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 十八歳になり、あと少しで結婚して彼のもとへ行くことが決まった私はアンナに会いに行った。

 一度二人だけで話をしたいと思っていたのだ。でも罪悪感もありずっと伸ばし伸ばしでいたけど、王都を離れる前にはっきりさせなければならないと訪ねることにしたのだ。

 私にとってアンナはどういう存在なのか、今でもよくわからない。ただ迷惑をかけたことは確かだと思う。私は妖精のアオにそそのかされて、学院の合格発表の日に門の前に立っていた。それがアンナの運命を変えることになるなんて全く考えなかった。そのことを直接会って謝りたかった。

 アンナとは二度ほど会ったけど、二人だけではなかったのもあってじっくりと話をすることができなかったのだ。

 アンナは私を許してくれた。どちらかというと自分の方が申し訳なかったようなことを言ってくれた。貴族から庶民になって、相当な苦労をしたはずなのにそんな事おくびに出さなかった。そしてアンナは庶民の格好をしていても貴族の娘として育っただけあって私よりずっと高貴な人に見えた。そう兄さまを見ているような気がしたのだ。兄妹って似るのかしらね。

 ただアンナがエドのことをどう思っているのかは全く分からなかった。私としてはその辺のことを根掘り葉掘り聞いて、エドに報告するつもりだっただけに残念だ。


「そうか、アンナは元気にやっていたか」

「店の方も順調そうだったわよ。っていうかすごくあの店を大事にしているようだったわね。エドと結婚するとなるとやめないといけなくなるけど、大丈夫なの?」

「やめないとだめだろうか?」

「あ、あったり前でしょ。あなたの事業のこともあるんだし、さすがに奥様が料理人っていうのはまずいでしょ」

「そうだよなぁ。アネットと幸せになってくれって言われたし、もう駄目なのかなぁ」


 エドはいつだって自信満々だったのに、最近はアンナの話になると弱気になる。それだけアンナのことを想っているのだろうけど、鬱々しているのを見ているとこっちの幸せまで陰ってきそうで困るわ。


「この間までの自信はどうしたのよ。会えなくても二人は信じあっているから大丈夫だとか言ってたじゃない」

「そういえばアネットは遠距離恋愛は破局しやすいとか言ってたっけ。もっと手紙とか書いとけばよかったのかな」

「そうよ。二年も連絡しないなんて考えられないわよ」

「アネットだって似たようなものだろ。学院で顔を見ていたかもしれないけどほとんど話をしなかっただから」

「私たちは違うわ。全然会えなかったわけでもないし、まだ二人とも片思いだったしね」

「そういうものなのかなぁ」

「でも諦めないんでしょ?」

「当たり前でしょ。彼女のために庶民になっても良いとさえ思ってたんだ。今さら後には引けないよ」


 エドは握り拳をあげて宣言してる。貴族の地位まで捨てようとしたエドは本当に変わり者だ。アンナにとって彼の愛は重くないのか心配になるほどだ。


「アンナは優しいからきっと大丈夫よ」


 婚約契約の時に協力してもらった恩もあるので応援だけはしてあげようと思った。

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