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介護士として就職したはずだけど、"界護士"になりました  作者: 豚足大佐
1章 界護士見習い編
3/3

2、人の話は最後まで聞け

 面接に合格した……! その事実だけが俺の中で暴れまわる。最高だ、これで自由なんだ! 


「じゃ、話そうかぁ。俺たちについてよぉ……」


 社長が口を開く。どうやら今日は選考会だけじゃなく、説明会も兼ねているらしい。一石二鳥でありがたい。


「こっからの話を聞いたら戻れないぜ? お前さん」

「はい! 全然大丈夫ですよ!」


 俺は後にこの空返事を後悔することになる。この時は、これから先の自由しか見えてなかったけどな。日高と呼ばれていたおっぱいは、「適当なやつ……」と言っている。


「じゃ、話すぜ。ま、平たく言うと俺らの仕事はこいつらを消すことだ」


 ぴらっと社長は写真3枚を俺によこす。そこには人の形をした影?のようなモノが写っていた。ロープレの敵キャラでいそうな感じだろうか。目は赤く光っているが、それ以外は真っ黒だ。他の2枚も同じ奴らが映っている。なんというか、気味が悪い……本能的にそう思わせる。


「まぁ、影だとかドッペルゲンガー、いろいろ呼び名があるが俺らは影で統一してる」

「え……?」

「影が現れたのは、約50年前だ。こいつは一番雑魚だが……数が多いのが厄介だ」

「は?」

「さらにこいつらが―――」

「待て待て待てぇ!!!」


 たまらずため口で叫ぶ。影? 50年前? 何のことだ!! 介護の話をしろよ!!!!


「ッチ……なんだよ。人の話は最後まで聞くもんだぜ」

「いやいや、いきなり影だとかゲームの話されても追いつかないですよ! お宅は介護施設だろ! 介護の話をしてくれ!」


 もしかしてあれかな? もう内定出たし、遊びの誘いかな……? 社長ったら体に合わずにゲームなんてするんですね。意外だな~!


「ファミコンの話なんてしてねぇぞ。俺らの敵だよ、敵」

「古いよ! 今時ゲームのことファミコンなんて言わない! ねぇ!」


 俺はたまらず横にいる日高さんに助けを乞う。まずいですよ! おたくの社長のテンションについていけないよ! が、日高さんからの口からは俺の予想を超える答えが。


「悪いけど、本当の話よ。あなたはうちの社長にハメられたのよ。私たちは"界護士"。この異形、影を倒す者。あなたが目指していた"介護士"とは違うの。選考会の日時と場所はしっかりと確認することね」

「そういうことだ。歓迎するぜ?」


 俺は脳がフリーズしていた。よくわからない。あれ? イベントダンジョンは何日までだっけなぁ……


「壊れないないで」

「い゛ッ!!」


 日高さんは容赦なく俺に平手打ちを食わらせる。パアーン!と乾いた音が部屋に響く。そこでハッと正気に戻る。戻りたくなかったけど! だが甘かったなおっぱいよ! その瞬間、罠カードを脳内で発動させる! これが、逆転の切り札だ!


「しゃ、社長! パワハラ! 今の見ましたよね! パワハラですよ! パワハラ防止法違反だ!」


 パワハラを武器に辞めてやる! 何が影だふざけるなよ! が、社長は、


「悪いなぁ、空見てた」

「はあああああ!! 味方がいないよぅうううう!!」


 周りを囲まれて空なんか見えない部屋なのに社長はシラを切る。崩れる俺に日高さんは言う。


「パワハラ防止法は2020年6月から施行されるわ。今はセーフよ」

「どうでもいいよ!」

「―――うだうだ言うんじゃあねぇよ、言ったろ? お前さんは逃げられないぜ、狭山翔」

「ッ!!」

 

 ツーっと嫌な汗が背中を流れ身体が動かなくなる。社長から凄まじい圧迫感を感じた。漫画とかである"殺気"とか、"オーラ"とかいうものだろうか。今までの俺ならそんなものは好きだけど作り話と言えたが、今はそんなものは無いとは言えない。こんな写真見た後に話を聞いて、凄まれたんだぜ? 


「じじいは気が短いんだよ。さて、続けるぜ? どこまで話したか。そういや名乗ってなかったなぁ……宮代(みやしろ) 武だ。そんで、俺ら界護士は国から認可された武装集団だ。まぁ、中にはフリーでやる奴もいるがな。」

「私は、日高 麻衣よ」

「ど、どうも」


 俺はようやく硬直から回復し、会釈。そして疑問を投げかける。この時にはもう嘘話とは思えなかった。


「国から認められたって? けど、そんな職業聞いたことないですよ?」

「そらそうだ。こんな化けもんがその辺にいるなんて知れたらよぉ、誰も表歩けねぇだろ?」


 トントンと写真を指で叩き、そんくらいわかるだろ! と社長は笑う。


「だから、国家秘密なのさ。そんでこれを知ったからにはお前さんは逃げられねぇよ。俺らに加わるほかねぇ。あとは、そうさなぁ……星にでもなるかぁ?」

「くっそ……騙したな!」


 俺は叫ぶ。騙された! 訳わかんねぇよ! なんだよ"界護士"って。そんな冗談みたいな奇跡あるのかよ! たまたま介護施設の面接を受けに来たら、界護士って、化け物と戦えって?


「騙したんじゃねぇよ? 手頃な馬鹿が釣れただけの話さ。俺たちも人が足りなくてなぁ……いいじゃねぇか? どうせ、おまえさんみたいなやつは、やりたいこともないんだろ? 目で分かるぜ? どうせこの会社だって人に言われて受けたクチ、だろ? どっかに入りたいって熱意は認めるが、な」


 ぴらぴらと履歴書を揺らす社長。この人、眼帯の下には眼がないのだろう。が見透かされている。その下には代わりに何が入っているのだろうか……? そして、常に人が足りないのはあの化け物に―――


「歓迎するぜ。一緒に国を、世界を守ろうじゃねぇか。言っておくが夜逃げはススメ無いぜ? 死に場所くらい、選びてぇだろ?」


 俺はあの時空返事したことを人生で一番後悔したし、その日の帰り頭のメモ帳に「人の話は最後まで聞く」と当たり前のことを大きく書き込んだ。

 こうして俺の就職活動は、俺の平和な人生を犠牲にして終わりを告げたのだった………

ストックはここまで。残りは少しづつ書きます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今までに無い発想でとても興味を惹かれました。 会話のテンポも良くて読みやすいです。 これから翔さんや周りの人たちがどうなっていくのかとても楽しみです。 応援しています。
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