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 ロイドは生まれたときからの王都暮らしだと聞いていた。

 だから王都を離れてしまうなんて考えたことがなかった。ロイドの親しい先輩が領主になる街で働くことにしたという。十代で領主? って思ったら結構あるらしい。ロイドが行く街の先代の領主は数年前に亡くなっており、先輩が卒業するまでは母親が領主代理を務めていたとか。その母親と妹たちが今度は王都で暮らすから妹の学業が終わるまでは先輩と一緒に領地の方で暮らすそうだ。バーリン辺境伯の領地は王都から馬車でひと月はかかるほど遠い。

 兄とエドが進めている事業が成功すればもっと早く移動できるようになるかもしれないけど、それまでには時間がかかるだろう。

 私はそれまで我慢なんてできないし、するつもりもなかった。

 絶対についていくんだから。振られたって何度でもアタックする。ロイドに恋人でもいるのならあきらめるけど、それはないみたいだから絶対に諦めたりなんかしない。両親の説得は兄に任せておけば何とかなるだろう。兄が私にロイドのことを話してくれたということは、ロイドは兄の御眼鏡に適ったということだ。

 

 私はロイドに手紙を送った。この森で待っていると。

 私はロイドを待っている間、久しぶりに薬草採取をしている。薬草の中には料理に使えるものも多い。久しぶりに作ったスープが好評だったので、薬草入りの料理でも作って兄に食べてもらおうかな。

 兄はセネット家の仕事とエドとの事業の仕事とで忙しい毎日を送っている。若いから平気だなどと言って、睡眠時間を削っている。私が作る薬草スープが少しでも役に立ってくれれば良い。


「……何をしているんだい、アネット」


 いつの間にか夢中で薬草採取をしていたようで、ロイドが来たのに気づかなかった。


「何って薬草採取よ。前もしていたでしょ」

「今はそんなことをしなくても暮らしていけているだろ…って、暮らしていけているでしょう?」

「もう、そんな敬語なんて使わないで。ここには誰もいないのだから依然と同じように話して」


 本当は兄の命令で警護の者がどこかに隠れているのだろうけど、ロイドが気づいていないのだから良いのだ。


「…わかったよ。これで最後になるんだしいいかな。アネット、僕は学院を卒業したらバーリンという街にに行くことになった。五、六年は王都には戻ってこれないだろう」

「待って、それはもう決定なの?」

「ああ、もう決まったことだ。君とこの森で過ごした時間は楽しかったよ。でももう終わったことだ。君はエドモンド様と婚約されたし、こうして会うことはいけないことだと思う」

「婚約なんてどうでもいいの」

「どうでもいいことはないだろう? 婚約だよ。君はエドモンド様と結婚するんだろう? 婚約というのはそういうことなんだよ」


 ロイドの声が冷たくなった。ちょっと怒っているようだ。私はロイドの怒った声を聴いたのは初めてだったので口ごもってしまった。


「こ、こ、婚約は、婚約は嘘なの!」


 思い切っていったのに、ロイドはもっと怒った顔になってしまった。。


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