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プロローグ
過去に「金印和合」と「金印幻想」という二つの作品を書いたのだけれども、今読み返してみると、果たして真に表現したいものを十分書き尽くしたかと自分に問うた時、言いようのない胸のつかえと消化不良を感じてげっぷしそうになった。
反芻胃ではないが二つの作品をもう一度噛み砕いて自分の中で消化したいという欲望に見舞われてどうしようもなく落ち着かなくなった。
どうしたら心の平穏を取り戻してこの胃のもたれを解消できるのであろうかと考えた時、その処方の一つとして、二つの作品に肉付けを試み、金印とこの神の島で勢力をふるった海人族の歴史と足跡を語ればどうだろうかと思い付いた。
果たしてうまく胃の腑に折り合い良く収まるのか否かそれは私自身にも分からない。