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夕焼け空を埋める鴉
ある日の暮れ方のことである。その日は空の五割ほどに雲がかかっており、太陽も一日中、見え隠れを繰り返していた。一人の少女が家路を急いでいると、一羽の鴉が路上にいるのを見つけて立ち止まった。鴉も少女を見つめて動かなかった。
奇妙な時間が、少女の感覚では長く続いた。雲が流れ、沈みかけの太陽が隠された。それが合図であるかのように鴉は太陽に背を向けて飛び立った。ぶつかりそうになった少女は、思わず悲鳴を上げてうずくまった。
すぐに顔を上げて振り返ると、東の空は鴉の大群に覆われていた。沈みゆく太陽から逃げるように、鴉たちは飛び去っていった。阿蘇山のある、東の方角へ。