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介護士として就職したはずだけど、"界護士"になりました  作者: 豚足大佐
1章 界護士見習い編
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0、就職難航

 後で聞いた話だが、この世界には50年ほど前から超常の範囲外の存在がいたらしい。


 幽霊や宇宙人? あぁ、そういうものかもしれない。

 曖昧過ぎるだろって? そんなこと言っても、人間の俺たちは未だにその存在を証明できていないんだ。それにそれを知る者は多くない。


 そのことに気が付かず俺、狭山 (かける)は21年生きてきた。それを知るきっかけになったのは、人生のターニングポイントである就職だった。あの頃の俺は、やりたいこともなく日々やることと言えば、スマホゲームに、アニメ鑑賞、SNS徘徊、バイト……そんなものだ。

彼女? いたらさぞ素晴らしいだろうな。


 てな感じでやりたい仕事なんてなく、大学も適当に入れるところを何も考えずに選んだ挙句、就職活動も難航していたんだ。まぁ、今思えば当然な話さ。


 前置きが長くなったが、先輩の話だ。参考になるかわからないけど聞いてくれよ。



 季節は8月。また今日も熊谷市が最高気温を記録したとかTVで言っている。


「ちくしょ……また、お祈りされた」


 スマートフォンのメール欄に届いたメール。「選考結果について」と書かれているそのメールを開く。流し読みし、お決まりの文句を見てスマホをテーブルに投げる。狭山様の御健闘をお祈り申し上げます。かぁ…

 要は選考に落ちたのだ。


「健闘を祈る前に、どうか検討してくれない?」


 その検討の結果とわかりつつ、悪態は付きたくなるものだ。しかし、この会社で36社か。ふと、某大型掲示板で就職活動について検索してみる。適当にスレッドを開くとそこでは、「Ya●oo!決まったンゴwww」と己の人生の勝利を叫ぶ者。「【悲報】わい、50社目落ちる」と敗北報告をする者と、「今の若い奴等は~」と高みの見物をする奴がいた。


「あ~……どうすりゃ内定貰えるんだよぉ」


 ベッドに寝転がるけど、ガーと鳴り響く古くなってきたエアコンが煩くて寝られない。いや、エアコンのせいだけではないだろうけど。


「―――あんたまた祈られてるんだ! ウケル~」


 ドアのところに姉ちゃんが立っていた。仕事から帰宅したのだろうなスーツ姿で立っている。俺は顔を上げてその姿を捉える。狭山真琴(まこ)25歳。身長は150あるかないか。胸はもちろん無い。あーあ、これで胸があれば晴れて《合法ロリ》の称号を与えられたのに。神は残酷だ……けど、あきらめるな! 低身長は需要があるぞ! 

 そんなどうでもいいことは置いておいて、だ。煽られたからには抵抗しないとな!


「るっせぇ……決まらないものは決まらないんだよ」

「でぇどこ受けたの、今回は?」

「……So●y」


 俺はどうせ馬鹿にされるであろうが、聞かれた問いに答える。しかし、姉は「あー、こいつはバカだ」と言いたげな顔でベッドに転がる俺を見つめて悩まし気に口を開く。


「頭悪い人間ほど身の程を知らないものねぇ」

「夢くらい見させろよ!」


 例え馬鹿であろうと有名企業に就職するという夢くらい見てもいいだろう。姉は、「わかってないわね」と続ける。


「今まで自堕落な生活を選んできたツケが回ってきただけでしょう? あー、悪夢だわぁ弟が馬鹿過ぎるわ」

「くそ……言い返せないっ!」


 分かってはいるんだ。今までの人生頑張ってきた覚えがない。だらだらと小中高をやり過ごし、大学は当たり前のように入れる「それはどこ?」なところに入り、息をする様にSNS徘徊。ソシャゲのために仕方なくバイトし、合間にアニメと自堕落にモラトリアム()を過ごしてきた。

 その結果やりたいことも無く、人生の進路設計もがばがばのまま今に至る。言い訳するなら、随所で頑張るぞい!と思ったこともあるが……いつの間にか空気が抜けたタイヤみたいになってた。


「結局。受験も就職も積み上げてきたものの成果でしかないのよ。ゲームもそうでしょう? レベルを上げてボスに挑むじゃない。あんたは今、パンツ一丁でボスに挑んでいるのよ」

「あーはいはいごもっともで。説教ならいいからいい仕事ないのか? 俺、就職したら本気だすからさ」

「平たい言葉ねぇ……」


 平たいのは貴様の胸だろうが!と、言ったら怒られるんだろうなぁ。ならせめて、今度こいつの職場に行って「兄です。いつも妹がお世話になっていますぅ」と言ってやろうか。……けど、後が怖いからやめよう。


「あ、いい仕事があるわよ」


 ひらめいた!と言わんばかりに姉ちゃんは口を開く。


「マジでか? いやー流石真琴様だなぁ……」

「心にも無いことを言うんじゃないわよ。私の友達が働いている介護施設なのだけど、人手が足りないってこの間言っていたわ」

「介護だと……? あの身体を酷使し、老人の世話をするという伝説の?」


 キッツイ仕事だと聞いたことがある。確か離職率?も高いとネットで見たな……


「言い方がアレだけど、大体そんな感じね。今まで誰の役にも立っていないゴミのようなあんたにおすすめよ。人生の先輩方のお世話をすることで贖罪なさい」

「俺は罪人かっ! けど、やりたいこともないしなぁ。今更色々調べんの怠いし受けてみるかぁ」


 俺の住むこの日本は、高齢社会と言われるほど老人が多い。きっとそういう仕事に就けば、食えなくなるってことはないだろうしな。

 


 こうして俺は姉ちゃんの言う通り、その施設の面接を受けることにしたんだ。結果的に受けたのは、介護施設じゃなかったんだけどな……

介護士として働いている豚足大佐と申します。このような物語は初めて書きます。不慣れですがよろしくお願いします。

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