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「嘘? 何を言ってる? 世間に公表しているのにそんなことが通用するとでも思っているのか? エドモンド様も知っているの?」

「し、知っているわ。だって私たち共犯者なんだもの」


 ロイドの剣幕に驚いてエドのことも共犯者だと話してしまう。


「きょ、共犯者って、呆れてしまうね。ちょっとエドモンド様と話をしてくるよ」


 踵を返して去っていきそうなロイドを慌てて捕まえる。まさか身分が上にあたるエドにまで説教をするつもりだろうか。学院ではロイドの方が先輩になるけどそんなことをすれば大変なことになる。


「待って。私との話は終わってないわ」


 ここでロイドに去られてしまえばもう会うこともかなわなくなる。ロイドが契約婚約のことでこんなに怒るとは思わなかった。でもエドに迷惑をかけるわけにはいかない、だってこの婚約は私のわがままを聞いてもらっただけなんだもの。エドにとっても丁度良い提案だったはずなのに、なかなか共犯者にはなってくれなかった。それでも折れてくれたのは私が聖女にはなりたくないといったことよりもロイド以外の人と婚約するのが嫌だと訴えたからだ。多分大好きなアンナのことを思い浮かべたからだろう。嫌いな人と結婚させられるのがアンナだったらと考えたに違いない。


「確かに。嘘の婚約なんて何を考えてるの? 君は知らないかもしれないけど婚約破棄は貴族の令嬢には致命的なんだよ」


 婚約破棄された令嬢は相手側がわるくても敬遠される存在になるらしい。下手をすれば修道院に行かなければならなくなるとエドも言っていた。男の場合はそれほどでもないらしい。男尊女卑だなって思うけど、こればかりは長い歴史があり一朝一夕にはどうにもできない問題だろう。貴族だろうが庶民だろうが女性の立場はいつでも弱い。


「知ってるわよ、そんなことくらい。それでも、それでもあなた以外の人と結婚なんてしたくなかったの!」


 ロイドが目を見開いて私を見た。驚いた顔だ。

 私だってこんなにはっきりと告白めいたことを言うつもりはなかったのだ。でもこうでも言わなければロイドには通じないと思ったら、声に出していた。


「ぼ、僕以外とはって、それってどういう意味?」

「どういう意味って、わかるでしょ?」


 顔が赤くなっていると思う。


「それって僕のこと好きってこと?」

「ま、まあ、そういうことにもなるわね」

「そ、そうか。うん、そうだよね」


 ロイドまで赤くなっている。なんかすごく恥ずかしい。うっ、警護の人も聞いているのかしら。兄に報告されることを考えるとさらに恥ずかしくなってきた。

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