃないよ 短い命が消えちまうよ ヒッヒッヒッ』


『 わかった 老婆さんの言う通りだ 頼む 教えてくれ 何か?助かる方法あるんだろ?』


男は息も途切れ途切れにそう問うと 老婆は一層意地悪い面で言いました


『 ない事もないがね 教えてやってもいいが

それには金がいるよ 』


『金なんて幾らでもくれてやる さぁ はやく教えてくれ』


老婆は男の目を突き刺すように見ると答えました


『 金を使う事だね 兎に角 持ってる金を使いはたす事だ 』


『そんな事で 俺の命が助かるのか?』


老婆は馬鹿にした顔で笑いながら


『あんた 勘違いしてるようだね 誰も命が助かるなんて言っちゃいないよ 寿命が多少伸びるぐらいのものさ それだって今のあんたにしちゃ めっけものだろ ヒッヒッヒッ』


『わかった 金を使いはたせば良いんだな』


『そうさ 使いはたしちまいな あんたの汚れた金なんて持ってるだけでも寿命が縮まるってもんだよ』


そう言うと老婆は 暗い茂みに消えようとしましたが ふと立ち止まって


『大事な事を言い忘れるところだったよ その金の使い道には 一つ決まりがあってね 』


『決まり?決まりってなんだよ』


『ここが肝心なところだよ どうだい 知りたいかい?』


男は財布の中の金をすべて抜き取って老婆の前に差し出しました


『お願いだ 教えてくれ』


『そんな はした金で間に合うと思うのかい?

まぁ 良いよ 教えてやる いいかい 良く聞くんだよ その金はね 人が幸せになる為に使わないと効果が無いのさ』


『人が幸せになる為……それは どんな事に使えば良いんだ?』


『そんな事 私に聞かれたって知るもんかい あんたが自分で考えるんだね』


そう言い捨てると 老婆は金も受け取らずに暗い茂みの中へと消えていきました


続く…



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