闇はそこにある
この作品は初めての作品投稿になります。
私が幼い頃から想像し練っていた作品です。
面白いかどうかはわかりませんがこの作品を読めば私が日頃何を考えているのかが分かるでしょう。
露出狂
世間から忌み嫌われる存在である犯罪者になってしまった俺は
今世に生きる希望をなくし15階建のビルから飛び降りるところだった。
パッと目の前が著しく眩しくなった
今まで見たことのない光
ものすごく明るいのに嫌な感じがしない
この感覚は心地よい
俺は暖かい光に包まれた
昔もこんなことがあったような気がするな、ああそうか、この感覚は赤ん坊の時両親に抱き抱えられた時のことを思い出す
俺は久しくこの感覚を忘れていた
包まれる暖かさを
安心感、幸せを….
俺はそのまま寝るように意識がなくなった
しばらく時間が経った
少しづつ周りが寒くなるのを感じる
静かさ、暗闇、孤独、
なんだかそう言う単語が似合うような感覚だ
まるでハリーポッターのヴァルデモートが出てくるのではないかと思うほど
不気味な雰囲気が俺の語感を襲う
俺は怯えつつも
目をゆっくり開いたまるで瞼に5キロの重りがついているのではないかと思うほどゆっくりと
目を少し開けると薄暗い青い世界があった
先程のように暖かさは感じないが
思ったよりも安心感を感じる空間だ
釈然として静かで
考え事をするのに適してそうな部屋だ
ここはなんなんだろう….
俺は魑魅魍魎が出てくるのではないかと
心を敏感にしつつも落ち着きながら当たりを見渡した
ふと気づいた、俺は見たこともない服を着ている
布切れのような質素な服だが
生地が案外しっかりしていた
これは麻か?
触ると滑らかな生地で、通気性も良く
着ていて心地よさを感じる服だ
まあデザインは原始的すぎてクソだが…
外に着て出たら一発で不審者扱いされるだろうな...まあそんな服だ
それにしても、地面は石でできているがゴツゴツさを感じない
裸足特有の痛さというか、気持ち悪さも感じない
ものすごく開放的で気持ち良い
ここはなんだ?
温泉か?
俺は温泉旅館にでもきたのか?ってくらいにリラックスしている
空気も澄んでいるし、気温も湿度も完璧に人間が心地よいと感じる適切な具合に調整されている
調整されている?
これは人間が調節しているものなのか
それとも自然にこういう空間ができているのだろうか
そんな考えが淀んだが
どちらにしろ、このような素晴らしい空間があればお金を払ってでもきたい人はいるだろう
ストレス社会で生きているサラリーマンたちの大量発生が予感できる
まあ俺はニートだから行かないが…..
今度お袋にでもこういう落ち着ける場所をプレゼントしてやりたいな…
「おふくろ?..」
俺は一瞬驚いた
死のうとする前は恨みしかなかったのに...
不思議と今はそういうふうに思える
人間一度死ぬと変になっちまうのか?
てか俺って死んだのかな…いったいどこなんだここは…
その時、耳を凍りつかせるような鋭い声が聞こえた
「ごきげんよう、もう来てたんだね」
俺は視線を変え、その男を震えながら見た
その男には目がなかった
「おや?私になにか着いているかね?
いや逆か笑笑、私にはお前についてるようなものがついていないのか」
そう言って男は俺の左どなりにふらりときて、流暢に肩に手を乗せ、足を組みながら耳に囁くように言ってきた
「なあ、君ってどうなったと思う?」
俺はいまだ口を開けない
その男からのオーラというか緊張感は並のものではなかった
別に怖いわけじゃない
ただこいつには何かヤバいものを感じる
俺の大事な何かを左右できる権力というかなにかを、決して逆らえない
「なあ、なんで喋んないの?君には口があるはずだろう」
そういってそいつは俺の口元をひんやりとした手で触ってきた
俺は咄嗟的に手を振り払い距離をとった
「さわるなああ」
男はキョトンとした目で首を傾げながらこちらを見ている
俺はかえって目が血走り、呼吸が乱れている
とにかく恐ろしいのだ彼のことが
「おまえ、近づくんじゃねえぞ、なんなんだここは」
「そんな怯えるなよ、君は少し焦りすぎだ」
彼は腹を抱えながら言っている
そんなに俺のことが面白いのか
なんなんだこいつの緊張感のなさは
まるで俺が何も抵抗できないと思っているようじゃないか
怖い、怖いよ、
こんなに力の差を感じたことはない
今までヤンキーに絡まれた時も
おかんに怒られた時も
こんなに恐怖はなかった
アイツらはまだ人間な気がした
だがこいつは違う
暇つぶしで俺を殺してきそうな圧倒的な力の差を感じる
彼にとって俺は虫けらなのだ
「少し落ち着いてからでいいから、呼吸をまず正そうか、今の君とまともな話が出来なさそうだからね、襲いかかってこられても困るし...」
そんな事言われても落ち着けるわけがない...
俺は死んだと思ったら見たことも無い異界の地に来て、目の前に化け物みたいな奴がいるんだ、これが落ち着いていられるわけが無い
こいつの言っていることは狂っている...
どんどん俺の頭は仰天し、呼吸がより乱れ始めてきた...
「おいおい、そんなに呼吸を乱すなよ...さっきよりも殺気立ってるぜ」
相変わらずそいつは呑気に話しかけて気やがる、所詮そいつからしたら他人事である
気がついたら俺の鼻から血が流れていた
ポトポトと岩の地面に俺の血が叩きつけられる
静かな部屋には血の音が心地よく響き渡った
「おいおい、きみ...
そうか、俺が甘かったか....」
深刻そうな表情で目なし野郎は言った
「甘いって何が...?」
俺は殺気立って問い詰めるように聞き返した」
「ここに来たヤツらはみんなお前ほど取り乱すことがなかったんだ...お前みたいな奴もいることを視野に入れておくべきだったな...まあお前みたいのが例外なだけな気もするが...」
さっきから何を話してるんだ....
ここに人をまねきいれる...
こいつが俺をここに連れてきたってことか.....
「お前が俺をここに連れてきたのか...」
俺は恐れながら質問した
「まあ、厳密には違うんだが、大体そんなもんさ」
さっきと一風変わってこいつはまた呑気に答えている、ハートの絵文字をまるで使っているかのごとく声が浮ついているぜ...ムカつくな
そんなもんさってなんだよそんなもんさって
「とりあえずここがどこなのか、俺はどうなったのか、お前は何故ここに俺を連れてきたのか、お前は何者なのかを教えてもらおうか
」
俺はめちゃくちゃ早口で全ての気になることを口に出した
「おいおい、そんなにいっぺんに質問されたら困るよ、まあいいんだけどさ、けど僕はあんまり頭良くないからしっかり答えられるかわかんないよ?」
頭の良さなんて関係ねえだろこいつ、なにか都合の悪いことでもあるのか???
「しかも君さっきから殺気立ってるしさあ、ちゃんと聞いてくれるのかなあって、まずはその鼻血を止めた方がいいんじゃない?」
「うっせえな、さっさと答えろよ目なしやろうが」
「おおお、怖い怖い
悪かったよ、じゃあ質問に答えようじゃないか」
やっと質問に答えてくれるようだ
ここまでどんだけ無駄話が長いんだよ...
そいつは一先ず置いてからゆっくりとテンポを変え話し始める
「まずはここがどこかという質問だが、実は私にもよく分からないんだ」
「はっ?」
「一説には天国と地獄を繋ぐ廊下とも言われているが、真意は定かではない、なんたって未知な部分が多すぎてもはや分析ができない空間だからね」
なんじゃそりゃ
俺は心で叫びたくなったが抑えた。
確かによく見るとここの空間は頭上が恐ろしく高い、最初は薄暗いから天井が見えないのかと思っていたが違うようだ、ここの頭上は高すぎて暗黒の闇と化しているんだ
「私もある方の権威によってここに来ているものでね、別に私がここに好きに出入りできて庭のように扱える訳じゃないんだよ、つまりは私もここのことをよくわからないってこと」
権威?
こいつよりも上の存在のやつがいてそいつに指示されてこいつはここにきたってことか...?
だとそれば当然こいつはここのことをよく知らないわけか...もしくはただとぼけているだけなのだろうか
「分からないことが多すぎて頭が混乱するが、ひとまず置いといて他の質問にも答えてもらおうか」
「OKOK、他の質問なんだったっけかなあ、ああそうか、君がどうなったかとかだったね、えっと〜それは〜」
こいつやる気無さすぎるだろ...
ぶっ飛ばしてやろうかこのハゲ..
「ああそうだ、えっとね、君はね
実はね、明確には死んでないんだよ」
??
「明確にはってどういう事だよ?...さっきから答えが曖昧だな」
「いやあなんというかさ、君たちとは死の概念とかが違うからさあ、まずはそこから説明しなきゃいけないんだよね、いや、でもそこまで説明するのは正直めんどくさいなあ...まあ仕方ないか、僕って優しい」
謎にテンションが上がってやがる...
なんなんだコイツはほんと..
調子の良いやつだ
「まずさあ厳密には君の肉体は死んだんだよ
でさあ、人間って肉体が死んだら終わりって普通思うだろ?けどねえ実は人間には第2の死がある、それが地獄に行くことさ」
「ほう...」
「うで、君はまだ地獄に行ってないから僕ら的に言うにはまだ君は終わっちゃないんだよ
助かる余地があるってことお」
助かる余地ってなんだ...
俺はこれから試験でも受けさせられるのだろうか...
「あ、ちなみにさあ、君みたいなのはものすごく珍しいんだよお、ほとんどの奴らは基本的に地獄に直行だからね、こんなに神から人目置かれて猶予を与えられてる人ってのは実は珍しいんだよお〜」
そうなのか...
こいつの言っていることは理解出来ねえな
俺みたいなクズが神から猶予を与えられるようなことがあるのか
潔白な義人ならわかるが
俺は生きている間に良いことなんて正直ひとつもしたことが無いぞ...やはりこいつの言っていることは嘘だ....
「ははあ、そういう所だよそういう所お
君の己を絶対に制している感じぃ?
奢らず自分自身なんて死んだ方が良いっておもってるところお?その感じが良いんだよねお」
なんじゃそりゃあ、自殺願望者でも神は募ってんのかボケが
「みんなね、何故かわかんないけどさあ、みんな天国に行けるって何故か思ってるんだよお、おかしな話さあ、普段神のことなんて何も気にしてないくせにさあ、急に死にそうになると天国に行けるとかさあ、天国で待ってるとかさあ、ふざけたことをみんな言い出すんだよお、おかしいと思うだろお?
神はさあ、そういう高慢な奴らが嫌いなのさあ、だからお前は少しはマシってことお、別にお前は人間として良くはないんだけどねえ」
こいつはハートマークが着いたかのように話している、なんでこんなウキウキしてんだ...ものすごく楽しそうだ.....
「まあ高慢な奴らが嫌いっていうのは俺にもわかる、確かにああいう奴らはキモいな
俺だってそういう奴らが嫌いだから、自分自身そういう風にならないようにしてきたつもりだ
まあしてきたってよりかは嫌いすぎて絶対に同じにならないようにするしかなかったんだけどな…もはや体が勝手に動いたのだよ」
「でしょお?まあさ結局人間の欲なんだよねえ、欲がある時点で天国に入るのは難しいのさあ」
「欲というと俺にも欲があるが?どうなんだ、そこら辺は」
「君も確かに欲はあるけどさあ、他の人たちはね自分自身が欲があることさえ気がつかなかったりするんだよお
例えばさあ、天国にいきたいって思うことも欲なわけえ、けどさあ彼らは自分が天国に行くのをまるで当然化のごとく語るんだよおお
マジで気持ち悪いよねええ、その点君は天国に己はいけないと悟っている、そういう現実的で悲壮的な思考は欲からは生まれちゃあいない、
君は本当の意味で反省しているんだよ自分自身の存在を己の悪の酷さをね」
「よく分からんが天国に行けると思うことさえおこがましいと思っていた俺はまだマシだったってことか??」
「まあそんなところだね、その上君は地獄に行くことを受け入れていたみたいだし、そこもかなり大きかったね」
「なるほど...自分がクズすぎるが故に自覚してしまった己の汚さが逆に幸をそうしたというわけか...なんだか複雑な気持ちだな...」
「まあそう言うなよ、きみのそういう悩む真面目なところが素敵なんだよ」
「ただメンタルが弱いだけな気がするが...」
「そんな事ないさあ、みんな悩むことでさえ放棄するやつが多いんだよお」
「本当か...さっきから肯定ばっかしてきて怪しいな」
「うふん、そんな目で見ないでえ照れちゃうう」
「何キャラやねん」
そんな感じで場の空気もかなり緩んできた
読んでいただきありがとうございます。
ご縁がありましたらまたよろしくお願い致します。