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7

入学式が終わり、家族と別れて自分のクラスへと向かう。

 周りの視線が気にならないと言えば嘘になるけど、私にとってはいつものことだ。庶民の時だって母の浮気でできた子供だと陰口をたたかれていたからスルーすることに離れている。

 そんなことより、ロイドを探すのが先だ。

 ロイドに今の私を見てほしい。貴族になったんだよって言いたい。きっと驚くだろう。でも庶民だった私を受け入れてくれた彼だから、きっと一緒に喜んでくれる。

 家族と一緒にいたから声を掛けづらかったのかと思って、キョロキョロとあたりを窺うが彼の姿はなかった。

 



 家に帰ると家族が待っており、夕食を一緒に食べながら今日一日のことを聞かれた。

 私のクラスは上級貴族の子息ばかりが集められていたので、差別されるようなこともなく笑顔で話しかけられた。内心どう思っているのかはわからないけど、表面的には友好的に迎えられたと言っていいだろう。

 両親も兄も私の返事を聞いてホッとしてくれたようだ。


「そうか、それは良かったな」

「本当に。これなら社交にも連れていっても大丈夫ですわね」


 両親の会話である社交とはお茶会のことらしい。私としてはそんな仰々しいものは行きたくないけど、これも貴族の務めらしい。もう少し大人になれば毎日のように夜会に出席するようになるとか。出席しなければ夜会に行く金もないのかとか詮索されるし、行けば行ったでいつも同じドレスだと噂されるし、流行おくれのドレスも顰蹙を買うらしい。奥さんや娘のドレスや宝石で破産スレスレの生活をしている貴族もいるのだとか。

 ドレスにそこまでお金を使うのはどうかと思うけど、黙っている。両親にはおとなしい娘だと思われているほうが都合が良いものね。



「はぁ、疲れたぁ~」


 入浴をし部屋に帰るとやっと一人になれたので、ベッドにジャンプする。行儀が悪かろうが誰も見ていなければ問題ない。

 そう誰もいないと思っていたのに笑い声が聞こえて慌てて起き上がる。


「なんだぁ、アオかぁ。びっくりさせないでよ」

『アオって、変な呼びかたしないでちょうだい』

「じゃあ、名前を教えてよ」

『それはできないわ』


 どうやら妖精にも都合があるらしい。私たちと違って妖精の名前には重大な秘密でもあるのかしら。

 まあ、アオって呼べばいいのだから教えてもらえなくても問題はないけどね。


『それにしても結構お嬢様らしくなっていたじゃない。せっかく大笑いしようと思って入学式を見に行ったのにがっかりだったわ』

「性格が悪いわね。でも褒められたと思っておくわ」

『褒めてなんかいないわよ』


 妖精って本当に暇なのね。

 そうだわ。それならアオに頼めばいいのよ。ずっと気になっていた家族のこと、アオなら知っているはず。


「ねえ、賢い妖精さん」

『何よ。気持ち悪いわね』


 気持ち悪いと言いながらも、少しばかり嬉しそうな声だ。


「妖精さんなら何でも知っているのよね」

『まあね。私たちの知らないことなんてないわよ。でもこれからおこる重大なこととかは話せないからね』

「えー! 未来までわかるの? えっ? 本当に?」

『あれ? そのことが知りたいってことかと思ったんだけど違うの?』


 あったり前でしょ。なんか妖精って迷惑な奴くらいに思っていたけど、すごく役に立つかも。でも重大なことは話せないって言ってるからそうでもないのかしら。

 私の顔の前で飛んでいる妖精は首を傾げている。まあ、いいわ。私が知りたいことは未来のことではないし、重大なことにも当てはまらないもの。これはスルーするに限るわね。

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