美人助手みたいな彼女が7人欲しい
なろうラジオ大賞用のお話です
「おれら今年で三十やんか」
「そやな」
「でさ、そろそろ彼女欲しいなって思うねん」
「お前彼女いるやろ。頭おかしくなったか?」
「大丈夫。目を閉じたままハットトリックできるぐらい冷静や」
「ごめん、何言ってるかわからん」
「あんな、昨日ゾンビ映画観たら博士と美人助手がイチャコラしてて羨ましかってん」
「パニック映画に美人は定番よな」
「だから美人な彼女が7人欲しいねん」
「お前鏡見たことあるか? 出来損ないの雪だるまみたいな顔のくせにできるわけないやろ。一人いるだけで奇跡やのになんで7人なん?」
「そら日替わりでデートするためやん」
「お前はどこのチャラ男やねん。毎日デートて湘南のサーファーか」
「巣鴨の大人しサーファーや」
「どんなサーファーや。やっぱりおかしいやろお前」
「おかしくない。目を閉じたままハットトリックできるぐらい冷静や」
「だからそれ意味わからんって」
「あとやりたいことがあってさ、サイコロの出た目でデート内容決めんねん」
「何その微妙な遊び要素。気持ち悪いって」
「1の目が出たら鳥取砂丘でオーパーツ探し」
「アホなん? なんで高確率で鳥取砂丘まで行かなあかんねん。てかオーパーツなんて見つかるわけないやろ」
「2が出たら大阪駅のホームの自動販売機で売ってる缶のしじみのお味噌汁買って名古屋駅のホームで飲む」
「移動が無駄過ぎるやろ」
「3はヘンゼルとグレーテルの話に出てくるお菓子の家作り」
「お菓子作りのスケールがでかすぎるわ」
「4は密室殺人ごっこ」
「どんなごっこ遊びや」
「犯人の手がかりはダイイングメッセージと現場に残された女物の腕時計」
「意味不明すぎるわ。頭おかしいんか」
「おかしくない。目を閉じたままハットトリックできるぐらい冷静や」
「だからなんなんそれ。壊れたカセットテープかなんかなん? 同じフレーズばっかり繰り返しやがって」
「知らんの? 流行語やぞ」
「聞いたことないわ」
「30年前に流行語大賞になってた」
「賞味期限切れやないか!」
「まじか、スーパーフレッシュやと思ってたのに」
「どこがやねん」
「え、じゃあ主人公が交差点に飛び出して『僕は死にません』って言いながらダンプに轢かれるドラマも古い?」
「なんで全部30年前の話やねん」
「そら、おれの時計が生まれた時から止まったままやからな」
「キメ顔してるけど意味不明やぞ」
「実はさっきふられてん」
「え?」
「だから彼女7人欲しいなって」
「最初から冷静ちゃうやんけ!」