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八丁堀には到着しなかった
俺が見た夢。
いつも通勤で使う地下鉄に、いつも通り乗っていた。いつも通り満員で、俺の前にも吊り革に掴まる客たちがいた。でも一人だけ、雨が降っていたわけでもないのに傘を持っていた。
密度が上がる一方の車内でバサッ、と何かが床に落ちる音がした。どこで何が落ちたかはわからなかった。
「次は八丁堀。次は八丁堀です」
アナウンスが聞こえた。夢はここで終わった。
次に目を覚ますと、そこは病院だった。通勤中の列車でガスが撒かれ、倒れて搬送されたと聞いた。俺にはその言葉が信じられなかった。どこまでが現実で、どこからが夢なのかはわからない。ひょっとすると全部夢か、全部現実なのかもしれない。いずれにせよ、悪夢なのは間違いない。