サンセット商事3
サンセット商事 3
『 お婆ちゃん お客さん連れてきたよ』
キャバ嬢がそう呼ぶと 暗い空き地の茂みから薄汚い乞食の老婆が顔を出しました 男はその姿を見た途端 あからさまに嫌な顔をしました
『お婆ちゃん この人ね 会社の社長さん 』
老婆は男の顔を見ると一瞬ズルそうな表情をしました
『金はあるのかい?』
『お婆ちゃん この人お金持ちなんだよ 』
『そうかい それなら良いよ 金さえ払えばいくらで占ってやるさ』
老婆はそう言うとヒッヒッヒッと醜く笑うのでした
『そんで 何を占って欲しいんだい?』
『あのね お婆ちゃん 私とこの人との相性を占って欲しいのよ』
レナがそう言うと老婆は男に向かって言いました
『それじゃ あんた手 出してみな 』
男は恐る恐る手を出しながら言いました
『汚ねえ手で触るなよ 老婆さん 』
老婆はそう言われても表情一つ変えずに男の手をジッと見つめていました
『あんた 額 見せてごらん』
男はそう言われて渋々前髪を手で持ち上げました
『老婆さん なんでもいいから良い事言えよ
悪いこと言ったら金払わねぇからな』
男はそう言ってキャバ嬢達を笑わせました
老婆はそんな事にも無関心に しばらく男の額を見つめていましたが やがて すべてわかったような顔をして言うのでした
『あんたは 金運が尽きない相だね 何をしたって金が入ってくるよ』
『そうだろう 俺は今の今まで金に困った事なんて一度たりとも無い男だからな 老婆さん
なかなか当たるじゃねぇかよ』
男が喜ぶ顔を嘲るかのように老婆は続けました
『だけど あるのは金運だけだね そのほかはみんな消えていくよ 』
それを聞いた男は嫌な顔をして 何か口から罵倒の言葉が出かかった瞬間
『犬が死んだね あんたの可愛がってた犬』
その途端 男の顔色が変わりました
『あんたの元から金以外 全部消えちまうよ もう 大事な命まで消えかかっている
来年にゃ もう 土の中さね』
老婆はそう言うとヒッヒッヒッと笑いながら金も貰わずに空き地の暗闇に消えていきました
『あんな老婆さんの言う事なんて気にする事ないわよ』
レナがそう言うと 男は大笑いしました
『 気になんかしてねぇぇよ あんな乞食老婆さんの言う事なんかその日の気分で金欲しさに なんとでも言うのさ 俺が驚いた顔色でも見せてみろよ 途端に ああいう詐欺師はこう言うのさ 死なない方法もあるがね 教えて欲しかったら幾らか金を出しなってね』
そうは 言ったものの やはり気持ちの良い訳はありません しかも あの老婆さん なんで俺の犬が死んだ事知ってるんだ まぁ 多分 キャバ嬢の誰かが老婆さんと組んで俺から巻き上げようって魂胆だな そうだ そうな違いない 男はそう話に決着をつけたのでありました
続く