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蛇印(じゃいん)  作者: 屯田 水鏡
11/33

海人族の謎を推理する

十一、海人族の謎を推理する

江尻川沿いを下り、外周道路に出ると、舞能ヶまいのうがはまの白砂が松の林越しに見えて、その先に青き海原、玄界灘が広がる。

左折すると、すぐ左手上に宿泊施設、国民休暇村が現れる。

右手下には下馬ヶげばがはまという淡黄色の砂浜が広がっている。

真夏には海水浴客で溢れるが今はまだ親子連れが数組散歩しているだけだ。

海上に見える大きな岩の頂きには「沖津宮」があって、そこから沖に向かって騒ぐ白波は、明神の瀬と呼ばれる岩礁である。

手練れの漁師でも、ちょっと気を許せば、舟を岩に乗り上げ、海に投げ出されて命を落とすほどの難所である。

「どうするの、国民休暇村に寄ってく?」

「うん、ソフトクリームが食べたいな」

ちょうど口寂しくなっていたので、妻の言葉は有難かった。

玄関わきの駐車場に車を止めて、国民休暇村に入ると、左側にテーブルと椅子が幾つかあって、宿泊者と訪問者が休憩できるスペースとなっている。

フロントで私はソフトクリーム、妻はコーヒーを頼んで西側の席に座るとそこからガラス越しに玄界灘がよく見渡せる。

私は、ソフトクリームを嘗めながら、「沖津宮」と明神の瀬の白い波を眺めていた。

妻は、コーヒーを啜りながら、暫く、地方新聞を捲っていたが、「大して面白い記事はないわ、別の新聞を持ってくる」と言って席を立った。

遠くに大きな貨物船がゆっくりと航行している。

その少し手前を小さな漁船が白い波を立ててこちらに向かって走っている。

ガラス越しに差し込む日差しに目を細めながら、あんなに速いスピードで来たら明神の瀬にぶつかって座礁してしまうかもしれないな、等と思いながら、何気なく眺めている私の体内を、不意に、閃光が走り抜けるのを覚えた。

まるで地下に吸い込まれた伏流水が急に地面を引き裂いて空高く噴き上がるのを見る驚きであった。


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