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メスガキをわからせてェ~

「ちょっとどういう事なの!?」

 グループ決めをした翌日。朝の教室に声が響いた。


 俺は何かハプニングでも起きたのかと、日課のツイッターカップルアカウントにクソリプを送り付ける作業をやめてそちらを見た。


 見たところ二人の女子が言い合っている。いや、声を荒げているのは一人だけだ。


小鞠(こまり)が休んでる間に何勝手にグループ組んでるの。しかももう入れないってどういう事!?」


 自分の事を名前で呼ぶ女子、名前は確か小湊小鞠(こみなとこまり)といったか。名は体を表すというか身長の小さい女子だ。

 気の強そうなつり目で短いツインテールが特徴的だ。

 その小さい体から目いっぱいの怒気を相手にぶつけていた。


「休んでいた方が悪い。それに四人のところに入れてもらえばいいだけでしょう?」


 冷静にそう返したのは雪見玲衣(ゆきみれい)だ。

 小鞠とは正反対にすらっとしていてロングヘアーの美人系といった容姿だ。


「風邪だったから仕方ないでしょ! そっちだけちゃっかり五人グループ作っちゃって!」

「小鞠は私がいないとグループも組めないの?」

「ハァ~~? そんなわけないでしょ! ただ玲衣の裏切りが許せないってだけだから」

「そう。じゃあこれを機に新しい交友関係でも作ってみたら?」

「言われなくてもそうするわよ! 玲衣なんかもう知らないからっ」


 そう言って小湊小鞠は自分の席に戻っていった。


「風邪で休んでるうちにグループがねえ……」

 俺は一人つぶやく。

 俺らはすんなりとグループが決まったが、学生にとって「自由にグループを組んでください」っていうのは中々緊張の走る言葉だ。

 こういうのは女子の方がなおさらじゃないだろうか? 想像だが女子ってこうグループとか人の目とか気にしそうだしな。

 グループの人数が決まっているとはみ出したりする場合もあるし、万が一自分だけクラスであぶれたりしたら目も当てられない。


「ふむ……しかし裏切りか」


 先ほどの小鞠の言葉を思い返す。

 小湊小鞠と雪見玲衣は普段から一緒に行動をしていたと俺は記憶している。

 というより容姿も性格も対照的な二人が一緒にいるのが意外だと思っていた。


 そんな仲の良い二人が同じグループにならず、小湊小鞠が休みの間に雪見玲衣が抜け駆けした。

 それだけ見れば小湊小鞠の「裏切り」発言もわからなくはないが、そもそも昨日の時点でクラスの四人グループは完成していたのだ。

 そこに二人が入ると六人になってしまうため、どのみち二人は別れる事になる。

 雪見玲衣はそれに気づいていたため昨日のうちにさっさとグループに入った。そう考えれば小湊小鞠の単なる八つ当たりと言えなくもない。


「が、なーんか釈然としないなぁ」


「どうかしたんですか田中さん?」


 俺の独り言が聞こえてしまったのか、すぐ右前の席の近衛さんが問いかけてきた。

 ちなみにサキと友也はまだ登校していない。


「ん? ああ、俺の事はガイアでいいよ。代わりに胡桃ちゃんって呼んでいい?」


「え、あ、はい。わかりましたガイアさん」


 しゃ。自然な流れ(?)で胡桃ちゃんと名前で呼び合う許可を取ったぞ。


「それでどうかされたのですか?」


「や、さっきの小湊さんと雪見さんの喧嘩を見ててね」


「なるほど」


 ぽん、と胡桃ちゃんが手を合わせる。可愛い。けど何がなるほどなの?


「確かにこのままだと小湊さんが一人になってしまいますものね。わかりました」


 何がわかりましたなの? やだなにこの子怖い。


「任せてください。私が小湊さんをグループに誘ってきます」


 そう言って胡桃ちゃんは小湊の机へ向かった。

 思い込みが激しい子なのかな……?


 かくして、胡桃ちゃんが小湊を連れてきた。


「げ……このグループって男入りのグループ?」


 連れてこられた小湊は嫌そうな顔をする。

 小湊小鞠の俺に対する印象は良くない事がわかった。

 俺は別にクラスの女子に嫌われているわけではないが、去年まで女子高だったところにクラスで二人だけの男子だ。壁を感じる事もある。


「開口一番げ、とはご挨拶だな。ガイアと呼んでくれ。俺も小鞠でいいか?」


「は? いいわけないでしょ馬鹿なの?」


 ほーん。屋上へ行こうぜ……久しぶりに……キレちまったよ。


 という冗談はさておき。中々良い性格をしていらっしゃる。

 ツリ目短めツインテール。そしてよく見ると八重歯持ち。これはあれだ、メスガキの顔だ。


 でもこれはメスガキかな……? いや、違うな。メスガキはもっとこう、語尾にハートが付くもんな。

 にやけ顔で「おにーさん♡」「ばーかばーか♡」「いっちゃえ♡」とか言ってくれるもんな。


「ま、どうしてもっていうなら小鞠が入ってあげてもいいけど」


 プライドが高く。自分本位という感じだ。

 メスガキとは少し違うが、こういうガキをわからせてェ~~!


「とりあえずよろしくな小鞠」


「だから名前で呼ぶなってんでしょ!」


「早速仲が良くなったのですね」


 胡桃ちゃんの目には何が映っているのだろう……?

小湊小鞠:ロリ体形。わがまま。ナマイキ。わからせたい。


雪見玲衣:スレンダー美人。クール。マイペース。

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