俺も混ぜてよ♡
「俺も混ぜてよ♡」
俺はそんな言葉と共に百合結界を作りつつあった花園萌香と倉入ねねに近づいた。
「えーと、田中ガイア君? どうしたのかなっ」
「……」
花園萌香は明るく振舞いながらも困惑、倉入ねねは警戒といったところか。
まあクラスで圧倒的希少種の男子からいきなり話しかけられたら困惑もするだろう。
良くも悪くも浮いた存在だからな俺は。決して嫌われているわけではないと信じたい。
「いや~倉入さんは確かに目を出した方が可愛いけど、おでこまで出すのは冒険が過ぎると思うぜ」
「そうかな? ねねちゃんなら絶対可愛いよっ」
ぱっと花開くような笑顔。思わずお前の方が可愛いよとか言ってしまいそうだ。
「……っ」
倉入ねねが俯く。
「あ~なるほど。ま、確かに二人の問題だしな。ただもっと素直になった方が進展すると思うんだよな」
「素直? どういうこと? 田中君」
「俺の事は気軽にガイアでいいよ」
「え? うん……」
ここまでずけずけと言っても拒絶しないのはさすがクラスの人気者だ。
「例えば~素直に要求を言うとか? 俺今日日直だから放課後の掃除手伝ってくれる人いると嬉しいんだよね~。今週うちのクラス理科室当番じゃん?」
「あはは、何それ。そういう事~? もうっ、楽しないで自分でやらなきゃダメだよ?」
「まぁまぁ、あ、じゃあとっておきの秘密を教えてあげるよ」
「え~? なんだろ~」
口では楽し気に話しているが花園萌香もいい加減迷惑そうだ。
俺は自然に近付き耳元で秘密を教えてあげた。
「っ!?」
花園萌香は表情を硬直させる。瞳孔も開いているだろうか?
「……?」
その様子を見ていた倉入ねねは訝しむ視線を向けてくる。
「なんかごめんな? 空気悪くしちゃったか? お邪魔虫は消えるとするかね。はぁ~日直の仕事だるいねえ~」
そうして俺は教室の隅、自分の椅子に戻った。
「ガッ、ガイアッ。二人と何話してたの? こっちは霧崎さん抑えるのに大変だったんだから」
友也が必死に霧崎の腰巻カーディガンを掴んでいる。
「ちょっとアンタ。二人に何言ったの? 会話止まっちゃったじゃない」
「いや? ちょっと俺も混ぜてよ♡ってへぶぁッ」
「ガ、ガイアッ!」