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介護士として就職したはずだけど、"界護士"になりました  作者: 豚足大佐
1章 界護士見習い編
2/3

1、筋肉とおっぱいと面接

 姉ちゃんから話を聞き、その友達に話を通してもらったりして数日が経った。その間に介護職について色々調べた。資格は会社負担で取ることができるから心配ないらしい。業務内容も概ねどこも同じらしい。姉ちゃんの友達が務めている介護施設は、所謂老人ホームで慣れてくれば夜勤があるみたいだ。大変だけど、夜勤には手当があるって話だ。つまり大変だけど稼げる! そしたら課金し放題だ!


 そして、いよいよ今日が面接日!


「場所は、こっちで良かったよなぁ? なんか随分とボロいな……」


 俺は面接会場である大宮駅から、5分ほどにある雑居ビルの前までやってきた。が、そこは何というかな。裏の人達の事務所があるような5階建てのビルだ。日も当たらない裏路地にあることがさらに印象を悪くしている。

 3階と4階は電気がついているので、人がいることはわかる。メモには会場が何階なのか書いていない。何やってんだよ数日前の俺! そこは聞いておけよ! まぁ、とりあえず3階から行く事にするか……


「その前に身だしなみだけでも確認だ」


扉ガラスに映る自分の姿を確認する。寝癖、無し。鼻毛…無し。ネクタイ曲がってない。しかし、もう少し筋肉をつけた方がいいかもしれない。ガリでヒョロとまではいかないが、もう一歩が欲しいなと客観的に評価する。身長はというと、残念だけど173で止まってしまった。バスケとかしてたら伸びていたのだろうか……?


「っと、時間だ」


 息を吸って吐き、気合を入れる。そしてイメージする。就職活動さえ終われば後は、卒論を適当に終わらせて残りの大学生生活を謳歌するんだ……あれこれ、死亡フラグぽいな。いや違う! ここで終わらせてやるんだ! ニートにはならない。なぜなら、毎日姉ちゃんに馬鹿にされるからな……

 扉をくぐり、建物内に入る。何というかカビというかくたびれた匂いがする。もしかして、これから面接を受ける会社は金が無くてこんな処しか借りられなかったのか? 

 そんなことを考えて階段を上る。1階には何もなく。2階には床に段ボールが段々に部屋を埋め尽くさんと置いてあったりして、倉庫のような用途で使われているのだろうと思わせる。

 カツカツと靴が階段を踏む音だけが薄暗い建物に響き、やがて3階に到達する。


「はあ~、階段怠いなぁ。エレベーターつけろよ、エレベーター」


 緊張も加わり、疲労度を上げる。3階には部屋が見たところ3部屋あり、一室から光が漏れている。とりあえずノックして入ってみるか。間違えたら誤って出ればいいや。


「―――失礼します。面接を受けに来た狭山翔です失礼します!」


 部屋に入ると、眼帯をつけた筋肉隆々の男と、横には小柄な巨乳女性がいた。

 男の方の存在感がありすぎてヤバい。服装は祭りで良くいる甚平で、右目には黒い眼帯をしている。肌蹴た胸もとからは筋肉が「ここにいるぜ」と主張している。白髪なところをみると、年齢は60近いのか? ワイルドなオッサンだなぁ……アマゾンでも3年はひとりで生きていけそうだ。身長は180オーバーだなこれ。

 女性の方も隣の筋肉に視線を持っていかれるが、眼につく顏は美人系でいいし、栗色セミロングもグッドだ。アニメでいそう。が、目つきがきつい。きっと性格もきつかったり? これから入る職場の先輩がきついとなるとマイナスポイントだが、それをプラスにせしめる胸のデカさ……! 偽装か? いやいや、夏は女性を薄着にさせる。白いシャツからピンクのブラがしっかりと黙認できる。中には「何を食べればそこまで大きくなるの!?」と、うちの姉ちゃんが驚愕するであろうメロン様が―――


「ん? お前さんなんだってここに来たんだ?」


 筋肉が凄い眼帯のおっさんがはて?と訪ねてくる。あれ、伝達ミスかな?


「あ、はい。私はここに面接を受けに来ました、これは履歴書です。もしかして違いましたでしょうか?」

「ほう……面接か面白いねぇ。さて、どっかから情報が漏れたのか。わざわざ今日この場所が―――」

「最悪のケースを考えると、この男の取り扱い下手にできませんね。社長」


 俺の問いに答えず、筋肉とおっぱいは相談を開始する。え、今社長って言った? やべーよわざわざ社長が出張ってくるなんて。もしかしてもうこれ、最終面談まで兼ねてるのか? 俺、第一どこも書類選考止まりだったから分からないぞ! 情弱過ぎてヤバい! ……今更だけどここであってるよな? 


「じじいには流行りのスパイなのか分からんねぇ……で、お前さんも"界護士"かい?」

 

 おお、いきなり面接始まった!? 介護士かって言ったよな。今は違うから……


「いえ、今は"介護士"ではありません。ですが、御社に入り介護士として一所懸命働きたいと考えています」


 完璧だろ! どうだ。次の質問はなんだ! きやがれ!


「ほうほう、"界護士"になりたいねぇ。ますます、面白いじゃねぇか!」

 

 社長が笑う。あれかな。介護士は40代とか上の年代の人が多いらしいから、新卒で面接に来るのが珍しいのかもしれない。専門で学んでくる人以外で、来る人は少ないみたいだしなぁ……

 ん? だとすれば、これはいけるんじゃないか? 若手だぞ! お前らが欲しい若手だぞ~と俺は年齢というアドバンテージを感じ、勝利を確信する。これでニートにならずに済むぞおおおお!


「あなた、ふざけている訳じゃないわよね……? 甘い世界じゃないのよ? 私たちは―――」


 えー、隣のおっぱいさんが凄い形相で俺をにらんでくる。こ、怖い……!


「まぁ、いいじゃねぇか。日高よぉ。最近娯楽に乏しいから聞いてやろうじゃないか。暇つぶしにな」


 流石、どんな零細企業であっても社長様は構え方が違う。採用面接ですら暇つぶしと仰る。俺はGOサインも出たので答えを口にする。


「いえ、ふざけてはいません。"介護士"がどのような職業かは調べてきました。人のために働く、素晴らしいものだと思います。大変さも知りましたが、介護士になって人間として成長したいんです!」


 どうだおっぱい! 俺の渾身の答えは! 


「―――嘘吐いてる(ツラ)じゃねぇな。餓鬼臭いが覚悟くらいはしてきてるらしい」


 筋肉社長がにやりと笑う。そらそうだ。こっちもここで決める覚悟で来たんだから! そこでおっぱいが、「社長!」と言い社長とともに後ろを向く。


「社長、変なことを考えていませんか?」

「ウチも人手足りねぇだろ? それにこんな餓鬼でも、もしかしたら化けるかもしれんぞ?」

「しかしッ! 今日は、例の作戦に必要な情報を受け取りに来ただけ。そこにこの男が来た。何か、おかしくありませんか? 密偵という線は!」


 社長と、おっぱいが相談フェイズに入る。こっちからだと内容が聞こえないな。もしや、不採用か! 不採用なのか俺! 取り残され、不安感だけが高まる。


「こっち側に引き入れちまえば問題ねぇさ。それにみろこの履歴書をよぉ……スパイだと思うか?」

「聞いたことのない大学ですね? 少し調べてみます。―――あぁ、理解できました。この男がスパイができる器じゃない、と。しかも、履歴書にある企業の選考会は反対口のビル……なるほど。ただのアホ、ですね」

「そういうこった! こいつを雇うぜ俺ぁ。どうだ、酔狂だろ?」

「はぁ……好きにしてください」


 しばらくして、「待たせたな」と社長は俺に向き直る。


「おまえさんは合格だ。歓迎するぜ? 我が《スマイルライフ》によ」

「ほ、本当ですかっ!!」



 こうして、俺の就職活動が終わったんだ。同時に平和な日常も終わりを告げたんだけどな………

大学名で人を判断するべきではないですが、翔は選考会場を間違えたりするのでアホですね。

私は今まで2社介護施設で働いていますが、やはり若い子はいません……

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