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放課後の理科室で女子と話してェ~

 放課後の理科室。俺は孤独に掃除をしていた。

 この学校ではめぐりが悪いと日直が特別教室を掃除しなければならない。


「というか女子は二人で日直なのに男子だけ単独日直っておかしくね? コレ男女差別でしょ。ポリコレ警察きちゃうよ? 泣きました。私は男性で無宗教で日本人です」


 俺が一人で茶番をやっていると教室のドアが開く。


「お」


「ガイア君……」


 現れたのは花園萌香だ。


 教室に入る際にサッと周囲を見て俺以外いない事を確認している。


「嬉しいねえ。手伝いに来てくれたんだ」


「あはは、手伝いもあるかもだけど、その前に誤解を解きたいな~って」


「誤解? 何のことだ?」


「休み時間に言ってた、その……」


「ああ、花園さんが倉入ねねをいじめているって話ね」


「ッ」


 花園萌香の表情に険が入る。いいね。教室じゃ見られなかった表情だ。

 しかし花園萌香はそれもすぐに消して笑顔を作る。


「だからそれが誤解なの。そもそもねねちゃんとは仲良いでしょ? 今日も話してあげたし、ガイア君が私の事を何か勘違いしてたら嫌だな~って思ったの」


「いや、勘違いしてないさ。花園さんは優しくて誰とでも隔てなく話せるクラスの人気者。っていう自分が大好きなんだもんな」


「そんな言い方ひどいな……」


「今もさあ、話してあげたって凄い上から目線だよなぁ。クラスに馴染めない子に優しくしてあげる私いい子。って感じ?」


「それはっ、言葉のあやだよ。ねねちゃんとは仲良くなりたいだけだよ」


「今日の前髪を切るとかどうとかの話も、俺にはアドバイスというよりいじめに見えたんだよなあ」


「ガイア君は男子だからわからないだけでしょ。女の子の間じゃ髪型の話題とか普通だから」


「俺の中学じゃカースト上位の女子が気に食わない女子の髪型を変えさせてたけどな~」


「……それが誤解の原因なんだね? 外部の中学じゃそうだったのかもしれないけど、うちは中学からの一貫校だから全然そんな事ないんだよ。なあんだ。やっぱりささいな誤解だったんだよ」


 ここまで煽っても良い子ちゃんぶろうとする花園には感心する。逆に普通の良い子ならここは怒る場面だろうに。そういうところが歪なんだ。


「ハアーホント学校めんどい。仮病でさぼったらばれるかな?」


「……何を言っているの?」


 俺の唐突なつぶやきに花園は眉をひそめる。

 俺は構わずスマートフォンを取り出しそれを見る。


「えーと。というか隣の根暗マジうざい。絶対スマホ見る振りしてこっちの会話に聞き耳立ててるし」


「なっ……!」


「根暗って日の当たるところに持ってったら枯れたりしないかな(笑)」


「ちょ、ちょっと!!」


「♯裏垢女子。ってな」


「なんでアンタがそれを!」


「お、やっと本音で話してくれそうだな」


「ッ……!」


 俺がスマホで見ていたのはツイッターだ。このクラスの人気者、花園萌香の裏アカウント。


「世の中には会った事もない人の裏アカウントを特定する調査会社があるぐらいなんだぜ。同じ教室の裏垢ぐらい簡単に特定出来る」


 一番メジャーな方法がワード特定だ。身近な出来事、例えば教室に蜂が出たとすると自己顕示欲の高い奴はそれをツイッターに書き込むだろう。その時間で「教室 蜂」とワード検索すれば一発でヒットする。世の中のつぶやきは膨大の様に見えて時間とワードを指定すると途端に少なくなるからな。

 

 ちなみに検索ワードの後に「since:2020-4-20 until:2020-4-21」みたいに付け加えればこの日付の間にツイートしたつぶやきのみが表示される。他にも特定テクは山ほどある。


「ま、最初からターゲッティングしてたわけじゃなくて、クラスの女子全員のツイ垢特定作業のついでに引っかかっただけなんだがな」


「変態……」


「誉め言葉だ」


 花園は顔を俯かせて深くため息を吐く。

 そうして上げた顔にはクラスの人気者の笑顔はない。


「それで? 弱みでも握ったつもり?」

 

 花園は首元のリボンを外しブラウスの第一ボタンも外した。


「どうせ下種な要求でもするつもりでしょうけど、裏アカウントなんて消せば済む話だし、画像を残してたとしても加工したって言えばだれもアンタの事なんて信じない」


 花園は胸元をはだけさせる。ブラジャーがわずかに見える。白だ。


「ここで私が悲鳴をあげればアンタは一巻の終わり。人気の無い教室で女子に乱暴しようとした性犯罪者の出来上がりよ」


「なるほど。一転してピンチだ。証人でもいなければな」


 がたっ。と教卓から音がする。


「!?」


 花園が目を見開いて教卓を見る。


「もう出てきてもいいぜ。ねねちゃん♡」


 ゆっくりと教卓から出てきたのは、倉入ねねだった。

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