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「ねえ、あなた私のことずっと見ていたのならこの家の構造を知っているのよね」


 私はこの大きな家のどこに何があるのかさっぱりわからない。昨日は使用人らしき人に案内されるままに動いていたから尚更だ。


『まあね。私みたいな優秀な妖精は何でも知っているのよ』


 ふふふん。と踏ん反り返る青い妖精はとっても偉そうだ。


「その優秀な妖精さんにお願いがるの」

『何かしら?』

「アンナって娘はどの部屋にいるのかしら」

『アンナですって? どうしてそんなことが知りたいの?』

「そんなの決まっているでしょ。話がしたいからよ」

『取り換えられたあなたたちが何の話をするの? 自分の方が本当に娘だったのよって意地悪でもするつもり? それはそれで面白そうだけど』

「な、なんてこと言うのよ。そんなことしないわよ。あっちから見れば私なんて庶民として育った教養のない娘なんだろうけど、取り換えられた者同士仲良くできるかもしれないでしょ」


 キョトンとした顔で私を見た後、青い妖精は吹き出した。よほどおかしいのかお腹を押さえて笑っている。


「な、なによ。何がおかしいの?」

『これがおかしくないはずないでしょ。あなたの頭の中ってどうなっているの? アンナがどこにいるのか、あなたが一番わかっているでしょ。そのために昨日、あの場所に行ったのでしょ』

「え?」


 あの場所って学校のことよね。あの場所で私は本当の母親に抱きしめられた。そのあとはすぐに馬車に乗せられたのだ。


「私があの場所にいたことと、アンナになんの関係があるというの?」

『大ありでしょ。本当の娘であるあなたが見つかったのよ。アンナはこの家の娘ではなかった。それも庶民だってわかったのよ。どうなるのかなんてわかるでしょ』

「まさか。追い出したの? この寒空に?」


 私がのんびりと暖かいベッドの上で寝ている間に、アンナという娘は追い出されたというの? 貴族の娘がいきなり追い出されて生きていけるはずがない。

 私はこの時初めて自分のしたことがどんなことなのか気づいた。そして私の本当の両親がどういう人なのかわかった気がしてゾクッとした。

 抱きしめてきた腕は暖かかった。でもそれは本当の娘に向けられたもの。アンナにはなんの罪もないのに、その日のうちには追い出してしまう両親。貴族というのは情というものがないのだろうか。


「信じられないわ。探しに行くわ」

『探しに行くですって、何のために? ここの連れ戻すことなんてできないわよ。それに追い出したのはあなたなのよ』

「私はそんなことしていないわ。だって知らなかったんだもの」

「いいえ、心の中ではわかっていたはずよ。あなたがあの場所に現れれば、あなたの代わりに育っていた娘がどうなるのか』



 ニヤニヤと笑う青い妖精は悪魔のようだ。


「それ以上、私の妹をいじめないでほしいな。アオ」

『そんな変な愛称で呼ばないでちょうだい』

「君は上から見ても下から見ても青いのだからぴったりなあだ名だろう」

『なんですって~』


 ぷりぷりと怒って文句を言っている妖精はもう私のことは見ていない。

 私を妹と呼ぶこの男は私の兄なのだろうか。確かに似ているけど、冷たい印象だった。



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