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神託

 リーネがこちらの世界に来てから一か月。俺の異世界での時間経過を考慮するのであれば、そろそろ女神様からの何かしらのアプローチがあってもいいと思うんだけど…


「ふんふーん」


 今日はリーネのバイトやお休み。俺も日曜で休みなので、二人とも家にいる。リーネは自分のスペースを持っているはずなのだけど、休みのときはよく俺の部屋に来る。


 リーネには今日が一か月であることを教えていない。カレンダーがきちんと読めるようになっているのであれば、自分で一か月であることに気が付いているはずなので。

 もし気が付いていなくても…まあ特に問題はないだろう。女神様だって問答無用でノータイム転移はしないはずだから。


「トーヤ、これ見て!」

「なんだ?」

「雪だって!すごいね!」


 リーネが見せてきたのは北海道の写真。最近のリーネのブームは、色んな遠い場所の写真を見ること。

 近所では見れず、異世界でも見たことのない外の世界というものに憧れがあるらしく、特にここらへんじゃそう見れない極端な地域の写真が好みらしい。

 豪雪地帯や火山、砂漠などがこれに該当する。一応どれも日本内に存在するものだけど、ちょっと遠いからなぁ…


「テレポートの魔法ってリーネは使えるのか?」

「ううん。私の部屋にあった本に載ってなかったから」


 多分、リーネが部屋から逃げ出さないように…かな。

 テレポートの魔法は一度は行ったことのある場所にしか飛べないが、檻の外側くらいの、目視できる範囲になら飛べるのだ。


 異世界で犯罪者用の魔力を抑える腕輪が存在しているのは、魔法による反抗以外にも、テレポートの使用を禁じる理由もあるのだ。


「そろそろ…」


 昼の十二時。リーネが「今日は何を食べようかな」なんてことを呟いているのを後目に時計を眺めていると…


『勇者よ…』

「来たっ」

「どうしたの?」


 うーむ、俺の予想通りに神託が来るとなると、少し物足りない感じもするな。

 いや、まあそこで文句を言うのはおかしいのだけど。でも、一か月も待たせたという責任を女神さまは考慮しないといけないような気も…


『勇者よ、魔王の娘の保護、ありがとうございました。彼女は早急に元の世界へと帰還させましょう』

「トーヤ、どうしたの?」


 どうやらリーネには女神様の声が聞こえていないらしい。

 向こうの世界でも、女神様の声を聞いたことのある人に出会ったことないし、もしかして神託を受けれるのって勇者の特権だったりするのだろうか。


 あの聖女さんですら、女神様から直接言葉を受けたことはないらしいからな。神託は、あったみたいだけど。


「女神様からの連絡だよ。リーネについてのな」


 女神様からの神託によると、どうやらこっちにリーネがいたという記録自体を消すらしい。うーむ、流石神様、ミスの隠蔽の仕方が大がかりだ。

 あとしれっと遅れたことを謝られた。少しずつ女神様への不愉快度が上昇している今日この頃。


『魔王の娘の魔力はこちらの世界には不自然なものです。ご理解してください』

「それは分かってる」


 リーネからは独り言に聞こえるであろう女神様とのやり取り。


『故に、即刻に』


 女神様からそう言われた瞬間、リーネが光りだした。


「え、えっ」


 俺の時はある程度猶予を持たせていたというのに、リーネのときはすぐか!


「嫌!トーヤ!」

「女神様、少しくらい時間を!」

『世界は元に戻るでしょう』


 リーネがここにいたという真実は書き換えられるから、リーネはすぐに返してしまっていいだろうということだろうか。

 確かに魔王の魔力というのは、ただ存在しているだけで人間へと害を与える。リーネはこちらの世界で魔力の制御の練習はしているものの、未だに完全に操ることはできていない。


 光が最高潮に高まり、魔法が発動しようとしたそのとき…


「トーヤ!」


 リーネが俺に抱き着いてきた。ちょっと待て転移魔法で抱き着いたら…


……


「ううぅ…」

「リ、リーネ…」


 目の前にあるのは石の壁。そしてボロボロの部屋。


「ここは…」


 魔王の城、地下。


 リーネが元々住んでいた部屋である。

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