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伝説

 リーネがこっちに来てから二十九日。明日で一か月だ。


 今日は前々から約束していた通り、リーネの財布を買いに行く。女の子の買い物なので姉が行くかと思ったら、引っ張り出されたのは俺だった。

 俺、女の子の趣味とか分からんぞ。


「大丈夫!それに、スズを連れて行ったらスズの好みになるでしょ?トーヤは主張してこないもん」


 おっと、どうやら姉は自重を覚えないといけないかもしれない。


 ともかく、リーネに連れられてショッピングセンターまで来た俺は、リーネに導かれるままに店を渡り歩く。

 リーネに紹介するときに来た俺だけれども、別にそこまでよく来るわけではなく、むしろリーネが家に来るまでは縁がほぼない場所だった。そのため、既にショッピングセンターに関する知識はリーネに負けている。


 何件か歩いたあと、たどり着いたのはなんだか少し老舗の感じがする店。新規店舗参入も多いショッピングセンターで、このような店があるのは珍しい。

 場所も端っこなので、客はそこまで多くない。


「トーヤ、これどう?」

「渋いな、リーネ」


 リーネは元々この店に財布が売っているのを知っていたようで、足早に財布コーナーに移動したあと、色々と見せてきた。

 かわいいものを選ぶのかと思っていたのだけど、リーネが選ぶ財布はどれも渋い。なんだか、サラリーマンみたいな財布ばかりを選んでくる。


「こういう財布はいいのか?」


 俺が見た目がかわいいやつを見せても…


「でも使いにくいもん。使いやすいほうがいいよ!」


 と言ってくるので、俺はそれ以上何も言わない。リーネが欲しいものを買いな。


 多分、姉だとそれでもかわいいものをオススメするから、リーネも辟易してしまったのだろう。服装などはかわいいものがいいけれど、なんでもかわいいものを取って利便性を欠くのはリーネ的に嫌らしい。


「利便性なら…これとかどうだ?多機能系だ」

「うーん、でもカードとか持ってないよ」

「それもそうか…」


 リーネが持っているのは現金だけだ。口座もないので、そういったカードを持ち運ぶことはない。

 そもそも、リーネには戸籍がなく、親にもあくまで外国の人であると説明しているので、日本で口座を作ったりなんだりはできないのである。


 リーネが今後カードを持つことがあれば…図書カードくらいか?ギフトカード系は持つこともありそうだが…


「おー、ぺりぺりー」


 マジックテープで遊んでいるリーネを見るに、そこまで気にしなくてもいいだろう。

 ギフトカードを貰う機会も限られているし、多分そこまで重要ではない。となれば現金が入れられるだけ入れられる大容量のほうがいいか…


「これはどうだ?多めに入るけどコンパクトだ」

「おー!これいいね!」


 実際にリーネが手元のお札を財布の中に入れて確認する。どうやらお気に召したらしい。


「うーん、これにする!」


 リーネは財布を持ってレジに行き、ポケットから出したお金で会計を済ませた。


 ポケットから直接お金が出てくるというのは中々見ない光景のような気がするけれど、店員は表情を一切変えずに対応していた。財布売ってると、そういうことも多いのだろうか。


「トーヤ、買ったよ!」


 早速財布にお金を詰め替えようとするリーネを止めてフードコートに移動。

 流石に立った状態でお金の移動は見てられない。お金を落としても確実に拾うことができるとはいえ、やはり見てられないものは嫌だ。


 ちょうどいいので、お昼ごはんとしてバーガーを注文して、食べながら予定について話す。


「まだ何か買いたいものはあるか?」

「うーん、何かあるかな~」


 多分日用品や装飾品は姉が渡すだろうから、それ以外でリーネが買うものとなると…なんだろうなぁ…

 先日もリーネは何を買うのか悩んでいたくらいだし、買う物ってあまりない気がする。


「よし、ちょきんを買う!」

「貯金はするものだな。まあ、買うものがないなら無理に使う必要はないな」


 リーネのお金は何に使ってもいいことになっている。いつか買いたいものが見つかったときにお金が足りなかったら悲しいし、貯金は一つの手だろう。

 今日のところは財布を買って嬉しそうだし、そのままでもいい。


 明日はリーネが来てから一か月。女神様から何か連絡はあるのだろうか。

 

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